壮大なクロージングセレモニーで幕を開けた決勝戦。






試合前に大会の優勝トロフィーであるアンリ・ドロネー杯を抱えて入場してきたのは、前回王者イタリア代表のキャプテンだったジョルジョ・キエッリーニでした。

前回大会は準決勝でスペイン、決勝戦でイングランドといういずれも今回のファイナリスト2チームを激闘の末破っての優勝でした。
彼の笑顔を見るたびにあの激闘の2試合を思い出しました。




試合は立ち上がりから拮抗した展開。
両チーム集中力を切らさない熱戦が繰り広げられ、どちらかといえばスペインがボールを保持する時間が長かったですが、決定的な場面は生まれませんでした。

両チームを通じての前半の枠内シュートは、前半終了間際のイングランドのセットプレーからのフィル・フォーデンのシュートのみ。
緊迫した展開で前半を折り返します。

スペインは中盤の心臓であるロドリが、負傷のため後半開始から途中交代を強いられ、一抹の不安がよぎりましたが、後半開始早々そんな不安を吹き飛ばすゴールが生まれます!





後半開始早々の47分、右サイド開いた位置でファビアン・ルイスからのパスを受けたダニ・カルバハルが、ダイレクトでスペースへ流し入れると、上手い動きで前に出たラミン・ヤマルがカットインから逆サイドへ柔らかいグラウンダーのパス!
最後はファーサイドに走り込んだニコ・ウィリアムズが豪快に蹴り込んで先制ゴール!




2日前に17歳になったばかりのヤマルと22歳のニコ!
今大会スペインを支えた若き両ウイングコンビが決勝の舞台でも躍動しました!




このゴールで勢いづいたスペインはこの後圧倒的に攻め立てて、シュートの雨霰を浴びせて、イングランドは防戦一方に。
66分にはダニ・オルモのスルーパスから抜け出したヤマルが左足を振り抜くも、ここはGKジョーダン・ピックフォードに阻まれ、EURO決勝戦史上初の10代でのゴールはなりませんでした。






しかし、押し込まれることの多かった後半立ち上がりの時間帯を1失点で乗り切っていたイングランドがようやく反撃開始!

73分、自陣からのカウンターから、右サイドをドリブルで駆け上がったブカヨ・サカが中央へ送ると、ボックス内で待っていたジュード・ベリンガムが体制を崩しながらもマイナスへ落とすと、後ろから走り込んできたコール・パーマーが左足でグラウンダーミドル!
ボールは一直線にゴール右隅を撃ち抜いてここでイングランドが同点に追い付きます!




直前の70分に途中出場していたパーマー!
ガレス・サウスゲート監督の采配が見事に的中しました!

このまま試合はまたしても拮抗した状態になり、EURO決勝戦としては3大会連続の延長戦に突入するかと思われましたが、86分、一瞬の出来事で再び試合が動きます!




ピッチ中央付近で前を向いたファビアン・ルイスが斜めの方向へ繋ぐと、受けたダニ・オルモが縦へ流し、
反応したミケル・オヤルサバルが外へ展開すると、




それを受けた左サイドを駆け上がったマルク・ククレジャが再びアーリークロスで中に戻すと、再びそのボールに反応したオヤルサバルがスライディングでゴール中央に流し込み、土壇場でスペインが勝ち越しに成功!




準々決勝のドイツ戦のミケル・メリーノに続いて、またしても途中出場の選手が大仕事!
どこからでも、誰でも得点が奪える今大会のスペインの真骨頂がここでも発揮される形となりました! 



しかしその直後にイングランドにもビッグチャンス!






89分、CKからデクラン・ライスのヘッドをGKウナイ・シモンが弾き、そのボールをマーク・ゲイが再び頭で合わせると今度はダニ・オルモがライン上でスーパークリアー!

この試合最大のピンチを凌いだスペインについに歓喜の瞬間が訪れます!






ラ・ロハ!
EURO連覇を達成した2012年大会以来の12年ぶり・3大会ぶりのEURO制覇!

4回目の優勝はドイツを抜いて単独での史上最多!
さらにはグループリーグからの7戦全勝での完全優勝も史上初の快挙!

もはや誰も文句の言いようがない完璧な内容での素晴らしい優勝となりました!




まずはイングランドへ。

正直今大会のこのチームは、これだけのタレントを揃えながら、試合内容は決して誉められたものではなく、何か運だけで勝ち上がってきたような言ってしまえばかつての『ジーコジャパン』みたいなチームでした。

決勝まで来れたのが不思議なくらいでしたし、対するは今大会1番いいサッカーを見せて勝ち上がってきたスペインのことを思えば、
これでこのイングランドに優勝されたら2004年にギリシャが優勝した時くらいにシラケそうな感じがしました。

しかし、この決勝戦は違いました。
前半や、後半同点に追い付いた直後辺りはスペインとほぼ互角に戦っていましたし、これまでのつまらないサッカーが嘘のような素晴らしい戦いを見せてくれました。
今日のイングランドに優勝されたとしても僕も納得していたと思います。

EURO2大会連続の準優勝…。
またしてもあと一歩のところでメジャータイトルを逃す結果になってしまいましたが、このイングランドというチームもまだまだタイトル獲得のチャンスは残されているはずです。

2年後の北中米W杯、そして4年後の地元イギリス大陸開催でのEUROでも、僕にとっては憎たらしいライバルチームとして君臨してほしいと思います。



そして改めて優勝のスペイン!




前回優勝時の2008、2012年大会連覇の当時は、この日も観戦していたアンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャ、シャビ・エルナンデスといった、自分の生涯の宿敵・ライバルであるバルセロナの選手が中心であったため、そこまで気持ちが入りませんでしたが、
今回のチームはそういった偏りはなく、国内ラ・リーガ、または国外のビッグクラブで活躍する選手がバランスよく集まり、特にそういった蟠りもなく、冷静な気持ちで見守ることが出来ました。




そして大会の最優秀若手選手・ヤングプレイヤー賞に選ばれた17歳のラミン・ヤマル。
宿敵バルサの選手であることも忘れてしまうくらい、今大会はドリブルにパスにシュートとあらゆる面で楽しませてくれました。
この年代でこれほどのプレーで魅せてくれる…なんか高校時代の小野伸二を思い出させてくれました。




そして栄光のアンリ・ドロネー杯を真っ先に手に取り、真っ先に誇らしく掲げたのは我らがアトレティコ所属の、キャプテンのアルバロ・モラタ!

改めてこの素晴らしいチームのキャプテンを務めたのが彼であったことは、自分としても誇らしいことでした。

今大会は初戦のクロアチア戦での1ゴールのみとストライカーとしてはいまいち結果を出せませんでしたが、ベンチにいる時でも選手一人一人に積極的に声をかけるなど、キャプテンとしての務めをしっかり果たしていました。

新シーズンはアトレティコから離れるという噂もありますが、この大会のこの瞬間の誇らしい彼の姿が見られたことは僕としても感慨深いものでした。



今大会もいろいろあった大会でしたが、最後は大会を通じて最もいいサッカーをしたチームが優勝という形で幕を閉じて本当によかったです。

まだまだ語りたいことは尽きませんが、ひとまず今回はスペイン優勝の余韻に浸り続けたいと思います。



Felicidades!
Muchas gracias!
La Roja!
Ustedes son los mejores!

おめでとう!
そしてありがとう!
スペイン代表 ラ・ロハ!!
おまえら最高だ!!