なぜ韓国政府から「日本は無能」と言われたか | 東京リーシングと土地活用戦記

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なぜ韓国政府から「日本は無能」と言われたか

飯島 勲 「リーダーの掟」

プレジデント 2011年5.30号
国際的に日本の信頼が失われている。官邸の発信力の強化は急務だ。

小泉元総理秘書官 飯島勲

キーワード: 東日本大震災 リーダーの掟 韓国 飯島勲 選挙 Size:
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最悪のタイミングで事業仕分けのツケが

国際的に日本の信頼が失われている。官邸の発信力の強化は急務だ。


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英文訳だけ事態が悪化する総理会見
3月18日と25日の記者会見で、菅直人総理はほとんど同じ話をし、それが英訳されて官邸のホームページに記載された(詳細は図版参照)。

(18日)その上で、現在の状況は、この福島の原子力発電所の事故がまだまだ予断を許さない状況にある。(英訳)Having said that, the present conditions at the Fukushima nuclear power station  are such that we cannot say for certain how things will turn out.

(25日)今日の福島第一原子力発電所の状況は、まだまだ予断を許す状況には至っていない。(英訳)The Fuku shima Daiichi Nuclear Power Station today has still not reached a state that warrants optimism.

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版にスティーブン・ギブンズさんが4月7日付で指摘しているが、この2つの記者会見の英訳文がまるで違うという。あまり英語はよくわからない私だが、知己の翻訳者はこう指摘する。

「~warrants optimism(楽観的観測を許す状況には至っていない)とは、日本語の発想では、予断を許さないと同じに響くかもしれませんが、英語の発想だと楽観的観測を許す状況ではない=悲観的観測をする状況だとなります。1週間前に発表した楽観的にも悲観的にもなりえる~turn outからは、かなり悪化したと思わせます」。

翌26日には海外メディアの各紙が、総理発言を大々的に「原発は楽観できない(Kan: Nuclear Crisis Does not War rant Optimism)」と報道した。外国政府関係者の間で、1週間で総理の発言が後退していることを受けて、日本からの一層の退避を呼びかけたのだ。

民主党政権になって政府広報の質が、経費の面からも落ちていることは間違いない。各省庁の広報予算が事業仕分けの対象となり、海外向け広報のための翻訳予算を削減した結果、翻訳のレベルも下がっているのだ。なにも考えずに予算を削ったツケを最悪のタイミングで払わされてしまったのだ。


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なぜ枝野長官は眠れなかったか
原発に関する情報発信の根本的な問題点に、首相官邸、経済産業省の原子力安全・保安院、東京電力の3つの機関が、ほぼ同じ内容の会見を行っていることがある。この3つの会見にはそれぞれ役割分担がある。

事業者である東電は、事故の事実関係と、どういう処置をしているかを説明する。東電の管理監督を行う役所という位置づけの保安院と原子力安全委員会は、東電に対して「これはダメ」
「これはいい」と評価指導し、政府に対しては法整備や、超法規的処置の必要性の有無を会見で話す。

専門家は、自分の知っている分野については詳細に話すが、それを超えると「わからないものはわからない」と話して会見は終わってしまう。それを補うのが、官邸からの発信であるはずだ。「(原発問題を)自分が一番よく知っている」と菅総理は言うが、総理が細かい話を知っておく必要はない。そもそも閣内には、大畠章宏国土交通大臣がいる。彼は日立で原発の技師だった。その発言すら事実誤認なのだ。

官邸は、現場の処置だけではカバーできない国民の生活を守るための政策を実施し発表する。専門的な事項を記者から尋ねられても「それは東京電力にお尋ねください」と一言あれば理解するだろう。事故発生当時、枝野幸男官房長官が必死で専門的な内容を発表した努力は評価するが、まるで意味のない行為だ。その間、ずっと寝ていても情報発信の面で問題は起きなかった。役割分担ができていないから寝ることができなかったのだ。そもそも質問する政治部の記者であっても、原発の技術まで理解しているようには思えない。やはり官邸での記者会見では官邸は大局的な判断を語るべきだ。

