坂の下の幽霊 第20話 | campanula

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中1の夏。

まだ 梓とはそんなに仲の良いわけでも無く 中学生なので 女子と話すことも無い俺は、1年の始めに同じ班だった赤石仁と供に 司の家に遊びにいった。

「お邪魔しまーす」

司の家は自営業の蕎麦屋だから 店の表から入らずに 裏に回り ガラガラと勝手に家に入る。

「司あ、お友達!」

厨房から 耳の聡い司の母親が呼ぶ声。

「司ッ!」

二階からなかなか降りてこない司に 母親がもう一度叫ぶ。

しかし司は来ない。

「おばさん もう良いです。どうせ本です。俺達 勝手に司の部屋入るんで」

俺が見かねて言い、仁と供に階段を登る。



カンカン…部屋をノックする。
ここは 引き戸では無い。

「司ぁ 入るぞ」

中に入ると案の定 司は、机へ向かい本を読んでいる。

これらの本…司が急に寝る間を惜しんで読み始めた本は 司の姉の遺品だった。

それから 司はやけに小難しいあだ名を人に付けたりするようになった。

「おい 司」
仁が 司の机の隣にたち耳元に口を寄せて呼ぶ。

司が本当に読書に集中しているときは、こうしないと気付かない。

「…あ ゴメン 仁と正忠…来たのか。いつのまに?」

「…今だけどさあ」

「で 何の用?」

…こいつ 自分で人を呼びつけて それも忘れたのか!

「…お前が!今日!買い物に!付き合えと!」

「…ああ そうだったなあ~ いや ごめんごめん 怒んないでよ~」

誠意の欠片もない謝りかたは余計に腹が立つ。

「じゃあ 行こうか?」

「…そうだな…しっかしお前は…」




都内有数の 大手本屋に着くと司は言った。

「さあ じゃあとりあえず どんなのが良いかな?」

「知らねーよ、てか自分で読むんだろ?」

司が俺達を呼んだわけは 最近、姉の本も尽きたから新しい本を買いたい、その付き添いだ。

仁は言う
「てか何でお前は 自分で読む本も決められないんだよ?」
ごもっとも。俺も訊きたい。

「…やだなあ 読みたい本なら決められるよ。ただ 持ちきれないだろ?」

…は?

「さあ じゃあ先ずは あの棚からかなあ。仁と正忠も 5冊位 おすすめをチョイスしてよ!」


…何冊?






こいつ 何冊本を買うんだ!?