2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位受賞をしたこともあり、巷で話題の作品。
なんとなく好みじゃないような気もして読むか迷っていた。
この本、実はびっくりするほど長い。なんと600ページもある。読書好きではあるが長い本が苦手な人間にとっては、かなりハードルが高かった。
それでもその価値はあったと予め断言しておく。
読み始めたらあっという間であった。
以下ネタバレ
暴力的な父親に耐えられなくなり、子供たちを置いて母が出て行ってしまうところから始まる。その後沢山いた兄弟が次々に出ていき、主人公カイアは1人父親の元に取り残されてしまう。幼いカイアだが、皆んなが出ていく理由は理解できる。ただ皆んながカイアを置いていく理由が分からない。
ふと、怒りの葡萄を思い出す。
貧すれば鈍する。
他者を助けることができるのは、余裕のある人間だけである。父親の障害年金だけで暮らす貧しい家族には土台無理な話だ。
遂には父親も出ていき、カイアは1人きり。お金もない。
それでも湿地の資源の豊かさに助けられ、貝や魚を売り暮らす。貧しくても穏やかな暮らしを始める。
そんな中テイトと出会い、読み書きを教えてもらう。段々と互いに惹かれていくが、大学に進学したテイトはカイアとは住む世界が違うと気づき何も告げずに去ってしまう。それがいつも置いていかれるカイアにとってどんなに辛いことか想像に難くないのに。
このシーンでは、カイア目線でずっと読んでいる私は胸が締め付けられた。カイアはただ穏やかに暮らしたいだけなのに、何故こうもままならないことばかりが起こるのか。
せめてもう何事もないようにと思うが、あらすじを読んだ私は知っている。この後もっと大変なことに巻き込まれていくことを。
カイアが去った後、チェイスと出会う。後に死体で見つかることになる青年である。
カイアの幸せを願う人間としては遂に出会ってしまったと思いつつも、なぜチェイスが死ぬことになるのか、カイアが容疑者になるのか気になりこの辺りは一気呵成に読んだ。
結論から言えば、チェイスはひどいDV男であった。
カイアと付き合い始めるが、カイアはあくまでも浮気相手。それを知って離れていこうとするカイアを殴る。カイアは誰にも助けを求められず、追い込まれる。
そして、チェイスは殺される。
状況証拠により容疑者となったカイアの判決は、裁判に委ねられることとなる。
読み始めた時は、カイアが人を殺すわけがないとずっと信じながら読み進めていた。
その気持ちはだんだんとカイアじゃなければ良い、カイアが無罪になりますようにと祈る気持ちに変わっていった。
おそらくこの本を読んだ大半の人が、私と同じように祈りながら読んでいたであろう。
裁判の結果カイアは無罪となり、裁判中支えてくれたテイトと結婚する。しばらくは穏やかな時間を過ごす2人だが、幸せは長く続かずカイアが亡くなる。そしてテイトはカイアの遺品を整理する。
嫌な予感しかしない。心臓が早鐘を打つのを感じながら、恐る恐る読み進める。
テイトは見つけてしまう。
カイアがチェイスを殺した証拠を。
テイトは愕然とするが、証拠を全て燃やし物語は終わる。
読み終わった時に、どのような感情を私自身が抱いたのかを説明するのが困難であると感じた。そのためブログを書くことによって整理しようと思ったが、あまり上手くいかなかった。
間違っているかもしれない。
だが、ただ皆んなに置いていかれ1人だったカイアが最期に幸せな時間を過ごせたことにただ安堵する。