「概念フレームワーク」においては,資産の測定値として,①取得原価,②市場価格
割引価値,④入金予定額,⑤被投資企業の純資産額に基づく額を挙げている。
AAA☆☆☆①取得原価 ☆☆☆
【定 義 】
資産取得の際に支払われた現金もしくは現金同等物の金額,または取得のために犠牲にされた財やサービスの公正な金額
【測定値の意味 】
原始取得原価は,実際に投下した資金の額であり,未償却原価は,そのうち,いまだ収益に賦課されていない額である。原始取得原価であれ未償却原価であれ,取得原価によって資産を測定する場合は,現在の投資行動をそのまま継続することが前提とされる。また,未償却原価によって資産が測定される場合は,投下資金の一部が,投資成果を得るための犠牲を表す費用として,計画的・規則的に配分される。取得原価,特に未償却原価による測定値は,継続利用している資産について将来に回収されるべき投資の残高を表す。つまり,この測定は,資産の価値の測定方法としてよりも、資産の利用に伴う費用を測定するうえで重要な意味を持つ。
AAA☆☆☆②市場価格☆☆☆
☆市場価格☆i購買市場と売却市場が区別されない場合
【測定値の意味 】
購買市場と売却市場とが区別されない場合の市場価格は,資産の経済価値を表す代表的な指標の1つであり,資産を処分ないし清算したときに得られる資金の額,あるいは再取得するのに必要な資金の額を表す(ただし取引コストは考慮していない。)。
現在の事業投資活動の継続が前提とされる場合,それに利用されている資産については,この測定値に経験的な意味を見出すのは困難であるが,例えば個別の資産の売却処分が前提とされる場合には,その市場価格の情報が投資家にとって有益なこともある。また,予期せざる環境変化等により,簿価が従来の意味を失うことがあり,臨時の簿価修正手続として市場価格による再測定が意味を持つこともある。
【変動額の意味】
市場価格の変動額には,将来キャッシュフローや割引率に関する市場の平均的な期待の改訂が反映される。その変動額は,事業上の制約がなく清算できる投資で,かつ市場における有利な価格変
動を期待しているものについての成果を表す。
☆市場価格☆ii購買市場と売却市場とが区別される場合
☆☆【a再調達原価 】☆☆
【定 義】
購買市場と売却市場とが区別される場合において,購買市場(当該資産を購入し直す場合に参加する市場)で成立している価格
【測定値の意味】
再調達原価は,保有する資産を測定時点で改めて調達するのに必要な資金の額を表す。
【変動額の意味】
しばしば,その変動額は,資産の調達c時期を遅らせていたならば生じたはずの損益として意味づけられている。しかし,実際には保有したまま再調達していないときに購入価格の変動額を投資成果とみなせる状況は,限られている。
☆☆【b.正味実現可能価額 】☆☆
【定 義】 購買市場と売却市場とが区別される場合において,売却市場(当該資産を売却処分する場合に参加する市場)で成立している価格から見積販売経費(アフター・コストを含む。)を控除したもの
【測定値の意味】
正味実現可能価額は,保有する資産を測定時点で売却処分することによって回収できる資金の額を表す。
【変動額の意味】
しばしば,その変動額は,資産を期末に売却したら生じたはずの損益(の一部)として意味づけられている。しかし,実際には保有したまま売却していないときに売却価格の変動額を投資成果とみなせる状況は,限られている。
AAA☆☆☆【3.割引価値】☆☆☆
i将来キャッシュフローを継続的に見積り直すとともに 割引率も改訂する場合
☆☆【a利用価値(使用価値) 】☆☆
【定 義 】
資産の利用から得られる将来キャッシュフローを測定時点で見積り,その期待キャッシュフローをその時点の割引率で割り引いた測定値(
【測定値の意味】
利用価値は,市場価格と並んで,資産の価値を表す代表的な指標の1つである。利用価値は,報告主体の主観的な期待価値であり,測定時点の市場価格と,それを超える無形ののれん価値とを含んでいる。そのため,利用価値は,個々の資産の価値ではなく,貸借対照表には計上されていない無形資産も含んだ企業全体の価値を推定する必要がある場合に利用される。ただし,取得原価を超える利用価値で資産を測定した場合には,自己創設の
れんが計上されることになる。
【変動額の意味】
仮に将来に関する期待が変わらなければ,利用価値の変動額は,この投資額に対する正常なリターンの額(資本コストに見合う額)に等しくなる。他方,その期待が期中で変化した場合は,正常なリターンに加えて,期待の変化(いわゆるウィンドフォール)が,経営者の主観的な見込みだけで,その変動額に算入される。
☆☆【b市場価格を推定するための割引価値(時価または公正な評価額) 】☆☆
