フィラデルフィア残照 | クリエイジ コラム ◆ 一週一冊良い本を読もう ◆

フィラデルフィア残照

 22年ぶりにアメリカ合衆国の旧都フィラデルフィアを再訪した。初めて訪れた時はニューヨークから日帰りだったのでほとんど覚えておらず、『ロッキー』(1976)、『フィラデルフィア』(93)、『ナショナル・トレジャー』(2004)などの映画で街の景色を記憶していた。
 都会でありながら田舎の空気に触れているような感覚に奇妙な安堵感が寄せてくる。良くも悪くも大人しい都市の歩みが息づいている。帰ってから司馬遼太郎の『アメリカ素描』を読み返したら、1985年の折に“廃品同然”の“機能を失った都市”とフィラデルフィアのスケッチが綴られ、その光景は今に続いているかのような印象に繋がった。
 Digby Baltzell『Puritan Boston and Quaker Philadelphia: Two Protestant Ethics and the Spirit of Class Authority and Leadership』(79)ではボストンとの比較でフィラデルフィア衰退の分析が試みられているが、ウィリアム・ペン入植以来の歴史の風に心和ませられるこの街は、ボストンと同じくらいまた訪ねたくなる。

(推薦書籍)
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