☆☆☆ストック・オプション☆☆
自社株式オプションのうちして付与するもの
☆☆☆報酬」とは,企業が従業員等から受けた労働や業務執行等のサービスの対価として,従業員等に給付され
るものをいう
B☆☆☆ストック・オプションは,権利保有者のメリットが株価上昇と直接関係しているため,権利保有者は株価上
昇のために会社業績の向上に努めるという「インセンティブ効果」があるといわれる
B☆☆☆SO会計基準」は,次の取引に対して適用される(「SO会計基準」3)。
①企業がその従業員等に対しストック・オプションを付与する取引
②企業が財貨又はサービスの取得において,対価として自社株式オプションを付与する取引であって,①
以外のもの
③企業が財貨又はサービスの取得において,対価として自社の株式を交付する取引
なお,②又は③に該当する取引であっても,「企業結合会計基準」等,他の会計基準の範囲に含まれる取引
については,「so会計基準」は適用されない
☆☆☆ストック・オプションの公正な評価単価
ストック・オプションの公正な評価単価の算定は,次のように行う。
1.付与日現在で算定し,条件変更日におけるストック・オプションの公正な評価単価が付与日に
おける公正な評価単価を上回る条件変更の場合を除き,その後は見直さない。
2.ストック・オプションは,通常,市場価格を観察することができないため,株式オプションの合理的
な価額の見積りに広く受け入れられている算定技法を利用することとなる。算定技法の利用にあた
っては,付与するストック・オプションの特性や条件等を適切に反映するよう必要に応じて調整を加え
る。ただし,失効の見込みについてはストック・オプション数に反映させるため,公正な評価単価の算
定上は考慮しない
B☆☆☆ここで,ストック・オプションの公正な評価単価は常に変動しているため,その算定の基準日が問題となる。この点については,様々な見解が存在するが,一般に,付与日を算定の基準日とする
見解(付与日説)が支持されている(※'7)。これは,付与日以後のストック・オプションの公正な評価
単価の変動はサービスの価値とは直接的な関係を有しないものとみているためと考えられる。
企業の取引が経済合理性に基づくものであるならば,ストック・オプションを用いた取引におい
ても,他の対価を用いた取引と同様に,等価での交換が前提となっていると考えられる。すなわち,
企業は,ストック。オプションを付与(給付)する対象者に対して,権利確定条件(勤務条件や 業績条件を満たすようなサービス(反対給付)を期待し、契約締結時点であるストック・オプションの付与時点において、企業が期待するサービスと等価であるストック・オプションを付与していると考えられる。そのため,この等価性の判断において前提となっているストック・オプションの価値は,条件付の契約が締結されたといえるストック・オプションの付与日における価値であると考えるのが合理的である。そこで,「SO会計基準」では,付与日におけるストック・オプションの公正な評価単価をもとに算定を行うこととされた。
☆☆☆)ストック。オプションが権利行使された場合
ストック・オプションが権利行使された場合には,次のように処理する。
新株を発行した場合
新株予約権として計上した額のうち,当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替える。
自己株式を処分した場合
自己株式の取得原価と,新株予約権の帳簿価額及び権利行使に伴う払込金額の合計額との差額は,自己株式処分差額として処理する
AAA☆ストック・オプショ ンに係る費用認識の要否 ☆☆☆
1.費用認識の根拠
従業員等に付与されたストック・オプションを対価として,これと引換えに,企業に追加的にサ
ービスが提供される。そして企業は,企業に帰属することとなったサービスを消費したことに費用
認識の根拠がある。企業に帰属し,貸借対照表に計上されている財貨を消費した場合に費用認識が必要である以上,企業に帰属しているサービスを消費した場合にも費用を認識するのが整合的である。企業に帰属したサービスを貸借対照表に計上しないのは,単にサービスの性質上,貯蔵性がなく取得と同時に消費されてしまうからに過ぎず,その消費は財貨の消費と本質的に何ら異なるところはない。
2.新旧株主間の富の移転の観点から費用認識に根拠がないとする指摘
①内容
現行の会計基準の枠組みにおいては,単に新旧株主間で富の移転が生じるだけの取引では費用認識を行っていない。例えば,新株が時価未満で発行された場合には,新株を引き受ける者が当該株式の時価と発行価格との差額分の利益を享受する反面,既存株主にはこれに相当する持分の希薄化が生じ,新旧株主間で富の移転が生じている。このような場合,現行の会計基準の枠組みの中では,企業の株主持分の内部で富の移転が生じたに過ぎないと考え,時価と発行価額との差額については特に会計処理を行わない。もし,サービスの対価として従業員等にこれを付与する取引も会計上これと同様の取引であると評価することができれば,現行の会計基準の枠組みの中では費用認識に根拠はないということになる。
②反論
確かにストック・オプションの付与も新旧株主間における富の移転を生じさせ得るものではあ
るが,新旧株主間において富の移転を生じさせたからといって,それだけで費用認識が否定され