【定 義】
市場で平均的に予想されているキャッシュフローと市場の平均的な割引率を測定時点で見積り,前者を後者で割り引いた測定値 。
【測定値の意味】
市場価格が存在しない資産について,期末時点の価値を測定する必要がある場合には,この測定値が市場価格の代理指標として積極的な意味を持つ。
【ii将来キャッシュフローのみを継続的に見積り直す場合(の割引価値) 】
【定 義】
資産の利用から得られる将来キャッシュフローを測定時点で見積り,その期待キャッシュフローを資産の取得時点における割引率で割り引いた測定値
【測定値の意味】
この測定値は,資産から得られる将来キャッシュフローについて,回収可能性の変化のみを反映させた額を表す。
【変動額の意味】
必ずしも回収リスクのすべてを反映させたものではなく,また割引率に内在する金利のリスクを無視する点でも,それは測定時点の資産価値を表しているとはいえないが,その変動額に含まれる2つの要素を投資の成果としてとらえるために,この測定方法が利用されることもある。1つは,当初用いた割引率に見合う利息収益の要素である。もう1つは,期待キャッシュフローが変化したことに伴う損益の要素である。そこでは回収可能額の改訂分を当初の割引率で割り引いた全額が,見積りの修正時点に生じた損益とみなされる。
AAA☆☆☆【④入金予定額(決済価額または将来収入額)】 ☆☆☆
【定 義】
資産から期待される将来キャッシュフローを単純に(割り引かずに)合計した金額(
【測定値の意味 】
この測定値は,将来に入金が予定される額,回収可能見込額(貸倒引当金が別に設定されている場合は,それを控除した額)を表す。
【変動額の意味 】
その変動額には,借り手の信用状況の変化が反映される。
AAA☆☆☆【⑤被投資企業の純資産額に基づく額 】☆☆☆
【定 義 】
被投資企業の純資産のうち,投資企業の持分に対応する額
【測定値の意味】
この測定値は,被投資企業に対する報告主体の持分額,あるいは投資額を表す。被投資企業の純
資産変動に基づいて利益を測定する際に用いられるが,(他の測定方法では投資の現状をとらえられないケースで利用されることもある。
負債の測定
「概念フレームワーク」においては,負債の測定値として
①支払予定額,②現金受入額, ③割引価値,④市場価格を挙げている。
AAA☆☆☆【1.支払予定額(決済価額または将来支出額】☆☆☆
【定 義】
負債の返済に要する将来キャッシュフローを単純に(割り引かずに)合計した金額
【測定値の意味 】
支払予定額は,将来支払うべき金額を表す。支払予定額が契約などに より固定されている場合,この方法で負債を測定すれば,返済までの間,支払利息以外の損益は計上されない。他方,支払予定額が見積りによる場合,この方法によると,見積りの変更のすべてがその期の損益に計計上される。
AAA☆☆☆【2.現金受入額 】☆☆☆
【定 義】
財・サービスを提供する義務の見返りに受け取った現金または現金同等物の金額(※
【測定値の意味】
現金受入額は,実際に受け入れた資金の額を表す。金融負債を現金受入額で測定する場合,この負債に係る支出額(元利返済額)との差は利息費用や償還損益となる。他方,非金融負債の場合は,財・サービスの引渡し義務の履行に伴って,その履行に見合う額が収益に振り替えられる。その結果,負債は未決済残高・未消滅残高によって測定される。
AAA☆☆☆【3.割引価値】
i将来キャッシュフロー(継続的に見積り直すとともに,割引率も改訂する場合
☆☆【リスクフリー・レートによる割引価値】
【定 義 】
測定時点で見積った将来のキャッシュ・アウトフローを,その時点におけるリスクフリー・レートで割り引いた測定値
【測定値の意味 】
リスクフリー・レートによる割引価値は,借り手である報告主体が自身のデフォルトを考慮せずに見積った,負債の価値を表す。
【変動額の意味 】
その変動額には,期待キャッシュ・アウトフローの増減や時の経過,及びリスクフリー・レートの変化は反映される一方,報告主体の信用リスクの変化は反映されない。
☆☆【リスクを調整した割引率による割引価値 【
【定 義】
測定時点で見積った将来のキャッシュ・アウトフローを,その時点における報告主体の信用リスクを加味した最新の割引率で割り引いた測定値
【測定値の意味 】
この測定値は,負債の市場価格を推定する際に意味を持つことがある。
【変動額の意味 】
その変動額には,期待キャッシュ・アウトフローの増減,時の経過や,リスクフリー・レートの変化に加えて,報告主体の信用リスクの変化も反映される。ただし,報告主体の契約上の支払義務が変わらない状況では,その変動額を投資成果とみなすことはできない。
