想いが「本」という形になるまで | クリエイトブックス

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【エコロジストのまなざし17

先日の日曜日、懐かしい面々と会ってきました。

場所は某大学構内のレストラン。

僕の大学時代の恩師、鷲谷いづみ先生が退官されるというので、

研究室のOBOGが同窓会を開いて、鷲谷先生をご招待したのです。

 


きっかけは、広島で行われた学会に集った三人のOB(僕も含め)で、

鷲谷先生の退官記念の集いを開こうと企画したこと。

でも先生は、来春から某私立大へ移られて、変わらない研究への情熱を燃やし続けることが決まっていたこともあり、「退官」という形を取ることを固辞されたのです。

 

だったら、同窓会という形にしようと話はまとまり、ゆるゆると準備を進めてようやくこの日を迎えたという次第。

 

 

中学生のころ、僕はどういう訳か、理科の教科書の一番後ろに書かれた

「生態学(=エコロジー)」のページにぞっこん惚れ込んでしまいました。

 

食う食われる関係、エネルギーと物質の循環、全ての命を支える太陽と植物の役割…。

 

そこに秘められた物語の奥行きと深さに、なぜか何にも増してワクワくしたのです。なぜこんなに面白い話にみんなも夢中になれないのかと疑問にさえ思いました(笑)。

 

そしてその延長で、大学、大学院と一貫して生態学を学び、研究者として生きる夢を持ったのです。

 

 

でも学会や勉強会などを通じて、いざその世界に足を踏み入れてみると、

どうも自由に羽ばたけるイメージが持てない自分に気づいてしまいました。

 

次々と研究課題を設定して、きらりと光る成果を発表し続ける。

遊ぶように学び、学ぶほどに世界が構築され、それが他の研究者や普通の人

をも巻き込んで大きな潮流となっていく……。

 

そんな、一流の研究者の在り方と比べて、壁にぶつかり、停滞し、苦しみながら匍匐前進していく僕の在り方とのあまりのギャップにクラクラしました。

 

「ああ、そうか。僕はこの世界の住人として生きるのは、ちょっと違うんだな」

と直感し、ググッと人生の舵を切ったのが25歳になったばかりの秋でした。

 

それから山歩きのガイドブックや植物図鑑を発行していた老舗出版社に就職し、編集者としての人生を歩み始める訳ですが、不思議と鷲谷先生とのご縁は途切れることなく、これまでの20年間で4冊の著書を一緒に産み出すことができました。

 

『タネはどこからきたか?』

『葉っぱの不思議な力』

『花はなぜ咲くのか?』

『コウノトリの翼』

 

ベストセラーにはならなかったものの、課題図書に選ばれたり、入試に引用されたり、新聞の書評に紹介されたりして読者を増やし続けてくれたので、

「エコロジカルなものの見方のおもしろさをより多くの人に伝える」

という狙いをある程度果たしてくれたと思います。

 

だから、ある意味で、中学生の頃から抱いていた想いをカタチにして、自分以外の多くの人の心に届けることには成功したと言えるでしょう。

 

 

 

同窓会は盛り上がりを見せてあっと言う間に3時間が過ぎました。

自己紹介タイムでは、一人ひとりにマイクを回しただけでは飽き足らなかったのか、鷲谷先生自ら、それぞれの人の研究成果と、学問の発展という流れからの位置づけや意味、役割といったことを逐一補足していくという展開になりました。

 

花を研究した人、蜂を研究した人、熊をテーマに選んだ人、魚や昆虫が研究対象だった人。研究手法は野山を歩き回るフィールドワークから遺伝子を調べる高度な室内実験まで、実に多様で多彩で、一見まとまりが無いのですが、そこには鷲谷先生のときどきの意図があり、時代の背景があり、バラバラに思えるテーマや手法も実は大きな流れのなかに位置づけられて全てがつながっているという、見事なまでの実例だったのです。

 

ある人がそれを「大河ドラマのような」と例えていたのだけれど、50人近い人の情熱と想いの深さ、そしてそれぞれの人の人間的な魅力が緯糸になり、鷲谷先生の意図や目的、時代の要請や必然が縦糸となって、まさに長いタペストリー(織物)となっている様子がありありと浮かんだ、そんな夜でした。

 


 

あっと言う間の3時間が過ぎて、会場をあとにする人を見送りながら、鷲谷先生がお一人ずつに手渡された贈物がありました。

 

先生手ずから育て、掘り出し、洗ったというサツマイモ、放っておいても丈夫にすくすく育ったというキウイ、そしてこの前の春に出版したばかりの先生のご著書です。もちろん!僕が編集役を担当させていただきました(笑)

 


 

想いをカタチにするには「本」という存在ほど美しく、いつまでも長く心に残るものは無いでしょう。

 

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