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話す事は知識の領域であり、聞く事は叡智の特権である。

 

 

           オリバー・ウェンデル・ホームズ   医学者

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長く懸案だった、M Mさんの「軒問題」がようやく解決した。

 

以下、私の孫たちの「交渉術」の参考になるよう、事の経緯を簡単に書きつつ、爺さんが学んだことを添えていく。

 

通行の邪魔になる軒の件についてはすでにこちらで書いたが、背の高いトラックの通行のためにM Mさんが所有するこの軒の一部を切り取りたいというのが「軒問題」のゴールだ。

 

 

⬛️ 拒 絶

 

電話で切除をお願いしたのだが、M Mさんからはノーという返事。

 

電話対応の頑固な感じから、かなり偏屈な人という印象を受ける。

 

まずは、直接会って話すことに同意をとるのが精一杯だった。

 

この家に住んでいないM Mさん。

 

来週何日か滞在するので駐車場にクルマがあるタイミングで訪ねるように言われた。

 

 

 

⬛️ 偏 見

 

台風で倒れた電柱を撤去する工事について説明に来た東電女性職員と、たまたまM Mさんの話になった。

 

「頑固な人ですよね」と言いかけた私は、「いい人ですよね」と言われて言葉を飲んだ。

 

「ちょっと、どう、いい人なのか教えてもらえますか?」

 

彼女によると、ブースターをM Mさんの家の目の前に設置する件について何度か話をしたが、設置について快諾をもらっただけではなく、打ち合わせのためにわざわざこちらに来ることについても優しく対応してくれたと言う。

 

「優しい?相手が女性だからか??」と思ったが、、、「でも普通の元気なおばさんだしな、、、」

 

 

⬜︎ 教訓 : 交渉相手に対する偏見を捨てる

 

交渉する相手のことを考える時、どうしても敵のように考えて、戦う姿勢をとってしまいがちだ。

 

君が見ている相手は本当の相手の姿ではないかもしれない。

 

少なくとも、君が思っている相手の顔だけが、その人の顔の全てではない。

 

交渉相手の弱点について考えることも時に戦術的には必要かもしれないが、それよりもはるかに、良い部分を探すほうが交渉のため有効だ。

 

相手の鎧のほころびを狙うよりも、相手の良心を突くほうが効果的な事が多い。

 

交渉に臨む自分の顔をこわばらせないためにも、相手のイメージを、勝手に自分の中で強面で固定化しないほうがいい。

 

 

⬛️ 交 渉 開 始

 

駐車場にM Mさんのクルマがあることを確認してから訪問した。

 

「こんにちは、どうしてもここを通れないトラックがあって、デリバリーに支障があるので、この軒をどうしても一部カットしてほしいんです。

 

どうせ使ってない納屋の軒の先を少し切らせてもらうだけなんですから、切ってもそれほど支障もないですよね?」

 

とは言わなかった。

 

その代わり

 

「りっぱな家ですよね。昔は納屋で養蚕をされていたんでしょうか?

 

私も小さい頃は、祖父の家のこんな感じの納屋で良く従兄弟とかくれんぼをしました。

 

思い出の家を形を変えずに残したいと言うお気持ちは良くわかりますが、どうしても我々住民が困っているので、是非ご相談に乗っていただきたいんです」

 

と言った。

 

「この道はもともとウチの土地だったのを、上に浄水場を作るというので町役場の依頼で寄付したのに、今度は軒が飛び出しているから切れと言われても、ウチとしては納得がいかないんだよね」

 

なるほどそう言うことだったのか。相手の気持ちになれば分からない理屈でもない。

 

「納得されないお気持ちもわかりますが、我々も元の道を復旧するのはコスト的とても無理なので、この道を通らざるを得なくなってしまったんです」

 

「そんな事は分かって買ったんでしょ」

 

「いや、まさか土砂崩れがあれほど大きく起こるとは、、」

 

