母親というのは、子どものためならこれほど強くなれるのか。
称賛の気持ちと、これほどがんばることを求められるのか、と暗澹たる気持ちと。
元夫の激しい暴力から逃れ、幼い2人の娘とともにシェルターに身を寄せるサンドラ。公営住宅は長い順番待ちで、仕事のため、子どもたちのため、家を得るには自分で建築するしかない、と決意する。暴力をはじめ、つらいシーンがたくさんあり、そのなかでも救いあり、清々しさあり、多くの問題提起もあって、大勢に見てもらえたらいいなと思える作品です。
舞台はアイルランド。
子どもに食べさせるために肉体労働を掛け持ちして、家がなければ自力で建てるしかなく。恐怖と闘いながら、決められた通りに毎週、元夫に子どもたちを預けに行き。
司法からはDVの夫からなぜそれまで逃げなかったのかと責められ、暴力のトラウマで取り乱せば支援団体のスタッフからしっかりしろと責められ。
そこまでするサンドラは、尊敬する。ですが、これは母親の強さを称えればいいことではないはず。
ドメスティックバイオレンスと、その結果としての貧困から子どもを守るのが、原題『herself』のとおり母親ひとりの責任にされてしまうのはなぜなのだろう。
母娘を守る気のない国や行政の責任が問われなくては。
日本はどうだろう。
サンドラの小さな家
2020年製作/97分/G/アイルランド・イギリス合作
原題:Herself
監督:フィリダ・ロイド
脚本・主演:クレア・ダン