さらに政治広報の対象が国内であっても海外であっても、一番の目的は風評被害も含めて、人々が安心できる生活環境を提供することに尽きる。

海外での不信感をあおる政府の機能不全は、原発事故による汚染水を海に放出したときの不手際にも表れている。経済産業省の保安院は各省庁への十分な事前説明や了解を取り付けることはしなかったと聞いている。この非常時に、省庁間の横の連携が全くなっていない。

例えば、海には漁場という側面もあるのに、農水省への事前説明がないために、漁業関係者の怒りを呼んだ。海は航路でもあるが、国土交通省も全く知らされなかったという。そして、海は広く海外にも繋がっている。外務省は何も知らなかったため、近隣諸国に汚染水の放出を事前に伝えることができなかった。韓国では金滉植首相が「日本は無能」と公言した。今後、海流によっては北東アジア、あるいは北米へと広がっていく可能性もあり、外務省に通告するべきだったと思う。

東日本大震災直後、福島第一原発事故への不信が拡大するとともに、各国の大使館は関西に避難するだけでなく、韓国や香港へと撤退したところもある。本国から空軍機を呼び寄せて自国民を帰国させた国もあった。そんな動きを見て外資系企業の多くも日本から避難することになった。3月末に来日したサルコジ仏大統領は「情勢は危機的であり、極めて不安定で長期化する」と自国民向けの演説を行った。

日本人の震災への冷静な捉え方に比較して、外国人の奇妙な大騒動は、官邸が引き起こしてきた可能性がある。今の官邸のやり方では、諸外国や海外メディアが日本政府を信用できるわけがない。

海江田大臣が開けた穴とは

結局、東電の社員が涙ながらに発表して汚染水を放出したのは東電の独断によるその場しのぎで何の準備もされていなかったということだ。これも、原発事故への対処に政治的なコントロールが全くできていないという証拠のひとつだろう。

本来であれば、官僚機構がその連絡調整の役割を担っていた。以前から私が何度も指摘しているように、連絡・連携がとれないのは、事務次官会議廃止の影響が大きい。政治主導の名のもとに、縦割りの硬直した組織をつくりあげた揚げ句、それに代わって機能させるはずの政治家同士の連携がない。

これだけの災害である。事務次官会議がなくても、各省庁の閣僚がいるではないか。閣議だって閣僚懇談会だってあるのに、何も伝えられなかったとはどういうことなのだろう。海江田万里経済産業大臣にいたっては、こともあろうに官邸の総理応接室を自分の事務所代わりに使用し、節電の最中に「寒いから暖房をつけろ」と厳命、さらにはふかしていたタバコの灰で、官邸の高価な絨毯を焦がして穴を開けたという。情報の風穴を開けるべく、連絡・連携に奔走すべき大臣が、国民の財産に穴を開けている場合ではない。動かないから体も寒いままなのだろう。

想定外の事態に対処できないのは、すなわち危機管理ができないということだ。「想定外」の事態だといって、責任から逃げ惑う官邸だが、危機CRISISとはそもそも「想定外の事態」を指しているのだから。

※すべて雑誌掲載当時

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『小泉元総理秘書官が明かす 人生「裏ワザ」手帖』
 飯島勲著(プレジデント社)
 上司に「カラスは白いか」と聞かれた時、正答は何か?全ビジネスパーソン必読の危機脱出法


飯島 勲
いいじま・いさお●1945年、長野県辰野町生まれ。72年小泉純一郎衆議院議員秘書。永年秘書衆議院議長表彰、永年公務員内閣総理大臣表彰。小泉純一郎内閣首席総理秘書官。現在、松本歯科大学特任教授、駒沢女子大学客員教授。著書に『人生「裏ワザ」手帖』。