私の友達の話 | クラフトPとろのブログ

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クラフトPという名前で、ボーカロイド曲を作っていたり

今日はある友人のことについて書こうかなと思う。

 

まだ20代の頃、私はある雑貨屋のようなところで仕事をしてた。いろんなお客さんが来るところだったけど、小さい町だったので常連さんとはすぐに仲良くなるし、やがてプライベートな交流になることもよくあった。

 

よく来る女子高校生にカツミという子がいた。よく笑う子で、なんとなく元NGTの中村歩加さんを見るとよく思い出すのだけど、豪快な笑い方をする子で周りを明るくさせる雰囲気を持つ少女だった。

 

どういう親御さんに育てられるとこういう明るい子になるのだろうと思ったら、どうやらご両親はいないらしい。あんまりそこを詳しく聞いたことはなかったのだけれど、肉親はどうやら誰もいないようだ。腹違いだか種違いだかのお兄さんがどこかにいると聞いたこともあるけど、交流はあまりないらしい。

 

私は、天涯孤独という身の上の人物に生まれて初めて出会った。

 

カツミはそんなことは一切気に掛ける様子もなく、常に明るくほぼ毎日うちの雑貨屋に寄り道して帰る。だんだん私のうちにも遊びに来るようになり、当時の恋人と同棲していた私の部屋で晩御飯食って帰ったり、泊まって帰ったりすることもあった。

 

料理はとても上手だったな。小さい頃から一人で自炊してたんだろう、買い物も効率よく無駄なく買ってくるし、いいお母さんになるタイプだった。

 

カツミは小さい頃はオルガンを習っていたらしく、鍵盤楽器を弾かせるととても覚えが早かった。歌も上手かったので、一度だけ地元のライブハウスに無理やりステージに立たせて歌わせたことがある。

 

私がアコギで、ベースの友達が一人、カツミにピアニカ吹かせて、たしかあと一人カツミの友達に小物打楽器をさせて、クリスマスの夜にジョンレノンの曲か何かを演奏した。カツミはすっごい緊張して泣きそうになってたけど、ステージが終わると楽しかった~って言って本当に泣き出した。

 

カツミもやがて高校を卒業した。もう店や部屋に遊びに来ることはなかったが、たしか久留米あたりに行ってちゃんと仕事もしてると聞いていた。

 

その後はお互いに連絡も取りあうこともなかったが、あの笑顔があればカツミを嫌う人はいない。仕事も出来るタイプだしね。きっとうまくやってることだろう。

 

 

そう思って長い年月が過ぎた。

 

 

久しぶりに聞いたカツミの名前は、それはテレビのニュースからだった。カツミの名前はある事件の被害者の名前として報道されていた。

 

カツミは不倫相手との間に子供ができて出産をし、相手に結婚してくれるように迫ったらしい。しかし、その不倫相手に子供と一緒に殺害され、地元の田んぼのあぜ道の端に10年もの間ずっと埋められていた。

 

どういう思いだったのか今では知る由もないが、やっと天涯孤独ではなくなったカツミは幼い息子と共に、誰にも知られずにその生涯を終えていた。

 

 

 

カツミの実名は、志賀勝美。今、彼女の名前で検索するとこの事件の報道しか出てこない。

 

息子以外の肉親のない勝美は、その消息を心配する者もなく、私のような友人も音信不通にも気がつかずに探そうともしていなかった。

 

とても後悔した。勝美と連絡をずっと取らなかったことをとても後悔した。今でもすごく後悔している。

 

彼女の人生について記したものが、この報道しかないのがさびしすぎて、いつか勝美についてどこかで何かを書こうと思っていた。ただ単に不倫をして殺されただけの女性ではない。志賀勝美という名前の、笑顔がとても素敵な女性が生きていたことを、どこかに残してあげたかった。

 

今日、やっと勝美のことを書いてみた。

 

R.I.P