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問題解決のアート

 慶應義塾大学理工学部金沢孝教授の勉強会に参加した。久しぶりに大学時代の恩師、川瀬武志(現管理工学科外来講師)さんの講演を聞いた。川瀬さんは日本のIE(Industrial Engineering)の草分けであり、マンデルの薫陶を受けた泰斗である。75歳になられた川瀬さんは鋭い洞察と示唆に溢れた話を活舌よく展開された。瞬く間の1時間であった。しかも人を包み込む、あの眼差しに昔の若き姿を思い起こした。
 テーマは「IE問題の解決」である。日本の改善活動の停滞は低賃金国への生産拠点移転にある。改善と低賃金を秤にかけた結果である。日常活動が第一、改善は上積み努力という現実である。今こそ自分の仕事と改善を車輪の両輪とする「全員責任型の改善活動」の時である。改善は下請けの利害と相反する。高度な改善は自前の社員による取組みが必須である。このことをトップマネジメントは改めて認識すべきである。ところで今までは自動車等、ものを持つことがステータスであった。ものを持つコストが増大し、ものの価値に対する認識が変化した。経済から生活第一主義の流れである。環境問題、高齢化社会に対応した介護、医療、農業、防災等、焦眉の急である。IEは問題解決のアートである。IEの原点となる価値観をどう位置づけるかがポイントである。ネクスト・ソサエテイの底支えとなるよう期待する。

(推薦書籍)
IE問題の基礎
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