『私のカレーを食べてください』　　　　　　　幸村しゅう著　　　小学館文庫

　336p

おいしくて、泣けて、元気が出る物語

古びた喫茶店の装いながら、本格的なスパイスカレーを出す「麝香猫」。そこで働く山崎成美は調理師学校に通う19歳。

成美は幼い頃に両親が離婚、育ててくれた祖母も失踪してしまい、天涯孤独の身であった。そんな彼女の運命を変えたのは、小学校の先生が作ってくれた一杯のカレーライス。

成美はその味を自分でも作りたい一心で調理を始め、ようやくきっかけを掴みはじめていた。そんな矢先、ある事情から「麝香猫」が店を閉めることになってしまい――。

理想のカレーを追い求める成美のひたむきさと、人々の人情に、涙が止まらない。おいしい×青春×お仕事小説!

【編集担当からのおすすめ情報】
第2回「日本おいしい小説大賞」受賞作、待望の文庫化!

巻末にはスパイス料理研究家・印度カリー子さんによる特製カレーレシピも収録。

読んで楽しい、作っておいしい1冊です!

初めての作家さんです。

まさにカレーのようにスパイスが効いているけれど優しい物語です。

「第2回日本おいしい小説大賞」大賞受賞作で、2024年8月に文庫化されました。

フィクションではあるけれど、こういうきっかけって本当にあるんでしょうね。

暗い未来に光が差すような、些細なことだけれど重要な出来事が。

与えている方は自覚はないけれど、受け取る方にはとても大きな事。

一つのことを極めるって本当に大事なことだけれど、そう簡単には見つけられない。

でもその何かに巡り会って、その道を真摯に歩き始めた人は強くなれるのですね。

とてつもなく厳しく険しい道だから。

境遇は厳しかったけれど、ちゃんと自分の行くべき道を見つけた主人公はすごいです。

挫折してもちゃんと立ち上がって歩き出す直向きさに圧倒されます。

そして彼女を支える周囲のちょっと不器用な関わり方がとても良いです。

この小説を読んで、支えられる側ではなく支える側になったのだと感じました。

主人公に手を差し伸べる人は同じくらいの年齢でした。

いつの間にか影響を与えるような年になっていたのだなとしみじみ。

それがちょっと寂しくもありました。

でも残念ながら人に影響を与えられるようなものがない・・・

とても読みやすい文体なのと余白が多いので、さらっと読めました。

ページを捲るごとにカレーの香りがしてくるような。

この絶品カレーを提供してくれるお店ができたら良いです！