愛知知事選は大村氏 名古屋市長選は河村氏が当選(11/02/06)
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田原総一朗の政財界「ここだけの話」
河村・大村コンビの圧勝は中央への反乱だ
2011年2月10日 日経BP
名古屋市長選、愛知県知事選、名古屋市議会の解散の是非を問う住民投票のトリプル投票が2月6日に行われた。河村たかし前市長の率いる勢力が圧勝したが、私はこれを歓迎すべき出来事だと受け止めている。
国政の2大政党がそろって敗北
市長選では地域政党「減税日本」代表の河村たかし氏が民主・社民・国民推薦の石田芳弘氏に3倍以上の得票数で再選された。知事選でも「減税日本」の推薦を受けた大村秀章氏が自民党県連推薦の重徳和彦氏に3倍に近い得票数で初当選した。いずれも圧勝である。
この選挙では、国会の第一党である民主党の推薦する候補が惨敗。また、第二党の自民党は市長選では独自候補を擁立できず、県知事選では自民党県連が推薦した候補が敗れた。国政の2大政党がそろって地域政党に敗北したのである。
国民は何の見通しもない中央政界にうんざりしている
中央政界では通常国会が開かれているが、何を論議しているのかさっぱりわからない。自民党と公明党は、予算審議に入りたくないため、ひたすら解散を迫る。一方、民主党は表、裏の両面で何とか妥協策を探ろうとしているが、なかなか見つからない。菅直人首相は国会で自民党・公明党に対して、激しい言葉のやりとりではなく、ひたすら妥協を請うている。
肝心の予算案はどうか。2年連続して歳入よりも借金が上回る「でたらめ予算」が続いているが、当の民主党はそれに対して問題意識があまりにも希薄である。いったい今後どうするつもりなのか、まったく先が読めない。民主党は何もできずにいるし、自民党・公明党も目標を定めるのでなく足の引っ張り合いに終始している。
国民の暮らしは厳しく、デフレは行き先の見えない形で進んでいる。大学生の就職内定率は68.8%(昨年12月時点)と史上最低を記録した。もはや国民の多くは、政権交代後の混迷、何の見通しもない中央政界にうんざりしている。
だからこそ国民は名古屋、愛知の出来事に拍手喝采したのであろう。河村市長、大村知事の誕生は「中央政界への反乱」である。この反乱は大阪、新潟、福岡の地方選へと続く可能性がある。
河村氏、橋下氏は「独立国」を目指している
中央政界では、明確な言葉にはなっていないが、民主党も自民党・公明党も、まともな予算にするために消費税増税が必要だと認識している。与謝野馨経済財政担当相に「社会保障改革に関する集中検討会議」へ呼び込まれた前自民党衆院議員で元厚生労働相の柳沢伯夫氏は、「消費税率は10%以上に引き上げる必要がある」と述べている。
だがこれに対して、河村たかし氏は「市民税の10%減税」を公約として掲げる。しかも、彼らは「中京都」という構想を持っている。橋下徹大阪府知事もこれに先立ち「大阪都構想」を打ち立てている。こうした考えは、極端な表現をすれば、「国からの独立」である。「地方自治体」ではなく、もっと大きな権限を持つ「独立国」を目指しているのだと思う。
河村氏は3月中旬に予定されている出直し名古屋市議選で「減税日本」から約40人を擁立し、定数75の過半数を確保しようとしている。河村氏と連携する橋下知事は地域政党「大阪維新の会」の代表を務め、同じように4月の大阪府議選や大阪市議選での過半数獲得を目指す。
もしかしたら今後、「河村党」「橋下党」が民主、自民、公明を抑え、第1党になる可能性もある。そうなると、まさに中央政界に対する反乱だ。選挙の結果、民主、自民、公明の候補者が泡沫扱いされ、名古屋や大阪は「独立宣言」することになるのである。
東京発の情報は歪んでいて役に立たない
その背景として、あまりにも中央政界がだらしないこと、そして中央集権の限界がはっきり見えてきたことが挙げられる。
日本は明治以降、ずっと中央集権の政治を行ってきた。高度成長期までは、中央集権はうまく機能していたのである。中央集権とは、国が地方の面倒をみることだ。国税の一定割合を地方に分配するとき、経済が発展しているところには少なく、発展していないところには多く分ける。そのバランスを非常にうまく考えてやってきた。
