これまでのあらすじ
武力ではなく、激辛への耐性――**「辛力(しんりょく)」**がすべてを支配する世界。主人公・激は、真の激辛道を極めるため、数々の死闘を潜り抜け、熱き仲間たちと共に歩んできた。
しかし、平穏は突如として破られる。天界より**「辛神(からかみ)」**が地上へ降臨したのだ。辛神は、醜い食い散らかし、飽食の果ての大量廃棄、そして激辛の熱による地球温暖化に激怒。地上の激辛フードファイターを根絶やしにするため、主要都市へ四天王を送り込む。
激の仲間たちが各地で四天王の進撃を食い止める中、辛神軍最強の戦士・西園寺は、主の掲げる「激辛禁止令」に反旗を翻し、孤独な叛乱を開始した。舞台は日本の中心、国会議事堂。辛神による「激辛禁止令」が承認されるタイムリミットは、公務員の定時である午後17時。西園寺が満身創痍で時間を稼ぐ中、死を越える修行を終えた激が、ついに決戦の地・東京へと降り立つ……!
主要登場人物
* 激(げき):
本作の主人公。辛仙人のもと、伝説の「古代ハバネロ」を完食する荒行に挑む。その凄まじい辛さに脳がショートし、長らく気絶していたがついに覚醒。修行で得た真の辛力を携え、東京・国会議事堂へと急行する。
* 辛神(からかみ):
圧倒的な神の辛力を持つ絶対強者。人間界浄化のため、この世から激辛を消し去ろうとする。その力は自然界の法則すら歪めるという。
* 西園寺(さいおんじ):
元・辛神軍最強の戦士。辛神が強行しようとする「激辛禁止令」そのものへの反発に加え、軍の最高幹部である自分に一切の相談もなく計画が進められていたことに激怒。反乱を誓い、独り国会議事堂で辛神の野望を食い止めるべく奮闘する。
* 二階堂(にかいどう):
西園寺の部下。高級食材を愛する美食激辛の女戦士。美味さで相手の防御を解き、無防備な相手に辛さで大ダメージを与える。かつてチリ三兄弟に敗北を喫した。
* 場家下(ばかした):
西園寺の部下。知性なき激マズ激辛戦士。二階堂と共にチリ三兄弟に敗れた過去を持つ。「ゲハハハー!」と不味い激辛を貪る、知性の欠片もない下品な狂戦士。
* 紅(くれない):
激の仲間。一応本作のヒロイン(?)。一切辛いものを食べない筋金入りの甘党。冷静沈着な視点から、物語の矛盾やシュールな展開にメタツッコミを入れる。
* 辛仙人(からせんにん):
辛神に立ち向かうべく激たちに修行をつけた伝説の仙人。弟子のチリ三兄弟は西園寺らと対峙した。現在は紅と共に道場で激たちの戦況をテレビ中継で見守る。紅のメタツッコミに対していつもノーコメント。
【秘密の地下通路】
激戦の地、東京へと降り立った激の前に、西園寺の部下である二階堂と場家下が立ち塞がった。
激「……何だお前達は? …ハッ! ニュースで見たぞ。お前達は辛神の一味だろ? 確か俺の仲間達に負けたはずじゃ?」
激は瞬時に身構える。
二階堂「そなたが辛神に逆らおうとする輩のリーダー激だな? ……激殿! どうか我らが主、西園寺様のお力添えを……!」
一刻を争う事態。単身で辛神に挑み、窮地に陥っている西園寺を救うため、彼らは激を呼び寄せる決意をしたのだ。
二階堂「我ら二人が盾となり、激殿を無傷で辛神のもとへお連れすると約束しましょう。以前は敵同士でしたが、今は辛神を止めようとする同志。お互いのために手を組みましょう」
そこへ、激のスマホに辛仙人から着信が入る。
