JFETでVGSを+0.8Vまで振ってみる
本当はC級動作をさせたことがある2SK19 あたりで試してみたかったのだが、IDがどれくらい流れるのか恐ろしくて試せない。
ちょうどAF用のジャンクション型FET 2SK118 - R が数本あるのでこれで試してみることにした。
このFETのRランクはIDssが小さくて0.75mA以下のJFETである。電池駆動の省電力用のFETでめったに使わないストック品だから1個くらい壊れてもいい、くらいのつもりで試してみた。
最初の写真が、
VGSを+0.3までかけたときのグラフである。
VTHが - 0.57V、
IDss が0.42mA と、データシート通りの普通のFETである。
グラフのID目盛りが細かいし、gm が1mS 程度しかないのであまり使う気がしないFETである。
さて、これでVGSをプラス側に振っていったらどうなるのだろう。
GS間のPN接続がONになるほどかけたらFETというよりもバイポーラトランジスターのように振る舞うのかもしれない、という期待(不安?)を抱きながらやってみた。
2枚目の写真がその結果である。
ID軸の目盛りは約10倍に圧縮した。
予想通りである。
VGが0.6V程度までは普通のFETの特性を示しているが、それを超えるとIDが急激に増えてゆく。
0.8Vまでかけたところで7mAを超えたので、それ以上はやめた。
GS間のVFは約0.7V、
教科書通りである。
0.6V以上ではまるでバイポーラトランジスターみたいではないか。
ここでまた悪戯したくなった。
デジタルテスターをだましてバイポーラとして測れないか。
やってみた。
ソースをエミッターに
ゲートをベースに
ドレインをコレクターとして測ってみた。
3枚目の写真である。
見事に騙されてくれた。
hFE=110 と、表示されている。
テスターはこのFETをNPNトランジスターと誤認識しているのだ。
しかし、IDssが数mAある2SK19あたりでやったらどんな結果が出るのだろう。
誘惑に駆られるが、虎の子の2SK19 をお釈迦にしたくないので思いとどまることにした。
2SKタイプMOSFETの静特性
かつて定番であったMOSFET、
2SK241 のデータシートを眺めていた。
内部でカスケード接続されていて帰還容量が小さく、寄生発振に悩まされることが少なくてとても使いやすいのだ。
このFETはゲート電圧0V のときにもドレイン電流が流れ(IDss)、
ある負の電圧(VTH)以下になると流れない。
実測してみるとかなり低く(−2Vくらい)してもわずか流れるのだ。
データシートを見ると(記載があるものでは)ID=10μAのときのゲート電圧をカットオフ電圧(しきい値)VTH としている場合が多い。
私も実測するときにはそれを採用している。
さて、MOSFETではゲートに正電圧をかけることができる、というよりエンハンスメント型の場合は正電圧をかけなければドレイン電流は流れない。
しきい値が負のMOSFETでもゲートに正電圧がかけられるのだ。
2SK241 のデータシートを見ていて気が付いた。
このFETはそのタイプ、一般にデプレッション+エンハンスメント型(D+E 型)と呼ばれるタイプである。
でも、VGSをしきい値から上げてゆくとgm(接線の傾き、増幅率の計算に必要)が増えてゆく、数学で呼ぶところの「下に凸」から、ある正の値から「上に凸」に変わる「変曲点」があるのだ。
最初の図は2SK241のデータシートからのものである。
IDssによって違うのだが、大体VGS=+0.3V〜0.5Vの所に変曲点があるらしい。
そこで2SK241- GR を一つ測り直してみた。
私の測定器ではゲート電圧は
- 2.5V〜+0.5V の範囲に限られるが、斜めにして眺めると、やっぱり+0.3Vあたりでカーブが変わっているのがわかる。
はた、と気が付いて、似た構造のMOSFET、2SK439 - E も一つ測り直してみた。
やはりVGS=+0.3Vあたりに変曲点があるようだ。
今日一日これで遊ぶことができた。
2SK241 の入力特性
中国の教え子たち
2008年三月から2016年七月まで足掛け九年中国の大学で教壇に立ってきた。
外国語学部の日本語科の外教(外籍教師)として多くの学生と接してきた。
外教は通常口語会話の授業だけ担当することが多い。
私は日本語教育能力検定試験に合格していたので文法の授業もすることができる。
そこで会話以外に、作文、古典文法入門、古文選読の授業も任されていた。
口語会話には指定の教科書があるのだが、他の科目はすべて教材を自作しなくてはならない。
プリントを配り、宿題を与え、回収・添削して返す。ちょくちょく小テストを行い、採点して返す。
大変だったけど充実した毎日であった。
卒業生の多くは日本語を必要とする企業に就職した。
特に2010年から2016年の7年間は師範大学であったので、教員になった卒業生も多い。
最近は高校でも外国語として日本語が選択できるところが増えてきたので、日本語教師になった卒業生もたくさんいる。そんな一人からメールが来た。
大学時代に私の配ったプリントは全部ファイルしてとってあるという。
添削済みの宿題も小テストも全部保存してあるという。
自分の授業に行き詰るとそれらに目を通すのだそうだ。
すると新しい発見があるのだそうだ。それらのファイルは今や宝物なのだそうだ。
真面目で勉強熱心な学生だったが
「学生時代、もっとしっかり勉強しておけばよかった。
もう一度先生の宿題がやりたい、今心からそう思う」と言う。
こんなことを言われると教師冥利に尽きる。こんな学生たちを持つて私は幸せ者である。
私にももう一度授業を受けたい先生がいる。残念ながら昨年亡くなってしまった。
3SK型FET静特性測定器
作り直しました。
以前はソースにLEDの下駄を履かせて見かけ上の負電圧を作っていたのですが、ゲート電圧を変えてId が変わると LED のVF が変わってしまうのである。
LED を定電圧源として使うのは限界があることがよくわかった。
VG2を固定してVG1を変えて測ろうとしてもG2のポテンショメーターからも手を離せないのだ。
それでLED を使わないで、ソースはグランド直結とした。
ゲートバイアスは乾電池4個で、
−1.5V〜+4.5V まで得られる。
VG2 はそのまま、VG1 は20KΩをかませて、
ー1.5V〜+1.5Vまでに抑えた。
これでバイアスはId に関係なく安定して、スムーズに測定出来るようになった。
1KΩのポテンショメーターは微調整用である。
これを入れると調整が楽になる。
手持ちの3SK72を測ってみた。
VG2固定の Id―VG1 特性と、
VG1固定のId―VG2 特性のグラフを描いてみた。
後者のVG2<0V の領域はテスターの精度が怪しいので当てにならないが。
この回路でD型、D+E型のFETは大体測れるだろう。