東京湾が「封鎖」される日…巨大地震による「油」流出で全国の物流が止まる「深刻な未来」


 






東京湾封鎖


 日本地震工学会の会長を務めた早稲田大学の濱田政則名誉教授は危機感を強める専門家の一人だ。東京湾岸をはじめとするコンビナートは、埋め立て地が揺れた場合、重油や原油タンクから漏れが生じ、燃えたり海に流出したりする危険がある。

 東京湾沿岸の埋め立て地には、大型タンクにみられる「浮き屋根式」が約600基ある。これらに巨大地震の長周期地震動が生じた場合には、「スロッシング」と呼ばれる現象が起きる。コップを揺らすと中の水が揺れるのと同じだ。

 南海トラフで巨大地震が連続発生するという条件でシミュレーションをしたところ、約600基のうち約1割のタンクの中にある油が揺動により流出する可能性があるという。東京湾の埋め立て地は液状化によって耐震化していない防油堤や護岸が破壊されることも考えられる。

 大地震が起きた場合、他府県や海外からの救援物資と人員を海上輸送し、緊急対応や復旧・復興活動の拠点となる国の施設「基幹的広域防災拠点」が神奈川県川崎市の東扇島地区にある。しかし、東京湾に大量の重油や原油が流出すれば、通行不能になって海上交通がストップする事態が予想される。

 復旧まで約2週間と仮定すると、その間の物流は途絶え、エネルギー供給が麻痺する危機的状況を迎える。東京湾岸には9ヵ所のLNG火力発電所が稼働中で、濱田名誉教授は「海域の安全性は防災の盲点だ」と指摘する。





2週間は湾を封鎖せざるを得ない