小さくて弱々しい声をなんとかしたくて、大人になってから声楽を習い始めました。
ついでに芸も身に着いたら一石二鳥、というくらいの下心で。
全然歌えなかった当初からくらべれば、まったく違う声です。
とは言っても、プロの歌声とは雲泥の差。
音大を出て、なんならイタリアやドイツに留学して、コンクールやオーディションを経てステージに立つ、そんな方々と比べるのがおかしいと言っても、その歌声に憧れてレッスンをしているので、ギャップはいやでも意識してしまいます。
ましてや、自分がライブをするとなっては、なおさら。
趣味の世界では、採点もされないし、順位をつけられることもありません。
歌う資格なんてものはないのだけど、自分のやる気だけというのは、なんとも頼りないモノです。。
(のどの炎症を鎮静化する効果があるという、スロートティー(Throat Comfort)。甘さとスパイシーさがいい感じにミックスされてておいしい)
歌手のエッセイや自叙伝を手あたりしだい読んでるのですが、最近読んだのが、白鳥英美子さんの『風たちの輪舞』と、石井好子さんの『さよならは云わない』の2冊。
白鳥さんはすでに70代、石井さんはもう亡くなられているので、若い方はご存じないかもしれませんが、たいへんな人気歌手のおふたりです。
こういう本は勉強にもなるしおもしろいんだけど、子どもの頃から評判だったとか、周囲に求められて歌っていた、なんてエピソードを知ると、「わたしの歌は誰にも求められてませんけどね」と拗ねてしまうのが困ったところ。
拗らせは横においておいて、
才能に恵まれ、訓練もしっかり受けた方たちであっても、自分の音楽に自信をもつというのはまた別のことのようです。
白鳥さんは、クラシックとは違う歌唱法で、ウィーンのヨハン・シュトラウス・オーケストラの演奏をバックにクラシックを歌う。
石井さんは、フランス人でもフランスの生まれ育ちでもないのに、フランスの流行歌であるシャンソンをパリの一流の舞台で歌う。
石井さんの本のなかで、あの彫刻家のジャコメッティが彼女に、
「あなたが外国の歌を何語で歌おうと、あなたの歌は好子の歌なのだ」
と言われたエピソードがありました。
レベル感は相当違いますが(レベル感だけじゃない。ジャコメッティですよ。世界が違う)、クラシックを歌うからといって、音大生やオペラ歌手を基準に良し悪しを考えてもむだなことで、自分の歌を見つけるのみだというのは、同じかもしれないなと思いました。
そっちの方が難しいかもしれませんが、そっちしかない。
むだな比較をいったん手放して、もくもくと精進していこうと思ったのでした。