オレはクロスケ。
オレは例のごとく便所小屋で
気持ちよく用をたしていた。
すると廊下から
「いち」「にい」「さん」「準備」
などと、家中に響き渡る様な声がする。
ご主人様である。
ご主人様は両手を上げ、爪先立ちして
バレリーナを気取って歩く。
オレはその様子を見て思わず笑う。
実は昨日からご主人様はバレエ教室で
発表会の2曲目シチリアーノの
振り付けが始まった。
動画を見ると
当人も上手くないと思ったものか
姉上様に次の様な話をしているのを
聞いた。
何だか先生と違う。
先生を見ると何でもなく
出来そうだけど上手く踊れない。
姉上様は
そう始めから上手くは踊れない。
バレエらしいバレエをしたいなら
先生に相談するしかない。
そしてあざける様に
あんたの伸ばした腕はバレエではなく
まるでりんごをもぎ取ろうする
りんご泥棒だ。
オレの腕はご主人様より美しい。
顔もうまく動く。