東京ビックサイトでいま、東京国際ブックフェア(TIBF)を開催中です。
今回の話題はなんといっても電子出版。『デジタルパブリッシングフェア』と会場を2分していて、関心の高さをうかがわせます。
いま電子出版は本当にホットな話題です。注目はなんといっても
AppleのiPad
ですよね。はじめて廉価でワクワクするハードと、iTunes&iPodで世界的に大成功した流れを受けた「iBooks」というサービスで、こんどは「書籍」というジャンルに革命を起こそうというのですから、注目を集めるのも当然かもしれません。なにせ、iPadはすでに世界中で300万台以上売れているのです。それもわずか80日で!
僕の周辺でも使う人が徐々に増えていますが、まだまだ様子見も多いです。でももうひとつの注目、iPhoneはユーザー総数が世界で600万台、国内だけでも200万台を超えています。そういう僕も、この1月から使い始めました(^ ^)
でも今回のTIBFの話題は、もっぱら日本版の電子書籍リーダーとGoogleでした。
電子書籍リーダーといっても各社各様で、はっきり言ってあまりおもしろいデバイスはなかったのですが、大日本印刷や凸版印刷といった大手が各出版社と提携していく動きがあり、その本気度合いは無視できません。
でも僕のいちばんの関心は、Googleの新しいサービスです。
その名も「Googleブックス」。
出版社が許可を出せば、その全ページをスキャンして、OCR(自動テキスト読み取りソフト)で文字情報をデータベース化。Googleの検索キーワードと連動して、同じキーワードを持つ書籍を「Googleブックス」のプレビュー画面としてブラウザーで見られるようにするというものです。
そんな事したら著作権侵害じゃないの?
そう思った人もいるでしょう。そこを避けるための工夫もちゃんとありました。
まず、1ヶ月で2割までしか見られないように制限する事。そして、残り8割を見るためにはお金を払ってね、という「しくみ」なのです。
Googleの説明では、検索キーワードが読者を書籍の発見に導き、閲覧へと誘います。そこで気に入ったらアマゾンや最寄りのリアル書店から本を買うように導線をつくることで、本の販売促進につながるとのこと。さらには、興味関心の高いユーザーほど本の購買確率が高まるから、けして著作権者の不利益にはならないというのです。

著作権者の販売代理人たる出版社でも売行きのチェックができます。
出版社としても、特段の準備も投資もいらず、契約さえ結べばGoogleでの販促と販売が可能になるのですから、一見いい事だらけ。
でもこの話にはどこかオチがあるはずです。
ひとつには、再販価格制度の崩壊。書籍はどんなに古くなっても定価を守って売るように守られており、出版契約や流通の仕組みなどすべてが「定価販売」をベースに成立しています。一方で、電子書籍は紙よりも値段を押さえているものが多いので、Googleでの販売(Googleエディションという名前だそうです)も、そのような圧力を受ける事が容易に想像されます。
どこまで出版社が踏ん張れるか。でもきっと、中小出版社からその一角は崩れていくでしょう。つまり、既存の出版流通制度の崩壊のきっかけにならないとも限らないのです。
もうひとつが、amazonやAppleが提供しようとしている電子書籍サービス(KindleとiBooks)と既存の紙の本との「競争と共存」です。デバイスの違いだけでなく、販売価格、ユーザビリティー、あるいは「仕組み」提供者との契約内容(Appleのマージンが30%など)など、競争はもう始まっています。今のところ日本ではサービスが始まっているとは言いがたいのですが(各出版社が契約内容等を見つつ様子見をしている?)、アメリカでは活況で、紙の本との共存、あるいは出版社のもうひとつの販売チャンネルとしてマーケットが成長しています。
さらに、たとえばAppleの場合は電子書籍として販売可能なものかどうかが「審査」されることも問題視されています。「それって表現の自由に抵触しないの?」という声もある一方で、Appleの美学、哲学の問題でもあり、ユーザー、利用者、コンテンツ提供者すべてはそれを受け入れるか、あるいは受け入れないかという判断しかできません。外からの批評はあまり意味を持たないのです(ジョブスの性格からして)。
Googleにも基準がちゃんとあって、どんなにググっても決してヒットしないサイトというのが実はあります。それって、いまの世の中では「存在しないサイト」と同義です。このような、サービス提供者の「都合」に、利用者もコンテンツ提供者もある意味従わざるを得ない状況が生まれているのです。
僕も仕事の一環として電子書籍にかかわり始めていますが、サービス開始はまだ少し先の事もあって、まだあまり実感はつかんでいません。ただ大きな予感はあります。それは「これまでの出版のありかたが一度壊れて、新しく構築されていく過程にあるのだな」ということ。
これまでの古い出版流通にとって「厳しい」状況がどんどん産まれているなかで、勢いのあるところが当然、出版の世界も引っ張っていき、いつのまにか主役になっているでしょう。従来の勢力である、大手出版社、大手取次、大手書店、そして有名作家……。そして新しいプレイヤーの、新興出版社、AppleやamazonやGoogle、そして個人のクリエイターたち。
こんな状況で活躍が予想されるのが「代理人」です。代理人=エージェント。その主な役割は、
・クリエイターや作家を第一に考える「サポーター」としての存在
です。そして、彼らのクライアントは依頼主ですから、
・最大利益はクライアント(クリエイター)と読者(ユーザー)に(出版社や取次ではなく)
さらには、旧来の縛りから解き放たれる傾向が強まるので、
・自由で拘束のない表現がどんどん産まれる(Appleでさえ制限、制約はある)
こういった流れが、「個人の自由度の最大化と企業パワーの低減」へと自然につながっていく様な気がしてなりません。おもしろい時代です。