神戸です。
よかれと思って…私が信頼を失った、ある日の記憶
13年前、わたしが
カウンセラーとして
駆け出しの頃、横浜に
住んでいる女性の方から
セッションの予約を受けた
時の話です。
わたしは「人を癒せる人間になりたい」と
強く願っていました。
それがお世話になった人たちに対する恩返しだと
思い、この機会を絶対に活かすぞ!というやる気に
みなぎっていたのです。
そして、その女性のお宅にお邪魔し、
カウンセリングを提供しました。
私は女性と向き合い、心を癒そうと一生懸命に
セッションをしました。
その当時のわたしのやり方は、
スピリチュアル的なアドバイスを与える
タイプのものでした。
(今ではその手法は用いません)。
そして、見事に原因を
見つけ出し、改善策を
提案することができた!と確信したのです。
しかし、その3日後、その女性の知人から
メッセージをもらいました。
「あの子、あなたのセッションを受けてから、
ずっと泣き止まないんだけど」
わたしはガツンと頭を殴られるような
感覚に陥りました。
なんで?
あんなに一生懸命に
やったのに?
何が悪かったの?
わたしは電話越しに、
土下座する勢いで
謝り倒しました。
いったい何が悪かったのかも
分からずに、ひたすら
謝った経験。
あなたにも、ありませんか?
わたしは「よかれ」と思って、全力で
頑張りました。
でも、結果として、大切な信頼を
失ってしまったのです。
さて、何をどう改善すれば、
こういった状況で
信頼を失うことなく、
逆に関係性を
築いていけるのでしょうか?
この記事で、一緒に
学んでいきましょう。
1. 傷跡は「弱さ」ではなく「美しさ」に変わる
信頼関係が壊れてしまった時、
私たちはまるで、光の届かない
深い海の底に、一人沈んでいく
ような感覚に陥ります。
「もう、何をしても無駄だ」
「相手は、もう私のことなんて
見たくもないだろう」
そんな無力感と絶望が、心を
ぎゅっと掴んで離しませんよね。
しかし、ここでお伝えしたい、
一つの希望の光があります。
それは、「失われた信頼は、元に
戻すものではなく、新しく
育て直すことができる」という
ことです。
壊れたガラスのコップを、元通りに
することはできません。
ですが、私たちは、そのヒビが入った
コップを、「金継ぎ(きんつぎ)」に
よって、以前よりもさらに美しく、
深い味わいのあるものへと
生まれ変わらせることができます。
金継ぎとは、割れた器の破片を漆で
つなぎ、その継ぎ目を金で装飾する、
日本の伝統的な修復技法です。傷を
隠すのではなく、その傷跡さえも
「その器だけが持つ景色」として
愛でる、という、とても美しい思想が
根底にあります。
人間関係も、これと全く同じです。
今回の過ちによって生まれてしまった
「ヒビ」は、二人の関係にとって、
決して終わりを意味するものでは
ありません。
むしろ、そのヒビと誠実に向き合い、
丁寧に、愛情を込めて修復していく
ことで、以前よりもさらに深く、強く、
そしてお互いを慈しむことができる、
全く新しい関係性を築き上げるための、
尊いきっかけとなり得るのです。
大切なのは、「元に戻そう」と
焦ることではありません。
「この傷跡と共に、新しい関係を、
もう一度二人で創り上げていきましょう」
そう、心に決めること。
この考え方こそが、あなたを暗い海の底から
救い出し、未来への一歩を踏み出すための、
最初の光となります。
2. まずは、自分を責めるその手を、そっと止めてみませんか?
さて、ここからが本題です。
では、具体的に、何から始めれば
いいのでしょうか。
意外に思われるかもしれませんが、
信頼を取り戻すための旅は、相手に謝罪する
ことから始まるのではありません。
何よりも先に、あなたがすべきこと。
それは、「自分自身を、
許してあげる」ことです。
「あんな過ちを犯した
自分を、許せるはずがない」
そう思うかもしれませんね。
その気持ち、痛いほど
よく分かります。
しかし、罪悪感という
重たい鎖に心を縛られ、
自分を責め続けている
状態では、決して前には
進めないのです。
なぜなら、自分を罰して
いる間、私たちの意識は、
常に過去という名の監獄に
囚われてしまうから。
そして、その苦しみから
逃れるために、「相手にも
非があった」「あの時の状況では
仕方がなかった」と、無意識のうちに
心のどこかで責任転嫁を
始めてしまうことさえ
あるのです。
これでは、心からの誠実な
対話など、到底望めませんよね。
だから、まずは、一度、
静かに立ち止まりましょう。
そして、あなたの親友に
寄り添うように、あなた
自身の心と、静かに
向き合ってみてください。
「そっか、あの時、そんな
気持ちだったんだね」
「本当は、寂しかったんだね」
「未熟だったかもしれないけど、
それも、あなたの一部なんだよ」
大切なのは、良い悪いの
ジャッジをせず、ただ
「そうだったんだね」と、
自分の心の声を聴き、ありのままの
感情を受け入れてあげる
ことです。
過ちを犯してしまった、弱い自分。
不完全な自分。
その自分を、まずはあなた
自身が、ぎゅっと優しく
