(1/24)オバマ新大統領の就任演説内容(全文)
オバマ新大統領の20日の就任演説の全文は次の通り。
市民の皆さん。私は今日、我々が直面する任務を謙虚に受け止め、皆さんにいただいた信頼に感謝し、先祖が払った犠牲を忘れずに、ここに立っている。ブッシュ大統領の国への奉仕と、政権移行期に示してくれた寛容さと協力に感謝する。
これで44人の米国人が大統領の宣誓をした。宣誓の言葉は、潮が満ちる繁栄のなかで発せられたこともあれば、水面が穏やかな平和時に読まれたこともある。しかし、宣誓は時折、暗雲が垂れこめ、荒れ狂う嵐のさなかで行われる。このような時にも米国が前進し続けられたのは、単に指導者たちの技量や洞察力のためだけでなく「我ら合衆国の人民」が先祖の理想に忠実で、建国の文書に誠実であったためだ。
ずっとそうあり続けてきたし、現世代の米国人もそうでなければならない。
我々が危機のまっただなかにいることは、いまや誰もが分かっている。米国は幅広い暴力と憎しみのネットワークと戦争中だ。経済はひどく脆弱(ぜいじゃく)になった。それは一部の人々の強欲と無責任の代償でもあるが、同時に、難しい選択をせず、国家を新しい時代に準備してこなかった集団的な失敗でもある。家は失われ、仕事は奪われ、企業は破綻した。健康保険はコストがかかりすぎ、学校はあまりにも多くの人の期待を裏切る。我々のエネルギーの消費の仕方は敵を強化し、地球を脅かしていることが、日を追うごとに鮮明になっている。
これらはデータや数字で表れる危機の指標だ。同様に甚大な問題でありながら、より把握しにくいのは、米全土で徐々に広まっている自信喪失だ。それは米国の衰退は不可避という恐れ、次の世代は目標を下げなければならないという不安だ。
今日、我々が直面している試練は現実のものだ。それらは深刻で多岐にわたる。簡単に短期間で解決できるものではない。しかしアメリカよ、これらは必ず解決できる。
今日この日、我々は恐れより希望を、争いや仲たがいより目的を共有することを選んだ結果、こうして集まった。今日この日、我々の政治を長い間、窒息させてきたつまらない不平や間違った約束、非難合戦、使い古された教義などの終わりを宣言するために集まった。
我々は若い国家であり続けるが、聖書の言葉を借りれば、子供じみたことはやめる時が来た。不朽の精神を再確認し、歴史の良い部分を振り返り「すべての人が対等で、自由で、最大限の幸福を追求する機会を持つ」という代々受け継がれてきた貴重な贈り物、高貴な理念、神の約束を前進させる時が来た。
我々はこの国の偉大さを再確認するとき、偉大さが決して当然のことではないと理解している。それは働いて得たものでなくてはならない。我々の旅路は近道や妥協であったことはない。憶病者や、勤労より娯楽を好み、富と名声の喜びだけを求める者の旅路だったこともない。むしろリスクをとり、行動し、物を作り出す人々が繁栄と自由への長いでこぼこ道を導いてきてくれたのだ。その中には高名な人もいるが、多くは無名の働く男女だ。
彼らは私たちのためにわずかな所持品をかばんにしまい、海洋を旅し、新しい生活を探してくれた。
彼らは私たちのために工場で汗を流して働き、西部を開拓し、むち打ちに耐え、硬い大地を耕してくれた。
彼らは私たちのために(独立戦争の)コンコード、(南北戦争の)ゲティスバーグ、(第二次大戦の)ノルマンディー、(ベトナム戦争の)ケサンのようなところで戦い、命を落とした。
これらの男女は私たちがよりよい暮らしを送れるよう何度も何度も苦闘し、犠牲を払い、手が腫れるまで働いてくれた。彼らの目に映る米国は、1人ひとりの大望の集積もさらに大きいものだった。生まれや富や党派の違いを超越した国だった。
これが今日も我々が続けている旅だ。我々は依然として地球上で最も繁栄し、強い国家だ。今回の危機が始まってから米国の労働者の生産性が落ちたわけではない。創造性が低下したわけではない。我々の商品やサービスへの需要が先週、先月、昨年より減ったわけでもない。我々の能力は衰えていない。しかし、現状維持、狭い権益の保護、不快な決断を先送りする時代は間違いなく過ぎ去った。今日から我々は立ち上がり、ほこりを振り払い、米国を再生する作業をもう一度始めなくてはならない。
