財部誠一の「ビジネス立体思考」
漂流する巨額景気対策
2009年4月13日 Nikkei BP NET
3月に中国、北欧と取材をして帰国したら、麻生政権が目を疑うばかりの巨額景気対策をぶちあげていた。真水で15兆円。99年に「世界の借金王」と開き直った小渕政権が実施した過去最高規模の景気対策が7・6兆円だったことを思えば、15兆円の景気対策が尋常ならざるものであることが容易にわかる。
首相の景気対策は選挙向けのもの
麻生首相は本気である。ただし頭の中にあるのは、選挙と政局だけだ。はっきりいえば、国民をこれほど馬鹿にした景気対策もない。
先進国中最悪の財政状況で、すでにわれわれが自分の子供や孫の世代に800兆円という巨額の付け回しをしているなかで、15兆円もの財政出動をするのだから、その場かぎりの人気取り政策などであっていいはずがない。
中国でも北欧でもそうだったが、どこの国も、今回の世界経済危機への対応は焦眉の急だ。だが未曾有の危機に対する向き合い方には共通項がある。中国でもノルウェーでも「これを機に国の構造変化を促す」という言葉を何度も聞かされた。危機の震源地である米国ですら「グリーン・ニューディール」に象徴されるように、新たな国家ビジョンを示しながら、目の前の不況と闘っている。
財政出動というものは、不況で激減した民間需要を補完するために、国が力づくで需要創出をして、景気回復への道筋をつけるというものだ。
そこで国家としての見識が問われる。景気回復に向けて最高のコストパフォーマンスを実現する努力が求められるのは当然で、そんなレベルで足踏みしている国など、日本以外にあるのだろうか。
バラマキのアイデアは役人任せ
中国は56兆円という巨額の財政出動を通じて沿岸部と内陸部との格差是正や産業のハイテク化推進など「経済構造の変化」を実現するとしている。ノルウェーのある大臣は経済危機は「ノルウェーの経済構造改革を進めるチャンスだ」とまで話していた。
ひるがえって日本の景気対策をみると、そこにはビジョンもなければ、思想も哲学も何もない。
「役所になんかアイデアを出せといって積み上げただけだから、あんなバラマキになった。危機だ、危機だといいながら、やっていることは全部役人任せです」とベテラン政治部記者はそう吐き捨てた。
要するに初めに「15兆円ありき」だったということだろう。何に使うか。その穴を埋めるのが大変だったに違いない。官僚と族議員にとってはまさにわが世の春的景気対策だ。
莫大な借金を抱えたまま、人口減少社会に突入した日本がこの先、どうやって成長軌道を描いていくのか?
現役世代が抱えている年金、医療、介護への不安解消のために、今回の景気対策を絶好のチャンスとするくらいの見識がなぜ持てないのか。
農地の改良事業1兆円という愚策
農水省の予算は昨年度2兆6000億円。そこに今回、景気対策として1兆円を投入するという。何に使うのだろうか? 1兆円の使い道のひとつは「土地改良事業」だ。新聞報道によれば「全国に広がる耕作放棄地を整備するために土地改良」をするという。
いまや埼玉県の面積に匹敵するほど大量の耕作放棄地が出現したのは、生産者の高齢化と後継者不足が原因だ。やる気のある農家が自由に耕作地を増やせるための実質的な支援や、新規参入障壁の撤廃、農業専業で生活が成り立つような流通改革、農地が自由に売買、賃貸借できるような法的担保といった作業なしに、いま「土地改良」をするなど言語道断だ。
生産者がいないから耕作放棄されたのだ。新たな担い手探しが先だろう。その努力を放棄したままの土地改良は1万円札を鋤き込んで土作りをやるに等しい。
さらに驚かされたのは羽田空港の拡張工事への追加予算だ。21世紀の日本にとってもっとも重要な国となりつつある中国へのアクセス手段として羽田—上海便はいま重要な路線になっている。都心に近い羽田空港を世界への窓口として開くことは、日本経済全体の利益に大きく寄与する重大案件だというのに、羽田空港の拡張工事のためにつけられた予算はなんと、たったの50億円。
国家ビジョンも哲学も何もなく、ただただ人気取りに走った15兆円であることを象徴する。あきれ果てる。
財部誠一(たからべ・せいいち)

1980年、慶應義塾大学を卒業し野村證券入社。出版社勤務を経て、1986年からフリーランスジャーナリスト。1995年、経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」設立。金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして活躍。テレビ朝日系の『サンデープロジェクト』、BS日テレ『財部ビジネス研究所』などに出演。
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外人売りも政府対策が下支え、各国景気対策効果で先高観も
2009年 4月16日(木)
15日のNY市場は上昇。ダウ平均は109.44ドル高の8029.62、ナスダックは1.08ポイント高の1626.80で取引を終了した。半導体大手のインテルが慎重な業績見通しを示したことで、朝方は小幅下落して始まった。しかし、ベージュブック(地区連銀経済報告)で景気減速のペースが緩やかになったとの見方が示されたことや、4月住宅市場指数が予想以上の上昇となったことで、引けにかけて上昇する展開となった。セクター別では、不動産や銀行が上昇する一方で半導体・半導体製造装置や自動車・自動車部品が軟調。シカゴ225先物清算値はドル建てが大証比185円高の8925円、円建ては同110円高の8850円。ADRの日本株は富士フイルム、コマツ、日電産、パナソニック、ソニー、京セラ、トヨタ、ホンダ、キヤノンなど対東証比較(1ドル99.34円換算)で全般堅調。
コア銘柄を中心に先行していた銘柄への利益確定の流れから、直近こう着感の強い相場展開が続いているが、日経平均は3月末の調整からの上げ幅の3分の1押しを達成しているほか、NY市場の上昇も手伝って買い優勢のスタートとなろう。また、追加経済対策に盛り込まれた「最大50兆円の株式などを市場から買い取る制度」の概要が伝えられている。これによると、買い取り期間を2012年3月末までの臨時措置とし、日経平均など指数連動型のETFに絞るようであり、予算関連法案として今国会に提出する方向となった。海外勢などによる利食いに押されていたコア銘柄への下支え要因ともなり、買戻しの動きが再び強まるようならば、相場全体の押し上げ要因となりそうである。
また、ベージュブックでは景気減速のペースが緩やかになったとの見方が示されているが、景気対策による効果が表れてきていると考えられる。本日11時には中国の1-3月GDP(国内総生産)、3月の鉱工業生産、3月のCPI(消費者物価指数)の発表が予定されており、期待の強い中国の景気回復傾向が顕著に表れてくるようだと、依然として出遅れ感のある海運、商社、鉄鋼、機械などの関連銘柄のほか、インフラ・農業といったテーマ銘柄への物色が広がりをみせてくる可能性もありそうだ。決算シーズンに入り、昨日の安川電の急落といった動きが今後も警戒されるため、積極的な商いは手掛けづらいところではあるが、売り方にとってもポジションをニュートラルに近づけたい状況であり、コア銘柄、材料株問わず需給妙味の大きい銘柄へのカバーへの思惑が強まり易い。(村瀬智一)
【株式会社フィスコ】
景気対策による効果が表れてきている!!??