☆☆【il将来キャッシュフローのみを継続的に見積り直す場合(の割引価値) 【☆☆
【定 義 】
測定時点で見積った将来のキャッシュ・アウトフローを,負債が生じた時点における割引率で割り引いた測定値
【変動額の意味】
この測定値の変動額には,2つの要素が含まれている。1つは,負債発生当初に用いた割引率に見合う利息費用の要素である。もう1つは,期待キャッシュ・アウトフローが変化したことに伴う損益の要素である。要返済額の改訂分を当初の割引率で割り引いた全額が,その変動額に含まれる。
☆☆【iii将来キヤツシユフロ一を見積り直さず,割引率も改訂しない場合(の割引価値)
】☆☆
【定 義 】
負債が生じた時点で見積った将来のキャッシュ・アウトフローを,その時点での割引率によって割り引いた測定値
【変動額の意味 】
この測定値の変動額は,期首の負債額(期中に発生したものについては発生時の負債額)に対する当初の実効金利による利息費用をさす
AAA☆☆☆収益と費用に関する測定((☆☆☆
AAA☆☆【1.交換に着目した収益の測定 】☆☆☆
【収益をとらえる方法 】
財やサービスを第三者に引き渡すことで獲得した対価によって収益をとらえる方法
【収益の測定】
収益計上の判断規準は投資のリスクから解放されたか否かであり,事業投資の場合,原則として,事業のリスクに拘束されない資産を交換によって獲得したか否かで判断される。この場合の収益の額は,獲得した対価の測定値に依存する。すなわち,対価が資産の増加となる場合にはその増加額,負債の減少となる場合にはその減少額によって収益は測定され,収益は当該資産・負債の測定値に基づくことになる。
AAA☆☆【②市場価格の変動に着目した収益の測定 】☆☆☆
【収益をとらえる方法 】
資産や負債に関する市場価格の有利な変動によって収益をとらえる方法
【収益の測定】
随時換金(決済)可能で,換金の機会が事業活動による制約・拘束を受けない資産・負債については,換金による成果を期待して資金の回収(返済)と再投資(再構築)とが繰り返されているとみなすこともできる。その場合には,市場価格の変動によって,投資の成果が生じたと判断される。この場合の収益の額は,1期間中に生じた市場価格の上昇額によって測定される。
AAA☆☆【3.契約の部分的な履行に着目した収益の測定 】☆☆☆
【収益をとらえる方法 】
財やサービスを継続的に提供する契約が存在する場合,契約の部分的な履行に着目して収益をとらえる方法
【収益の測定】
左記のような契約において,相手方による契約の履行(代金の支払)が確実視される場合は,報告主体が部分的に履行しただけで(つまり相手方の履行を待たずに),契約価額の一部を成果として得たとみなすことができる。(※6この場合の収益の額は,1期間中に履行された割合を契約額に乗じて測定される。
AAA☆☆【4.被投資企業の活動成果に着目した収益の測定 】☆☆☆
【収益をとらえる方法 】
投資企業が被投資企業の成果の獲得に応じて投資勘定を増加させ
て収益をとらえる方法
【収益の測定】
被投資企業との間に-体性を見出せる場合は,被投資企業の事業活動は投資企業の事業活動の延長線上にあると位置づけられる。その場合,被投資企業の成果の帰属に着目して,投資企業の成果を計算することができる。この場合の収益の額は,被投資企業の純利益に持分割合を乗じた額として測定される。
AAA☆費用の測定☆☆☆
【1..交換に着目した費用の測定 】
財やサービスを第三者に引き渡すことで犠牲にした対価によって費用をとらえる方法
【2.市場価格の変動に着目した費用の測定 】
資産や負債に関する市場価格の不利な変動によって費用をとらえる方法
【3.契約の部分的な履行に着目した費用の測定 】
財やサービスの継続的な提供を受ける契約が存在する場合,契約の部分的な履行に着目し
て費用をとらえる方法
【4.利用の事実に着目した費用の測定】
資産を実際に利用することによって生じた消費や価値の減耗に基づいて費用をとらえる方 法
【説明】
この方法は,一般には,事業活動に拘束された資産に適用される方法である。この場合の費用は,減少した資産の測定値(財・サービスの取得と同時に消費される場合には,それらの原始取得原価)によって測定される。
AAA☆包括利益と純利益の定義の表現の相違 ☆
報告主体の所有者である株主,子会社の少数株主,及び将来それらになりうるオプションの所有者
との直接的な取引による部分がないことを前提とすると,包括利益と純利益の定義は次のようになる。
【包括利益 】
特定期間における純資産の変動額
【純利益】
特定期間の期末までに生じた純資産の変動額のうち,その期間中にリスクから解放
された投資の成果であって,報告主体の所有者に帰属する部分