東国原知事への出馬要請は
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田原総一朗の政財界「ここだけの話」

東国原知事への出馬要請は
何への布石なのか?

2009年6月25日 日経BPNet

 6月23日、自民党の古賀誠選挙対策委員長が宮崎県知事である東国原氏に会い、衆院選に自民党から出てほしいと頼んだ。しかし、これに対して東国原知事は「自民党総裁候補になれるのなら、出てもいい」と回答。
 自民党はまた、大阪府知事の橋下徹氏にも衆院選への協力を頼もうとしている。
 私はこの記事を見て、なんとバカなことを自民党はやっているのだろうと思った。
 東国原知事や橋下知事が、自民党から衆議院選挙に出るわけがない。
 なぜなら東国原さんは宮崎県知事だからこそ国民に受けており、一衆議院議員になったって面白くも何ともない。
 橋下さんも、大阪府知事として府議会にけんかを売っている。また、大阪府職員の人件費を減らすなど、これまでの府知事がやったことのない、いわば「自爆さえ覚悟しているほどの挑戦」と思えるほどの闘いをやっているわけだ。
 こんな東国原さんや橋下さんが自民党の衆議院議員候補として出るわけがない。
 かも、自民党は今度の衆院選で負ける可能性さえあるのだから。
 しかし、だからこそ古賀さんは今、必死に訴えて回っているのだと思う。ある意味で悪あがきとも言えるが……。

 私は古賀さんをよく知っている。そこで私なりに取材をしてみた。
 古賀さんは、実は、東国原さんや橋下さんが民主党から出馬するのを恐れており、これを抑えたいのだろう。
 現に民主党の鳩山由紀夫代表は、橋下さんに「(地方分権の)考え方は民主党により近い」と言っている。
 つまり古賀さんは、民主党から誘われて向こうサイドになるのを防ぐ、いわば“けん制”のためのアプローチをしているわけだ。古賀さん自身、初めから東国原さんや橋下さんが自民党から衆議院選挙に出るなんて思っていない。
 では、古賀さんがこういう運動をする本当の狙いは何か。

 それは、選挙対策委員長の古賀さんと副委員長である菅義偉さんの「麻生降ろし」を抑えるための対策だ。古賀さん、そして特に菅さんは麻生内閣誕生に非常に貢献した人物だ。ふたりは麻生さんで総選挙をさせてあげたいと思っている。

 しかし下手をすれば、いや下手をしなくとも、7月12日の東京都議会議員選挙で自民党が負ければ麻生降ろしが起きる。

 麻生さんは6月26日に記者会見を行う予定だ。

 その前日、25日にも日本記者クラブで会見があるが、マスメディアのベテラン記者たちが26日の記者会見に非常に注目している。彼らが注目しているのは、この会見で麻生さんが内閣改造を打ち出すのではないかと見ているからだ。

 私が思うところでは記者会見は、この時点で内閣改造を打ち出せば、7月12日の都議選にもし負けても麻生降ろしを封じ込められるという思惑なのだろう。
 内閣改造を打ち出せば6月下旬に新内閣が生まれる。それから2週間の都議選で負けたとしても、麻生降ろしは起こしにくいのではないか……という麻生さんの計算があると、私は見ている。

 改造では、また、内閣と同時に自民党三役も替えてくるだろう。
 そして古賀さんや菅さんは、これを応援していると思う。

 その一環として、古賀さんは東国原さんや橋下さんを説得しようとした。麻生さんで総選挙をさせてあげたいという思いで、東国原さんや橋下さんが民主党に行かないように手を打って回っている。
 特に、昨日22日、ここに来て佐藤勉総務大臣が西川善文氏の日本郵政社長続投を認可し、これを麻生さんも了承した。
 ところが、これが非常に評判が悪い。私の見た限りでは、読売新聞、毎日新聞、産經新聞、特に読売の論調が激しいのだが、西川さんの続投を大批判し、国民が納得できるわけがないじゃないかとまで言っている。
 私は、鳩山邦夫氏だけを切って西川さん続投を認めたら、これから世論の反発がドーンと出てくると思う。
 世論の反発が出るということは、世論調査をすれば内閣支持率が下がるということだ。
 となれば余計に「麻生ではだめだ」という声が強まるだろう。そして麻生降ろしが始まる。
 そして今、「西川続投」によって、その可能性はさらに強まってきた。
 こうした動きを抑えるために麻生さんに今、できることはもう内閣改造しかない。
 古賀さんや菅さんも、あらゆる手を使って麻生降ろしを封じようと手を尽くしている。
 自民党内部では、今、麻生降ろしを抑えるための闘いが起こっていると言っていい。
 そして麻生降ろしのあとは……。
 舛添要一さんは今度の選挙でおそらく衆議院に鞍替えするだろう。

