EPISODE1
第一話
此処は私立奏雅学院 高等部
キーンコーンカーンコーン
HRが終わった事を告げる
聞きなれた鐘の音
生徒がざわざわと落ち着かない
様子で次々と教室を出て行く。
久我練は、真っ先に3Fへと
駆け降りる。
“何だお前?”というように
睨みつけて来る先輩方を
一瞥し、叫んだ。
練「美月先輩――っ!一緒に
帰りましょうよ――っ!!」
美「…練…。
叫ばなくても聞こえるわよ」
練「えー、だってほら。
美月先輩見つけちゃったから、
これは叫ぶしかないな、と」
美「意味不明。まぁいいわ、
祐希探しに行くわよ」
練「はぁい」
小さく溜息を吐いて、美月は
教室を後にする。
2人が向かったのは、旧校舎
にある応接室。
ノックもせず、中に入れば
祐希は奥の椅子に、我が物
顔で座りパソコンの画面へ
見入っていた。
学校であり、当然未成年で
あるのにも関わらず堂々と
煙草を吸いながら。
本来なら学校に来た客人を
迎える為の部屋なはずだが
旧校舎ともあり、使われなく
なったのか無人となった
その部屋は今や彼の
私室と化していたのだった。
美「祐希帰るわよ」
祐「ん、あぁ。
ちょっと待ってや?
もう少しで解けんねん」
その言葉に、美月がピクッと
反応する。しかし、すぐに
平素を装い「そう」と
返事を返しただけだった。
練「…解けるって何がですか、
祐希先輩…?」
祐「パズルみたいなモンやな。
…おー、終わった終わった。
んじゃ、帰りますか」
それから3人でいつものように
他愛もない会話をしながら
それぞれの家へと帰ってゆく。
一ノ瀬美月
大人びた容姿に、誰に対しても
優しく接し、学歴・運動共に優秀で
先生達のお気に入り。まさに学院の
アイドル的存在。
おしとやかな彼女とは正反対に彼、
五十嵐祐希は、黒髪の短髪に
赤メッシュ。耳にはいくつもの
ピアスが付いている。
些か奇妙な組み合わせだ。
2人はいつもの場所に向かう。
こじんまりとした小さな喫茶店。
美「…世の中には知らない方が
良い事もある、とはまさにこの事ね」
祐「せやなー。まぁ普通はあり得ん
話やからな」
しかし、一ノ瀬美月、五十嵐祐希共に
それらは全て偽りの姿。
美月は付けていたウイッグを
取り外す。
美「祐(タスク)例の件は?
さっき解けたって言ったわよね」
先ほどとは打って変わって、
酷く落ち着いた、透き通る
様な声で美月は祐希に問う。
祐「…んあ、まぁな。
結果は惨敗。勘くぐられたかもな。
でもまぁ、INFELNO(奴ら)、動いて
来ないと思うで?」
美「…どうして?」
明「…裏切り者がいたからな」
店のマスター、明希が口をはさむ。
一体彼等は何者なのだろうか。
AM2:00
美月は港にいた。
イヤホンマイクから祐希
の声が聞こえる。
漆黒の黒服に身を包んだ彼女を
もはや確認する事は出来ない。
美月は祐希にすぐさま
“異変”を報告する。
美「…人が極端に少ないわ…。
せいぜい部下だけで25人て
とこかしら?梧藤と側近の
志貴を入れても27人。
いくら密輸と言っても
これじゃぁ…。今回の密輸、
梧藤の独断ではなさそうね。
…とにかく片付けて来るから
その辺のこと調べといて」
祐『りょーかい』
美月は敵の前に音もなく立つ。
この暗闇で相手から、こちらの
姿は確認出来ないはずだ。
美月は持っていた扇子を下から
上へと、滑るように動かす。
1st.Wind Pulse
-風の道-
爆風と共に7人の命が
無情にも消え去る。
そこに残ったのは、血と
無数の肉片だけ。
美月は顔色一つ変えずに言う。
美「あっけない……」
殺しが良いと思った事など
一度もない。
けれど、生きる為に
殺すしか無いのならそれは
仕方のないこと。
彼女がいるのはそういう世界。
―殺ラナケレバ自分ガ殺ラレル―
2nd.Wind Blade
-風刃-
美月は扇子を閉じると、
今度は胸のあたりで十字を切る。
すると今まで、こちらの姿を
必死になって探していた男から
大量の血が吹き出し、一瞬にして
一面を深紅の海へと染め上げる。
美月は一歩、また一歩と歩みを
進める。その度に、小さな水音が
辺りに響き渡り、更なる恐怖を
煽っていた。
男「……ッひぃ」
そうして彼女は最後の山へと
近付く。港の街頭に照らし出された
その顔は、所々返り血を浴びては
いるものの、美しかった。
口許には笑みさえ浮かべて
いるように見える。
同じように一人ひとり消して行く。
そして、梧藤大輔と、その側近を
除く最後の一人。
男「あ…あわわ…あぁ……」
声にならない恐怖。
美月に銃を向けてはいるものの
その腕は震えていて使い物に
ならなかった。
恐怖のあまり、腰を抜かし、
それでも本能で逃げようと
後ずされば、そこにはさっきまで
同じ時間を過ごしていたであろう
仲間達の骸。
「!!」
3th.Wind Snake
-風蛇-
美月が弧を描くように、扇子を
振れば、彼の身体が持ち上がり
空気の圧力によって絞めあげ
られていく。
「…ッがは!!」
やがて、彼の身体はその力に
耐え切れずに事切れる。
美月は、何事もなかったかの
ように梧藤の元へ向かった。
梧「お前、何者だ?」
志「INFELNOの仲間か?」
美「No.でも、目的は同じよ。
INFELNO(あっち)と」
梧「何だと!?」
4th.Wind Bullet
-風弾-
美「もう血はは見たくない…今日は」
美月がそう呟くと、二人の
動きが止まる。
音もなく距離を縮めれば、
鳩尾に拳を決めた。
撃ち込まれた風弾は、ゆっくりと
身体の内臓機関を破壊する――
美「the End.」
祐『お疲れさん。…相変わらずっつうか
今回も派手にやったな。まぁ、後処理
やるん俺ちゃうからええけど』
美「…何か分かった?」
祐『んあ まぁな…。
今回の密輸、やっぱり梧籐達は
ただの囮に過ぎんかったみたいやな。
梧籐達には知らされんかったらしい。
本当の目的は、INFELNO内の裏切り者
クロウディアと、それに加勢した
梧籐大輔の抹殺。まぁ、それも
アンタが一人で始末してくれたから
向こうにとっちゃ好都合やったって
わけやな』
美「…そうね。あたしが梧籐達を
始末してからしばらくして、何人かの
人間が港を出入りしてるようだったもの」
祐希の声に混じって明希の
声が聞こえる。
明『また厄介な奴らを敵に回した
もんだな。そう思わないか、祐?』
苦笑交じりに祐が答える。
祐『…まぁ否定はせぇへん』
暗闇に身を潜めている人物に彼女
達が気付くことはない。
?「…美月…先輩…?」