「ともかく、切るのはダメだね」

 

「そうですか。○ルシステムのドライバーに来てもらって、どれだけ切ったら通れるかを尋ねたら、この青い線で切ってもらいたいと言うんですよ」

 

と携帯の写真を見せる。

 

 

 

「さすがにこれは横木を切る事になるので、きっとM Mさんも納得されないと言ったんですね。

 

でも、この赤い線だけでもカットさせてもらえば私は通行可能だと思うんです。

 

K M工務店のK Mさんにも来てもらって、下にトラックを置いて検証したんです」

 

「K Mさんというのは、あそこの、、」

 

「そうです。これまでも何度かM Mさんのお宅の改修をした事があると言っていました」

 

「確かに、母屋のほうを何度かやってもらったんだよね」

 

おっ!少し納得してくれているのか?

 

K Mさんと話した時も「M Mさんは、まじめな人ですよね」と言って、信頼関係ができているというのは感じていた。

 

もう一押しか?

 

<KMさんのトラックを置いて検証した時の図>

 

「K Mさんも横木を切ると強度に問題があるので、赤いラインで切るというのをオススメしていました」

 

「まあ、KMさんなら信頼できるけど、、」

 

「お願いします! この道を寄付されたのは、どこにも書いてないので誰も気づかないでしょうが、軒を切れば明らかにM Mさんのご協力は誰の目にも明らかになります。

 

住民はみんなここを通るたびに、M Mさんさんのご協力に感謝しながら通ることになります」

 

「・・・・・・」

 

「お願いします。費用は我々住民で負担しますんで」

 

(と、言ったものの、この段階では全住民の合意が取れていた訳ではないので、もし住民の合意が得られなければ私が負担するという覚悟を決めて費用負担を断言した)

 

「しかし、ちゃんと切った後に雨樋もつけてもらわないと困る」

 

「KMさんは雨樋はなしでもいけるのでないかとおっしゃっていましたが、そこはご希望の方向で再度私からお願いします」

 

長く懸案だった「軒問題」に、ようやく出口が見えて来た日だった。

 

 

⬜︎ 教訓 : 相手の気持ちから考える

 

今回交渉するにあたって「我々が改装費を出す必要があるんでしょうか?」という意見も住民側にあったのは事実だ。

 

しかし、相手の視点から考えれば「費用負担までしてどうしてやらなければならないのか?」となる。

 

このままでは平行線なので、私は費用負担前提で交渉をした。

 

どちらが正しいか?ではなく、最終的にこちらの利益になる結論は何なのか?を考えるべきだ。

 

その上で、自分の最終目的地点に視線を固定したまま、相手の目からそれがどう見えるのか?を考えなければいけない。

 

相手の気持ちを考えないで、自分の都合だけを主張しても、決して交渉がうまく行く事はない。

 

相手を言い負かしたり、強要したり、ましてや力ずくで説得しようとするのは下策でしかない。

 

重要なのは、相手を負かす事ではなく、最終目的地点に相手と一緒に到達することだ。

 

今回の交渉で「M Mさんの貢献は誰の目にも明らかになる」という一言がどれだけ決定打になったかは、分からない。

 

しかし、どんな交渉でも、こちらの利益だけではなくたとえ小さくても)相手の利益を訴えることが最も効果的だと私は信じている。

 

 

⬛️ 解 決 ?

 

ようやくM Mさんの了解が取れて、K Mさんの工事が終わった。

 

結果は以下の通り。

 

 

 

本日時点でまだ最終見積りが来ていない。

 

最初に概算は聞いているが、当初予定していなかった縦の長い雨樋が増えている。

 

もし、あまり高額になるようなら、こちらも新たな交渉をしなければならない(笑)

 

<この写真では分かりにくいが、これで背の高いトラックも通行可能なはず>

 

さて次は、住民との交渉(我々の負担とすること)、ドライバーとの交渉(通行可能だと理解してもらうこと)だ。