タイトルの「ダニエル」とは、ダニエル・ラドクリフ、映画『ハリー・ポッター』シリーズで主役ハリーを演じた子、少年、青年のこと。
物語の主人公は、ハリー役の最終選考でダニエルに敗れた少年、という設定。
完全フィクションです。読んだのは映画を観る前でした。
映画は大ヒットし、少年は自分が得たかもしれない栄光を他人が手にしているのを、毎日毎日これでもかと見せつけられることになる。熱狂は何年も止むことがなく、彼は挫折と妬みに苦しみ続ける。
そんな風に育っていった少年に、次のチャンスは訪れるのか? というおはなし。
彼がハリー役を射止めたとしても、同じようにヒットしたかはわからない。作品がヒットしても、少年がそこまで人気が出るかもわからない。ダニエルが手にしたものを、彼が手にできた保証はないのだ。逆にダニエルが失ったものを彼も失うとも限らない。
しかも最終選考に残ったのは。少年の積年の努力の成果というわけでもない。
そこはちょっと違和感でしたが、もしかしたら、ハリーになり損ねたことを気に病むことで、もっとツラいことから自分を守っていたのかもしれない。少年の家庭環境がもっと温かな、彼を守るものであったなら。
実在の人物や出来事が出てくるので、「あれ、これノンフィクションだっけ?」と思ったら、ちゃんとフィクションでした。しかも、登場する実在の人物や映画会社に許可も取らずに出版したというから驚きです。
★★★
『君の名はダニエル』
ダヴィド・フェンキノス 著
アストラハウス
2022年発行