辛仙人「激よ、聞こえるか! 街の様子はどうじゃ!」
二階堂が激のスマホを奪い取るように答える。
二階堂「街は既に数千人の辛神軍に占拠されている。小細工は不要だ。我らが盾となり正面突破する!」
辛仙人『無謀じゃ! 相手はあの辛神の直属の戦闘員達じゃ。お主らが幾ら手練れでも二人でそんなにも大勢の敵を相手にするのは不可能じゃ。……激よ、古代の辛党たちが財宝を隠したという伝説の「地下秘密通路」を通れ』
二階堂「古代の地下通路……。聞いた事がある。古代の王が宝を地下に隠すために作った道があると。しかし、確か侵入者から宝を守るために無数のトラップが仕掛けられているとか……」
【場家下の献身】
地下通路に潜入した三人を、古代の無慈悲なトラップが襲う。
激「危ない、落とし穴だ!」
床が開き、底には鋭利に尖った**『激辛ハバネロ・チップス』**の槍がびっしりと敷き詰められていた。
場家下「ゲハハハハー!! 不味そうな槍がぎっしりだぜぇ! 激マズ激辛こそ俺のガソリンだ! 全部俺の胃袋にぶち込んでやるぜぇ、ゲハハーッ!!」
場家下が穴に飛び込み、もの凄い勢いでチップスをバリバリと咀嚼し始めた。
紅「……え、待って。刺さっても痛くないんだから、穴に降りて罠を無視して進んで壁よじ登れば良くない? 食べなくても……」
場家下「ハァハァ……完食……! 先へ……さぁ、進む……ゲハハーッ!」
場家下は口の周りを真っ赤に染め、満足げに親指を立てた。
さらに進むと、左右から巨大な**『激辛豚 of 丸焼き』**が振り子のようにスイングしながら迫り来る。
激「くっ、振り子の斧か!?」
場家下「ゲハハ! 斧じゃねぇ、不味そうなブタ公じゃねぇか! 激マズ激辛の肉の塊、俺様が残さず食い尽くしてやるよぉ!!」
場家下は空中を舞う豚の丸焼きに食らいつき、その重圧に耐えながら完食。
紅「いやいや、豚の丸焼きなら当たってもそんなに痛くないんだから、普通に通れば良いじゃん! 食べる必要ないって! ていうかそれ、古代からあるなら腐ってるでしょ!?」
紅「……あ、でもそうか。こいつ『激マズ激辛戦士』だったわ。腐敗臭すら不味さのスパイスにするなんて、腐ってるものへの耐性だけは一級品ね……。最悪の才能だわ」
紅のツッコミも虚しく、場家下は辛さと満腹で体力を消耗していく。
トドメは、通路の奥から転がってきた巨大な**『激辛巨大肉団子』**だった。
激「デカすぎる……! 逃げ場がないぞ!」
場家下「ゲハハハハ! 最後のデザートかよぉ! 見てろ激、俺様の不快なまでの『激まず辛力』、目に焼き付けなァ!! あばよ、ゲハハハー!!」
場家下は迫り来る巨大肉団子を正面から受け止め、涙と鼻水を流しながら喉に詰め込んでいく。
場家下「完食……。だが……俺の……俺の『痔』がァァーッ!!」
凄まじい内圧に耐えかねた場家下の肛門が悲鳴を上げ、彼はそのまま崩れ落ちた。
紅「だから! 食べなくても! 破壊してその辺に捨てとけば済んだでしょおがーッ!! 言わんこっちゃない!!」
紅「……っていうか今の、本当に激辛のダメージなの!? あの腐りきった巨大肉団子を一気食いして、普通に食あたりで腹を壊しただけじゃないの!? お尻かお腹か、どっちの痛みで倒れたのか真相が闇の中すぎるわよ!」
紅の叫びが虚しく響く中、場家下は戦闘不能(重度の痔、あるいは食中毒)となり、暗闇に消えていった。
【二階堂の奥義】
残された激と二階堂は、先を急ぐ。