るわけではない。例えば,ストック・オプションに代えて株式そのものを発行した場合でも新旧
株主間における富の移転は生じ得るが,そのことをもって,資産の取得や費用の発生が認識されないということにはならない。ストック・オプションは,権利行使された場合に新株が時価未満
で発行されることにともなってオプションを付与されたがわに生ずる利益(付与時点では、その利益に対する期待価値)をサービスの対価として付与するものであり,この取引の結果,企業に帰属することとなったサービスを消費することにより,費用を生じる取引としての性格を有していると
考えられる。
このように,同じように新旧株主間の富の移転を生ずる取引であっても、従業員等に対してストック・オプションを付与する取引のように、対価として利用されている取引(対価関係にあるサービスの受領・消費を費用として認識する。)と、自社の株式の時価未満での発行のように、発行価額の払込み以外に,対価関係にある給付の受入れを伴わない取引とは異なる種類の取引で
あり,この2つを会計上同様の取引として評価する指摘は必ずしも成り立たないと考えられる
①内容
費用として認識されているものは、いずれかの時点で現金その他の会社財産流出に結びつくのが通常であるが,従業員等にサービス提供の対価としてストック・オプションを付与する取引においては,付与時点ではもちろん,サービスが提供されそれを消費した時点においても,会社
財産の流出はない。
②反論
提供されたサービスの消費も財貨の消費と整合的に取り扱うべきであり,ストック・オプショ
ンによって取得されたサービスの消費であっても,消費の事実に着目すれば,企業にとっての費
用と考えられる。
また,この指摘は,サービスの提供を受けることの対価として会社財産の流出を伴う給付がな
いことに着目したものとも考えられる。確かに,サービスの消費があっても対価の給付がない取
引では,費用は認識されない(仮に認識するとしても,無償でサービスの提供を受けたことによ
る利益と相殺され,損益に対する影響はない。)。しかし,ストック・オプションを付与する取引では,株式を時価未満で購入する条件付きの権利を対価としてサービスの提供を受けるのであり,無償でサービスの提供を受ける取引とは異なる。
このように考えると,対価としての会社財産の流出は費用認識の必要条件ではなく,企業に現
金その他の会社財産の流出がない場合には費用認識は生じないという主張は必ずしも正しくない。例えば,現行の会計基準の枠組みの中でも,償却資産の現物出資を受けた場合や償却資産の贈与を受けた場合には,対価としての会社財産の流出はないが,当該資産の減価償却費は認識される。
付与も新旧株主間の富の移転を生じさせる取
引である
C☆ストック。オプションの権利の行使又は失効までの間の費用認識の相手勘定 ☆
新株予約権は,将来,権利行使され払込資本になる可能性がある一方,失効して払込資本にならない可能性もある。このように,発行者側の新株予約権は,権利行使の有無が確定するまでの間,その性格が確定しないことから,従来は,仮勘定として「負債の部」に計上することとされていた。
しかしながら,新株予約権は,本来は返済義務のある負債ではないことから,「負債の部」に表示
することは適当ではなく,「純資産会計基準」においては,「純資産の部」に表示することとされた。ただし,新株予約権は報告主体の所有者たる株主とは異なる新株予約権者との直接的な取
引」によるものであり,株主に帰属するものではないため,株主資本以外の項目とされる。
AAA☆ストック・オプションが権利不行使により失効した場合の会計処理☆
ストック・オプションの場合,従業員等からサービスが提供された時点で,費用が認識され,新株
予約権が純資産の部に計上されるため,純資産は増加する。しかし,この時点では,純資産が増加した原因が,最終釣に株主との直接的なj取引によるものになるかは不明である。
そして,権利が行使され,新株予約権を付与したことに伴う純資産の増加が最終的に株主との直接的な取引によるものとなった場合には,これを資本取引によるものと捉え,権利行使に対応する部分を株主資本のうち払込資本に振り替える。
他方,権利不行使により失効し,新株予約権を付与したことに伴う純資産の増加が最終的に株主との直接的な取引によらないこととなった場合には,これを損益取引によるものと捉え,失効に対応する部分を「新株予約権戻入益」として特別利益に計上した上で,株主資本に算入する。
AAA☆権利不行使による失効に伴う新株予約権戻入益☆
権利不行使による失効に伴う新株予約権戻入益の計上論拠を「ストック・オプションの権利不行使による失効により,企業が,権利行使に応える義務を免れることになること」に求める見解がある。この見解は,自社の株式を引き渡す義務を「負債」と捉えることを前提に,権利不行使による失効により,企業において,「負債」である自社の株式を引き渡す義務が消滅することを論拠としていると考えられる。しかしながら,「概念フレームワーク」において,「負債」は「過去の取引または事象の結果として,報告主体が支配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務,またはその同等物」と定義されている。そして,引き渡す対象物である自社の株式は,一般に,報告主体が支配している経済的資源ではないと考えられている。そのため,自社の株式を引き渡す義務は,「負債」には該当しないと考えられる。したがって,この見解は,自社の株式を引き渡す義務を「負債」と捉えることを前提としている点に問題があるといわれる。また,権利不行使による失効に伴う新株予約権戻入益の計上論拠を「過去に計上された費用(株式報酬費用)の取消(修正)」に求める見解がある。