抱きしめてあげてください。
自分を許し、受け入れることが
できて初めて、私たちは、未来へと
向かうためのコンパスを、
その手に取り戻すことが
できるのですから。
3. 小さな「信頼のレンガ」を、一つひとつ積み重ねていく
自分自身の心と向き合う準備が
できたら、次はいよいよ、相手へ
のアプローチです。
ここで、多くの人が陥りがちな
のが、「言葉だけで、すべてを
解決しようとする」という過ちです。
「本当にごめんなさい」
「心から反省しています」
「もう二度としません」
もちろん、誠意のこもった謝罪の
言葉は、大前提として不可欠です。
しかし、一度失われた信頼は、
残念ながら、言葉だけで回復する
ほど簡単なものではありません。
なぜなら、相手の心には
「また裏切られるかもしれない」
という、消えない傷と恐怖が、
深く刻まれてしまっているからです。
その氷のように冷たい恐怖を、
少しずつ溶かしていくために必要なもの。
それは、「言葉」の繰り返しでは
なく、一貫した、ひたむきな
「行動」です。
それは、派手なサプライズや、
高価なプレゼントのことでは
ありません。
相手が「疲れた」と口にする前に、
温かいお茶を淹れる
どんなに些細な約束でも、必ず守る
自分の都合ではなく、常に相手の気
持ちやペースを最優先に考える
そんな、誰の目にも留まらないかも
しれない、けれど、心からの思いやりが
込められた、地道で誠実な行動
の積み重ねです。
信頼とは、一瞬で建てられる豪華な
宮殿ではなく、時間をかけて、
小さなレンガを一つひとつ丁寧に
積み上げていくことで、ようやく完成する、
小さくも頑丈な家に似ています。
すぐには、相手の態度は変わらない
かもしれません。
むしろ、あなたの覚悟を試すような、
冷たい言葉を投げかけられることも
あるでしょう。
それは、本当に辛く、心が折れそう
になる瞬間です。
でも、どうか、ここで諦めないでください。
焦らず、見返りを求めず、ただひた
すらに、誠実という名のレンガを
積み重ねていく。
その一貫したあなたの姿こそが、
相手の凍てついた心を、春の陽だまり
のように、少しずつ、少しずつ、
溶かしていく唯一の方法なのです。
4. 二人で「未来の地図」を描く、勇気ある対話
誠実な行動を、辛抱強く、続けることが
できたら。相手の表情や言葉の端々に、
ほんの少しでも雪解けの兆しが見えたなら。
それが、次のステップに進むための、
大切な合図です。
旅の最終章は、二人で「新しい関係性」と
いう名の船を、未来へと漕ぎ出すための、
勇気ある対話です。
ここでの最も大切なポイントは、
過去の過ちを蒸し返して、どちらが
正しかったかを議論することではありません。
そうではなく、
「今回の出来事を経て、私たちは、
お互いにとって、どんな存在で
ありたいだろう?」
「これから、どんな景色を、二人で
一緒に見ていきたいだろう?」
といった、「未来」に焦点を当てた、
希望の地図を描くための対話です。
そして、その対話の中で、どうか、
あなたの弱さや未熟さも、
正直に打ち明けてみてください。
「あの時の自分は、自分のことしか
見えていなくて、君を深く
傷つけてしまった。
自分の未熟さのせいです。
本当にごめん」
といったように、格好つけず、
言い訳をせず、自分の非を認め、
ありのままの弱さをさらけ出すこと。
これは、あなたの弱さを
見せる行為ではなく、
相手を心から信頼しているという、
最も誠実な「強さ」の証です。
あなたの勇気ある告白は、
相手の心に深く響き、
「この人は、本当に
変わろうとしてくれているんだ」
という、確かな信頼の光を
灯すきっかけとなるでしょう。
この対話を経て、二人の関係は、
もはや以前と同じものでは
なくなっているはずです。
傷つき、涙を流し、
それでもお互いの手を離さなかったからこそ
辿り着ける、以前よりも、
もっと深く、もっと慈しみに満ちた、
新しい関係性が、そこから、
ゆっくりと始まっていくのです。
5. 大丈夫、あなたなら、きっと乗り越えられる
ここまで、信頼を取り戻すための
心の旅路を、一緒に歩んできましたが、
いかがでしたでしょうか。
もしかしたら、
「自分には、そんなのできないかも
しれない…」と、不安な気持ちでいっぱいに
なってしまったかもしれませんね。
そう感じてしまうのは、あなたが、
それだけ相手のことを、
心から大切に想っている、何よりの証拠です。
大丈夫ですよ。
焦る必要は、全くありません。
この記事を、お守りのように、何度も、何度も、
読み返してみてください。
そして、できそうなことから、あなたの小さな歩幅で、
一つずつ、ゆっくりと試してみてほしいのです。
たとえ、今は暗く長いトンネルの、ど真ん中にいるように
感じていても、誠実な心と、諦めない勇気さえあれば、
必ず、その先に出口の光は見えてきます。
あなたが、再び、
大切な人と心からの笑顔で向き合える日が
来ることを、心から、本当に心から、
応援しています。
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