二階堂「激殿、知っておいてください……辛神の真の狙いを」
二階堂が走りながら重い口を開く。
二階堂「奴は飽食を嘆いているのではない。真の目的は、自らを超える戦士が現れる前に、全人類を『辛力』で恐怖支配すること。つまり、激辛戦士の根絶やしです」
激「なんて野郎だ……。神なんて言いながらやってる事はチンピラと一緒じゃないか!」
その時、背後から辛神軍の追っ手の気配が迫る。
二階堂「しまった! 後を付けられてたか! ……ここは私が食い止めます。激殿、手出しは無用です」
激「二階堂、お前一人じゃ無理だ! 俺も戦う!」
二階堂「ダメです、其方を無傷で西園寺様の元へ先導するのが我等の役目! ご安心を。とっておきの奥義で一瞬で肩を付けます。……この身を滅ぼすとっておきの技で!!」
二階堂は優雅に箸を構え、迫り来る軍勢の前に立ちはだかった。
二階堂「さぁ来い! この身と引き換えに貴様らをチリに変えてくれるわ!!」
彼女が懐から取り出したのは、世界中から取り寄せたトリュフ、フォアグラ、キャビア、そしてA5ランクの和牛を極秘の激辛ソースで練り合わせた究極の美食の塊――『激辛美食パティ・ラグジュアリー』。
激「二階堂ーーっ!!!!」
一瞬にして敵軍をなぎ倒したその美しき爆発は、同時に二階堂の銀行口座をも爆発させた。
二階堂「……くっ、一撃で今月の給与……いえ、数年分の貯蓄が……。私の……私の心が、破産していく……」
凄まじい食材コストによる精神的ダメージで、二階堂はその場に膝をつき、真っ白な灰のように放心状態となってしまった。
辛仙人「なんという恐ろしい技じゃ……。これほどの財布と精神へのダメージ、回復するには途方もない療養期間が必要じゃろうて……」
紅「いやいや! 確かに身を滅ぼすほど恐ろしい技だけど! 物理的なダメージゼロなの!? 結局、メンタルかお尻で倒れるのねこの物語!」
激「二階堂、場家下…お前達の犠牲は無駄にはしない!」
二階堂の尊い犠牲により、激はついに最深部へと足を踏み入れる。
【勇者の秘薬】
辛仙人「辛神と西園寺の戦場、つまり国会議事堂へは宝の眠る祭壇の奥の階段から出られるはずじゃ。」
一人、祭壇へと辿り着いた激. そこには禍々しく輝く小瓶があった。
激「こ、これがその宝か? まさか、ただの調味料じゃねぇよな」
辛仙人「激よ……。それは『勇者の秘薬』、別名『狂戦士の劇薬』。舌の反応を無理矢理ブロックし、脳を極限まで覚醒させる禁断 of 禁断の薬じゃ。だが、効果が切れれば地獄の反動がお主を襲うぞ。文字通り、命……いや、尻を懸けた賭けじゃ」
激「……そんなヤバい代物なのか。だが、今の俺に迷ってる暇はねぇ。辛神に勝つために、これが必要になる時が来るかもしれない!」
辛仙人「激よ、焦るな. お主はワシの修行を十分に耐え抜いた。まともに戦っても辛神と渡り合えるはずじゃ。その薬はあくまで万一の奥の手として仕まっておけ。お主の身を滅ぼしかねん、使わないに越したことはないのじゃからな」
激は無言でその薬を懐にしまい、地上への階段を駆け上がった。
地上へ出ると、そこは地獄絵図だった。
国会議事堂の前。傷だらけの西園寺が、圧倒的な「辛気」を放つ辛神の前に跪いている。
激「辛神、俺は激だ!お前の部下の四天王達を倒したのは俺の仲間達だ。そして…次はこの俺がお前を倒す!!」
激の目には真っ赤な炎が宿っていた。
続く