しかしながら,一般に,権利不行使による失効に伴う新株予約権戻入益の計上を,「過去に計上された費用(株式報酬費用)の取消(修正)」を論拠として説明すべきではないと考えられている。なぜなら,ストック・オプションが権利不行使により失効した場合でも,ストック・オプションの付与と引換えに企業に提供されたサービスが既に消費されている以上,過去の費用認識自体は否定されないからである。
AAA☆公正な評価単価を変動させる条件変更☆
付与されたストック・オプションに関して,当初の条件を事後的に変更することが考えられる。条
件変更の態様として様々なものが想定されるが,その典型例は,ストック・オプションの付与後に株価の著しい下落が生じ,権利行使される可能性が減少することにより,当初期待していたインセンティブ効果が大幅に失われたため,これを回復する目的で行使価格を引き下げる場合である。
AAA☆行使価格を変更する等の条件変更により,公正な評価単価を変動させた場合☆
(1.条件変更日における公正な評価単価が付与日における公正な評価単価を上回る場合 )
条件変更前から行われてきた,付与日におけるストック・オプションの公正な評価単価に基づく公正な評価額による費用計上を継続して行う。これに加え,条件変更日におけるストック・オプションの公正な評価単価が付与日における公正な評価単価を上回る部分に見合う,ストック・オプションの公正な評価額の増加額につき追加的に費用計上を行う。
(2.条件変更日における公正な評価単価が付与日における公正な評価単価以下となる場合 )
条件変更前から行われてきた,付与日におけるストック・オプションの公正な評価単価に基づく公正な評価額による費用計上を継続して行う。
なお,条件変更日におけるストック・オプションの公正な評価単価が,付与日における公正な評価
単価以下となる場合においては,ストック・オプションの公正な評価額の減少額についての追加的な費用の減額は行わない。これは,ストック・オプションの条件変更は,ストック・オプションを従業員等にとってより価値あるものとするために行っているにも係わらず,かえって費用を減額させるというパラドックスを回避するためである。
AAA親会社の個別財務諸表における会計処理 ☆
もともと,子会社とその従業員等との間には,雇用や業務執行に係る継続的な契約関係があり,両者の間でこれに基づくサービスと報酬の授受が行われている。子会社の従業員等に,親会社株式のオプションが付与された場合に,これに対応して量又は質の面で追加的に提供されると考えられるサービスの直接の受領者もまた子会社である。
しかし,親会社が子会社の従業員等に自社株式オプションを付与するのは,子会社の従業員等に対し,親会社自身の子会社に対する投資の価値を結果的に高めるようなサービス提供を期待しているためと考えられる。したがって,このような取引にも対価性を認めることができる。そこで,親会社が自社株式オプションを付与した結果,これに対応して,親会社が子会社において
享受したサービスの消費を、親会社の個別財務諸表において費用として計上することとされた
2.子会社の個別財務諸表における会計処理
親会社による子会社の従業員等に対する親会社株式オプションの付与が,同時に,子会社の報酬体系に組み入れられている等,子会社においても自社の従業員等に対する報酬として位置づけられている場合は、子会社の個別財務諸表において、その付与と引き換えに子会社が消費したサービスの消費を費用として計上する(「給料手当」等の科目名称を用いる)。ただし,この場合には,子会社は,自らその報酬を負担しているわけではないため,同時に,報酬の負担を免れたことによる利益を特別利益として計上する(「株式報酬受入益」等の科目名称を用いる)。
AAA☆親会社による子会社の従業員等に対する親会社株式オプションの付与が,子会社においては,報酬と位置付けられていない場合には,これと引換えに子会社が従業員等からサービスを受領したという関係にはないためたとえ子会社がそのサービスを消費したとしても,子会社の個別財務諸表上,費用として計上することにはな らず,何らの会計処理を要しない。
C☆子会社がその従業員等に,親会社株式オプションを付与する場合であっても,子会社自身の報酬として付与されている場合も考えられる。この場合には,子会社がその会社財産たる親会社株式オプションで報酬を支払ったものと理解でき,子会社の個別財務諸表において費用を計上することになる。しかし,この場合には,子会社が従業員等に付与する親会社株式オプションは,親会社が消費するサービスの対価ではないため,親会社の個別財務諸表において,子会社従業員等のサービス提供に関する費用を計上する必要はない。子会社は,様々な経緯で親会社株式オプションを取得することがあり得るが,報酬として用いるためこれを取得する場合には,通常,有償で取得することになるものと思われる。