 そして鳩山邦夫さんも手を挙げるだろう。
 この鳩山さんが手を挙げる、その理由が非常にふるっている。「自分は麻生氏の盟友であり、『太郎会』の会長である。もし麻生氏が降ろされるなら、代わりに自分が立つことで麻生氏を継ぐのだ」というものだ。「自分が継ぐことは“麻生批判”にはならない。自分が継ぐことをむしろ、降ろされた麻生さんは願うだろう」というふうに、鳩山さんは解釈している。
 さらに舛添さん、鳩山さんに続いて、石原伸晃さんも手を挙げるだろう。
 こういうことになるのを懸命に抑えたいと麻生さんは思っている。古賀さん、菅さんも、そう願っている。
 そして、この闘いが、たとえば知事への立候補要請など、いろいろな形で現れているのだと思う。
 24日、細田博之幹事長がこういう発言をした。「臓器移植法はあと10日ほど審議するだろう。ということは、都議選前の解散はない」。
 つまり、細田さんもやはり「麻生降ろしはやるな」と、何とか遮ろうとしている。6月中に内閣改造をやり、それによって東京都議選も乗り切っていこうというわけだ。
 また、内閣改造があれば、解散・総選挙はさらに延びるだろう。
 その場合は10月選挙となる可能性さえある。9月の任期満了前ぎりぎりに解散をすればいいわけだ。
 4-6月期のGDPの数字が発表されるのは8月中旬だ。麻生さんはこれを当然、待つ。
 4-6月期の結果は悪くはない、2ケタ近いプラスになると予想するが、そうなれば補正予算は成功したということになる。補正予算は今、非常に評判が悪いだけに、4-6月期のGDP発表を待つと考えられる。

今週末目玉が用意される?
 内閣改造・役員人事では、当然“目玉”が用意される。
 改造の“目玉”は、何といっても幹事長と官房長官だ。

 官房長官には、菅さんあたりが来るかもしれない。
 幹事長には、自民党の人気が上がる人物。たとえば「舛添幹事長」とか。これは舛添氏が総裁になるのを抑えるための手ということにもなるだろう。
 このように、今一番注目すべきは「内閣改造・自民党役員人事」だ。
 麻生さんにはもう、内閣改造しか手がない。そして、内閣改造があるならば、どんな人物を、国民をあっと言わせるどんな人物を連れてくるのか。
 “目玉”がなければ内閣改造の意味はない。
 私は、彼は絶対に受けないだろうが、「橋下大臣」なんてこともあり得るだろうと思っている。「東国原大臣」だってあるかもしれない。彼らは衆議院議員としてではなく、むしろ大臣として、内閣改造の“目玉”になり得る。
 自民党内には今、「麻生降ろしをやろう」という派と「何とか麻生で総選挙をやろう」という派があり、この両者の闘いが、これからし烈になってくるだろう。
 「西川続投」に反対しているのも、要するに麻生降ろしだ。
 山本拓衆議院議員が中心になって活動している総裁選前倒しの呼びかけに賛同する国会議員が既に3ケタ、108人を超えたと言われている。108人は過半数だ。これでいける。
 つまり、「本気」なわけだ。
 麻生降ろしをやろうとしている「派」と、麻生で選挙をやろうという「派」との、まさにし烈な闘いだ。
 そしてここで、やはり内閣改造の可能性は高まると言える。改造によって麻生氏はもう一度人気を立て直せるか……。

 東国原知事へのアプローチは、自民党内部のこんな実情をあぶり出している。

田原総一朗(たはら・そういちろう)

1934年滋賀県生まれ。早大文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経て、フリーランスのジャーナリストとして独立。1987年から「朝まで生テレビ!」、1989年からスタートした「サンデープロジェクト」のキャスターを務める。新しいスタイルのテレビ・ジャーナリズムを作りあげたとして、1998年、ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞他。



 普通、キレが、なくなったね・・・