急に 何かを取りこぼした気がする
例えば 感動する音楽を聴いたとき
溢れ出す気持ちは 感動と共に…焦り
自分はここに居てはいけない気がした
だからあの日も
ここに居たくなくなって
遠くに行きたかったから
自転車を漕いで。
トラックにぶつかり 私は死んだ
「坂の下の幽霊」
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俺の通う高校はなんの変哲もない、公立高校だ。
そしてそこに俺は一般生徒として普通に通っている。
今日も俺は 普通に家を出る。
朝 7時に起きたから 部活の朝練に遅れると思ったのだが、そういえば今日は月曜日であることに気付き ああ今日は朝練無かったよし安心だとゆっくり 朝飯を食べる。
そして家の脇の自転車に 跨がってシャーッと 坂を下る。この坂を下る時 風は気持ちいいのだが いつも切なくなる。
この坂を下りるということはつまるところ 帰りは坂を上らないとならない訳で。
となると 正にこれは「行きはよいよい帰りは怖い」状態なのだ。
その行為は もしかして自分の事を暗示しているようで。
何も考えずに 早くに楽な事をして 後がキツくなる。
いつも坂を下りるときに取り付かれるくだらない妄想だ。
そんな 友達に言ったら 笑われるかもしくは どうでもいいと一蹴されるような事をぼやぼや真面目に考えていると 不意に後ろから声が掛かった。
「おーい 小池くーん。こーいーけーまーさーたーだーくん」
誰だと後ろを向くとクラスメイトだ…というか 声でだいたい分かったが …奴だ。
「おはよう 明石。ついでにそのウザったい挨拶を毎日するのは止めたまえ」
「おめえこそ 俺に冷静に突っ込む時だけ その口調すんの止めろそして悲しいからもっとテンション上げろ」
「お前に テンションは咎められたくない。そして そのさみしがりやをなんとかしろ」
「さみしくねえ!悲しいんだ—ッ!!!!!」
まあ こんな馬鹿話ができる友人である。朝のテンションの温度差は尋常ならざるウザさだが。
だいたい毎朝 奴の騒々しい挨拶とクソ五月蝿いマシンガントークとで俺のハイスクールライフが幕開けする。
で そういう騒がしい1日の幕開けをしている最中に学校に着くワケだ。
靴箱の前でガタガタと靴を履き替えながら 小池よぉ、今日って物理無いよな!?無いよな!?無いと言ってくれ! あるよ 嘘だろ!?教科書忘れた! は?お前物理も持ってかえってんの!? おう …軽く尊敬します。でも教科書は貸さねーぞB組から借りろ やだあ昌忠くん冷たいのね …キモい …酷いな。おい
なんていう会話をした後、A組の教室に入る。
ちなみに A組の教室は靴箱から一番近い。
前から ABCDEF と並んだ教室の一番前な故、ラッキークラスと呼ばれている。
教室に入るとそれはソレで また五月蝿い仲間が寄ってくる。
何故か俺の周りの人間は五月蝿いのだ。
まず筆頭は明石。明石仁だ。
その次は、中村梓。
で その後が 平田司だ。
この三人は 1年の五月蝿ぃヤツらbest3だ。
そして 何故かこの三人組+俺 がつるんでいる…なんで?
三人組は 分かる。
五月蝿い同士気が合うんだろう。
しかし 俺はハッキリいって静な部類に入るんじゃあないだろうか(司いわく、「早く大人になりたい症候群」…ピーターパン症候群の逆か?)。
「んでさあ、アタシの友達が言ってたんだけど」
昼飯の時刻 急に話したいことがあると言って 梓が声のトーンを落とす。
「学校の正門の横に 坂があるじゃない」
俺が朝 通る坂だ。
「あそこね…」
…だいたい話は読めたぞ。
「お化けが出るのよ」
…。
この時の俺の気持ちは
残念度30%
恐怖心60%
その他10%
ちなみに 大半を占める恐怖心はお化けに対して…ではない。
上記の会話は普通の戯言とも取れる。
しかし 俺にとっては明日槍は降らなくとも、放射能くらいは降るんではないかと思わせる威力がある。
詰まり 何が言いたいかと言うと、梓がどれだけリアリストか と言うことだ。
梓は 少しだけ茶色く脱色した背中位までの髪に左右一個づつピアスの穴、とてもシンプルな薄化粧で まあ見た目、いわゆる普通の高校生だ。
だが コイツは 歩く現実だ。(司いわく、かわいそうな奴。)
俺とは違って騒がしいタイプだが、たまに面に陰が出る。
なんかの事情があることは 司は勿論、俺も きっと明石も気付いてる。
まあ取り敢えずコイツは 信用ならない情報網からの情報はもちろん、化けもんだの怪奇現象だのは 絶対に信じないし他人に話したりもしない。
「梓 お前 何があったんだ?」
「…え?」
仕方ないから放課後 アイツらが居ないところで問い詰めてみる。
「…ああ お昼の事…かな?」
彼女特有の陰がかかる。
「あたしが あんな事を信じる訳がない…って。
…思ったんでしょ?」
…どうやらコイツ 確信犯だ。
俺が訊く前に梓は語りだした。
「あたしだってさ 自分がこんなことを言うの キャラじゃないって分かってる…分かってるけど!」
「…そこまで信用できる情報網なのか?」
「違うよ 見ちゃったの!」
「あたしだってさ 自分がこんなことを言うの キャラじゃないって分かってる…分かってるけど!」
「…そこまで信用できる情報網なのか?」
「違うよ 見ちゃったの!」
…何をだ?
「何をだ?」
「幽霊…よ」
…は?
「は?」
まさか 幽霊なんているわけない。つか 出るわけない。
「…信じて…無いでしょ」
梓は 顔を曇らせる。
「ああ」
俺は即答。
「…~~ッ やっぱり!!だから嫌だった!言わなきゃ良かった!」
梓は そのまま身を翻して行ってしまった。
だって流石に 高1の野郎が 化け物話を ああ、そうですか と信じる方が薄気味悪く無いか?