25:うまくうたえないぼくと | クラフトPとろのブログ

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クラフトPという名前で、ボーカロイド曲を作っていたり

自分の曲の事ばかり書いていたが、
クラフトPは当初は2人組で活動していて、
本来は動画担当だったクロが作った曲も、時々うpしている。

前に紹介した「弱虫の街」という曲もそうだし、
「あのひとのうた―彼―」という曲も、クロが作った曲だ。



クロが曲を作る時、「弱虫の街」はクロが自分でオケを作ったけど、
奴はその後は、オケ作り作業の大変さに懲りたのか、ボーカルだけリンやレンに歌わせて、
「オケよろしく~!」とファイルだけ送り付けて来るようになった。

その頃の私は、MIDIで打ち込んでオケを作るのにもだんだん慣れてきた頃だったので、
結構気軽な気持ちでクロの曲のオケを作っていたのだが、
私はここでまた、大きな困難の壁にぶち当たることになった。


私は基本的に、自分で詞を書き、自分で曲を作り、自分でオケを作る。
どんなアレンジにするのかは、歌詞を書いてる時から自分の頭の中にある。
あとはそのイメージをだんだんと具体的な音にしていく作業が、私にとってのオケ作りである。

だが、他人の作った曲はそのアレンジのイメージが全く分からない。
そこで、作曲者と細かく打ちあわせをして、そのイメージに近づけていくのだが…、

クロさんは、「そこは、じゃーん!って感じで」とか、
「ぐぅおおおおお~!って音にしてよ」とか、
「ぎゅぃいいいいんって入れといてよ」とか、そんな表現しかしないw
いや、それ分からんってw

でもまあ、この曲の時はまだクロも優しかった。
不満はあったんだろうけど、結構私が持ってたイメージを優先させてくれた気がする。今思えばw


問題はその次の、「うまくうたえないぼくと」だった。


この曲はウタさんという絵師さんの同名のイラストを見て、
クロがそのイメージをメロディーと歌詞にして作った曲だ。

ピアプロで見かけて一目ぼれしたらしいのだけど、
その時ブックマークするのを忘れてたら、いつの間にかピアプロからは削除されていたらしい。
それでもずっとまた見たくて、長いこと探しまわって、やっと再会を果たした絵だったそうだ。

きっと、クロなりに思い入れの深い曲だったのだろう。
今回のクロは容赦なしに妥協しなかった。


私はこの曲のボーカルだけをもらって初めて聞いたとき、
きっとこの曲って、中島みゆき風なんだろうなと思った。
ところがクロが「こんな感じでアレンジしてね」と聞かせてくれたのは、superflyだった。

おいw ちょっとまてw いや、全然違うやろ!

一度でも他人の曲をアレンジした事のある方には、この苦労は分かってもらえるだろう。
他人の頭にあるイメージを音にする作業は、本当に、もう、本当に難しい。
涙ながらに訴えたい。もう、本当に難しいんだ。

私はこの頃には、クロの音楽的な好みを完全に把握しているつもりだったが、
本当は何も分かってなかったことを思い知った。

まず、ボーカルだけを受け取っていたので、
そのメロディーに和音、いわゆるコードをつける必要があるんだけど、そこから全然意見が合わない。
自分の曲ならメロディーを作った時点で、もうすでにコードは分かっている。
この曲はコードをつけるだけで数日かかった。

つけるっていうか、「確認」かな。
クロの頭の中でどういうコードが鳴ってるのか、それを一つづつ確認する作業だった。

数日かかって何とかコードも決まり、とりあえず自分なりに作ってみるかと、
一応のオケを作って送ってみると、「全然違う~!!」と返事が来て、
はいはい、わかりましたよと指摘されたところを修正して送り返す。

よし、これでできたやろ!と思って再度ファイルを送ると、
んー、ここが違う、もっとぐぁあああん!って感じでとか、
いろいろとイメージと違うところを指摘してくる。

そういうやり取りを何度も、本当に何度も繰り返した。
そのぎゅいいいいいいんって表現はやめい!と、
最後は結構、喧嘩腰になって言い合いしたような気もするw


そういえば、寺の住職の友人MのCD作った時も、
同じように彼のイメージつかむのに苦労した。
この時の経験がなかったら、Mとも喧嘩してたかもしれないなw

苦労の甲斐あって、
この曲は、作られるきっかけになったイラストの絵師さんのウタさんには、
「もう、宝物です~!」と大変喜んで頂いた。
うん、それだけで報われたよね。よかったね、私w

その後、ウタさんとはボーマス10でお会いすることになったが、
クロとウタさんの間には何か目に見えないアツい友情のようなものを感じて、
私はしばらく席をはずして、二人っきりにさせてあげて、
その間にヒーリングPに会いに行ったっけな。


このときは相当にイライラもしたけど、
クロが妥協しないで言いたいこと言ってくれたのは、振り返れば嬉しくもあった。
相棒が作りたい意欲に燃えてるってのは、すごく幸せなことなんだ。

タカオとのバンドもそうだったな。
あいつとはいつもケンカしていたけど、あのバンドはすごく楽しかった。
音楽とか、そういう創作のことでケンカできるって、すごく幸せなことだった。

後に経験したけど、やる気のないバンドメンバーとはケンカも何もしない。
彼らは私が言ったようにただ弾く、それだけだ。
そこには何の意外性も、驚きも、感動も、化学反応もない。
バンドメンバーをやる気にさせなきゃいけないバンドほど、苦しいバンド活動はない。

もし今、君がボカロ創作で、コラボ仲間の細かい指摘にイライラしてたら、
それは幸せなことだと思っていい。
自分が言わなきゃ何も進まない仲良しコラボより、きっと君の財産になる。