「100年に1度の危機」をチャンスに変えるシナリオ
危機の本質は投機行動の破綻と捉えると、日本へ有利に世界が展開する
プレジデント 2009年1.12号
外的ショックには日本経済はこれまで一貫してかなり強かったのである。
東京理科大学専門職大学院総合科学技術経営研究科教授 伊丹敬之=文
過去、日本経済は経済危機のたびに大きな痛手を受けつつも、ゆるやかな成長を続けてきた。この歴史的傾向から、筆者は日本のチャンスを説く――。
■日本の経済危機は過去50年間に7回
2008年は波乱の年であった。金融危機に明け暮れた年であった。私も、金融危機やアメリカ経済の危機絡みの原稿ばかり書いていたような気がする。まず1月に「証券化は現場のリスク感覚を甘くする」と書き、2月には「サブプライム問題を発端に、世界的に巨大な信用収縮が起きる危険あり」と書いた。7月にはGMの倒産の危機を書いた。事態はその通りになり、3月にはベアスターンズ、4月にはアメリカの大手銀行と次々と危機が露呈し、とうとう9月にはリーマンが倒産し、GMが公的資金による救済を願い出た。
これだけ世界同時に景気が悪くなると、誰が言い出したのか知らないが「100年に一度の金融危機、経済危機」という言葉がニュースに躍るようになった。しかし、本当にそうだろうか。この経済危機は、たしかに大変な状況であることには間違いないが、100年に1度というほどの大きなものだろうか。
100年とは言わず、過去50年間に日本を襲った主な経済危機をあげれば、次の表のようになるだろう。危機は7回もあったのである。そして、そのたびに日本経済はかなりの痛手を被っている。
オイルショック(1973、1978)は、原油価格がショック前の3倍から4倍に短期間に跳ね上がるという資源価格ショックであった。とくに第一次オイルショック1973の際にはアラブ諸国を中心とする石油輸出の大幅カットも同時にあったので、原油を輸入に頼る日本経済は大混乱した。日本沈没と騒がれたときである。
円高ショックは、円が1985年9月から半年の間に40%以上も切り上がる異常な事態となった。それはじつは円高ではなく、ドル安だった。ドルは世界の通貨に対して大幅独歩安になったのである。輸出で伸びてきた日本の産業にとって輸出の大幅減少が恐れられたのである。
91年のバブル崩壊以降は、読者の多くにももう馴染みがあるだろう。株価は90年年頭から暴落を始め、地価も91年には下がり始める。日本の経常収支が80年代初めから大幅黒字となり、過剰な流動性が日本を襲ったのである。それがカネを暴力装置のようにしていって、日本全体がいわば投機ムードに浮かれたのである。
バブル崩壊の1991年はまた、ソ連邦の崩壊の年でもあった。戦後の冷戦構造が崩れ、アメリカの資本主義が勝利したという潮流になっていった。それは日本の安全保障の不安定さをも浮き彫りにし、日本自身が起こしたバブルの崩壊と重なり、日本経済の元気は一気になくなっていった。そこに、1997年のアジア通貨危機が起きて、日本の金融システムの不安定性が一気に露呈した。日本長期信用銀行など、名だたる金融機関が次々と消滅していった。まさに、大きな金融危機だった。
■外国発のショックに日本はなぜ強いのか
21世紀に入ると、20世紀の最後の10年に「唯一の覇権国」「アメリカ型経済」を謳歌したアメリカに変調が表れた。2001年の同時多発テロはアメリカ型グローバリゼーションに対するイスラム世界からの巨大な警告であったろうし、同じ年のITバブルの崩壊はアメリカ資本市場への警告であったのだろう。その2つの危機をアメリカは金融のかじ取りで乗り切ったが、それはすでに存在している構造的ゆがみ(アメリカの経常収支大幅赤字、財政収支の赤字、そして経済全体の負債経済化)への対症療法とはなったが、かえってゆがみを大きくしたようである。
そのゆがみがはじけた巨大な地殻変動が、証券化商品市場の一斉崩落という巨大な金融危機であり、08年9月のリーマンショックを引き起こした。
こうしたいくつもの危機の中で、私の感覚では第一次オイルショックと円高ショックは、リーマンショックと同等かそれ以上のインパクトを日本経済にはもっていたように思う。原油価格が4倍、円が倍に切り上がる、それが実物経済を直撃したのである。アジア通貨危機はバブル崩壊の後始末を日本に迫ったという意味で、やはり大きな危機だった。
こうした危機の後、日本経済は驚くほどの強靭さを示したといってよい。たしかに危機の直後には経済成長率が1年だけマイナスになることが4度あった。しかし、それでも最も大きな落ち込みはアジア通貨危機の後のマイナス1.5%。バブルの崩壊の後の07年度までの平均成長率は1.3%で「失われた15年」といわれながらもゆるやかな経済成長を続けてきた。このバブル崩壊がそのときのGDPの2倍にも達する資産価値の喪失(キャピタルロス)という巨大さだったことを考えると、驚くべき強靭さである。
バブルの崩壊は日本自身が自分だけでつくりだしたような危機である。しかし、他の危機はすべて日本の外に根本原因がある。あるいはせんじ詰めれば「アメリカ発」の危機ばかり、といえなくもない。そうした外的ショックには日本経済はこれまで一貫してかなり強かったのである。
日本発の危機では、いわば「しゅんとなって」一向に元気が出ない日本経済は、外国発のショックに対してけなげに戦う。オイルショックという日本沈没の危機ですら、チャンスに変えていった。その歴史的傾向が今回のリーマンショックでも見られるなら、今回の危機が日本にとっては「100年に1度」というようなひどさにはならないだろう。
そのうえ、今回の危機の本質がどこにあると考えるかによって、この危機が日本に与える中長期的影響の大きさの目分量は違ってくる。
2008今回の危機の本質を住宅バブルがアメリカやヨーロッパで破裂した、と捉えてしまうと、それがもたらすアメリカおよび世界の金融システムの揺れの大きさとその後の余震は日本のバブル崩壊を想起させるだろう。そうなれば、長い世界同時不況の予想へとつながり、世界の需要収縮の影響を日本経済もかなり受けることになる。
しかし今回の危機の本質を、巨大で複雑な投機行動の破綻、と捉えるならば、それへの対策として投機の抑制と金融規律の回復が予想される。それは、世界的に見れば、金融に依存する国の相対的地位が落ち、実体経済が伸びる国、しっかりしている国の相対的な地位が上がることにつながるだろう。そうなれば、日本にとっては有利なシナリオで世界が展開することになる。もちろん、短期的な需要収縮の影響はきつい。だが、中長期では日本にとってはチャンスとなるのである。
通貨価値は一国の強さの表現でもある。今われわれが経験している急激な円高は、この第2のシナリオの「投機的表現」ではなかろうか。
?? 1971、ニクソンショックもありました・・
どうですかねーー??? チャンスとしても、
今回は、わたしは、国民不在が露呈した、政府の対応のわるさが、
日本の将来と国民の意欲を減退させているようにしか見えないんですが???