ところが高度成長が終わり、国が地方にばらまく金の財源が不足すると、それは借金になり、赤字財政の大きな原因になった。国が地方の面倒を見る時代ではなくなったのである。「ならば、自分たちでやろうではないか」。これが今回の名古屋・愛知の選択だったと言っていい。
最近、私にとって大変面白い現象が起きている。名古屋テレビや北海道テレビといった地方局が「朝まで生テレビ」の地方版を企画し、私を呼んで番組を作っているのである。熊本テレビでも同様の企画が予定されている。
その朝生地方版でこんな発言があった。「メディアは全国紙、全国波とすべてが東京に集中している。しかし、その情報は地方にとっては歪んでいて役に立たない」というのだ。朝生地方版では、たとえば北海道テレビの場合、北海道の人たちが集まって、地元について議論し、今後どうするか考える。東京からの情報、つまり中央には頼らない。そういう地方独自の番組が増えているのである。
地方分権が進まないのはなぜか
中央政府は10年も前から地方分権(最近では地域主権)と言っているが、一向に進まない。なぜなら、中央集権にとって地方分権はありがたくないからだ。少なからぬ国会議員が国のお金をどう自分の地元に運ぶかに執心している。道路を造る、橋を造る、ダムを造るということが議員たちの利権につながる。
知り合いのゼネコンに公共事業の入札をさせて仕事を与え、その見返りに議員は何%かのお金を受け取る。こうしたことが過去、半ば常識のように行われていた。今騒ぎになっている大相撲の八百長みたいなものだ。
大相撲の八百長についてひとこと言えば、メディアや文化人、政治家が口をそろえて「根源的問題であり、抜本的に正すべきだ」と発言する。親方たちもそう言う。私は、それを聞いて、口はばったいことだと感じている。大相撲はスポーツというより、伝統芸能の色彩が濃い。その相撲界で八百長は、言葉はよくないが、一種の伝統芸みたいなものではないか。本当に「スポーツ」というのなら、親方が全員力士出身というのはおかしくはないか。
名古屋現象は「地方の時代」の幕開け
話を戻すと、地方分権になれば、地方にお金を運ぶ国会議員の仕事がなくなってしまうから、地方分権は困るのである。だから、国政の場で論じられる地方分権はあやしいものだし、現にまったく地方分権が進んでいない。
河村たかし氏のやり方を「独裁的だ」と言う国会議員やメディアがあるが、それは中央から日本を変えていこうとする旧来の中央集権的な発想である。これに対し、地方から日本を変えるという発想が今回の「名古屋現象」である。
「民主党に大きな期待を持って政権交代を選択したのに、無惨にも日本は何も変わらなかった」と多くの国民は感じている。ならば、「今度は地方からこの国を変えてくれ」と願っているのではないか。
名古屋現象に見られる「地方の時代」の幕開けを私は心から歓迎したい。
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田原総一朗(たはら・そういちろう)
1934年滋賀県生まれ。早大文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経て、フリーランスのジャーナリストとして独立。1987年から「朝まで生テレビ!」、1989年からスタートした「サンデープロジェクト」のキャスターを務める。新しいスタイルのテレビ・ジャーナリズムを作りあげたとして、1998年、ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞。また、オピニオン誌「オフレコ!」を責任編集。2002年4月に母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講。塾頭として未来のリーダーを育てるべく、学生たちの指導にあたっている。最新刊に『田原の眼力 嘘ではない真実の取材ノート』(扶桑社新書)、『オフレコ!スペシャル 2020年、10年後の日本』(アスコム)、『田原式 つい本音を言わせてしまう技術』(幻冬舎)がある。
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東京都知事候補も、決まっていない・・
ほんと、日本は、どーなってしまうのか・・