なぜなら、どこを見てもなすべき仕事がある。経済の現状は大胆で迅速な行動を求めている。新しい雇用を創造するだけでなく、成長の新しい基盤を築くために我々は行動する。
我々は商業の糧となり、我々を結びつける道路や橋、送電網や通信網を造る。科学を本来あるべき地位に引き上げ、医療の質の向上とコストを抑えるために素晴らしい技術を駆使する。太陽、風、大地を使い自動車を動かし、工場を稼働させる。新しい世代の需要に合うように学校や大学を変革していく。これらはすべて実現可能だ。そして我々はこれらをすべてやる。
さて、我々の志の大きさについて疑問を持つ人々がいる。彼らは我々のシステムがあまりに多くの大計画に耐えられないと主張する。だが彼らは忘れっぽい。なぜなら彼らはこの国がなし遂げたことを忘れているからだ。想像力が共通の目的と結びつき、必要性が勇気と交わったとき、自由な男女が何を達成できるかを忘れている。
皮肉屋は足元で地殻変動が起きていることを理解していない。時間を浪費しすぎたカビくさい政治論争はもはや通用しないのだ。我々が今日、問うているのは、政府が大きすぎるか、小さすぎるかではなく、機能しているか否かということだ。まともな収入を得る仕事、手が届く保険、尊厳ある老後の生活。これらを各家庭が手に入れられるように、政府が手をさしのべているかだ。
答えがイエスな部分については、我々は前進させる。答えがノーな部分については、その事業を中止する。公金を管理するすべての者は説明責任を負う。使うべきところには賢く使い、悪い習性を改め、誰からも見えるように仕事をしてこそ、初めて国民と政府の間の信頼を取り戻せるのだ。
市場が善か悪かという問題でもない。市場ほど富を生み、自由を広げる力を持つものはない。しかし今回の危機は、市場に対する監視の目がなければ、市場が制御不能に陥ることを思い出させた。国家は成功した者だけを引き立てていては成功できない。我々の経済の成功は、単に国内総生産(GDP)の規模だけでなく、繁栄の広がり、意欲あるすべての人に機会を提供する能力にかかってきた。そうするのは、慈悲としてではなく、共通の利益への最も確実な道だからだ。
共同の防衛について言えば、安全と理想をてんびんにかける誤った選択を拒絶する。建国の父たちは想像を絶する危険に直面しながらも、法による支配や人権を確約する憲章を書き上げた。憲章はその後、何世代もが血を流したことにより拡充されてきた。その理想は今でも世界を照らし、我々は時々の都合で放棄したりしない。だから、今日(就任式を)見ているすべての(外国の)人々と政府に言いたい。そこが巨大な首都であれ、私の父が生まれた小さな村であっても。米国は平和と尊厳の未来を志すあらゆる国とあらゆる男性、女性、子供の友人である。そして我々は再び先頭に立つ用意ができている。
先人らがファシズムや共産主義にミサイルや戦車だけでなく、強固な同盟と永続する信念で立ち向かったのを思い起こしてほしい。彼らは力のみでは自分自身を守れないこと、力があるからといって好き勝手に振る舞う資格がないことを理解していた。その代わり彼らは深慮をもって力を行使すれば、その力が増すことを知っていた。我々の安全は、大義の公正さ、模範の持つ力、謙虚さと自制がもたらす静寂から生じるものだということも知っていた。
我々はこの遺産の守護者だ。この原則に再び導かれることで、我々はより困難な脅威、今まで以上に国家間の協力と理解が求められる新たな脅威に立ち向かうことができる。我々は責任を持ってイラクを同国民に返し、苦労しながらアフガニスタンに平和をもたらす。旧友やかつての敵と手を携え、たゆまぬ努力で核の脅威を削減し、地球温暖化の恐れを逆戻りさせる。
我々は自分たちの生き方について謝らないし、それを守ることを躊躇(ちゅうちょ)しない。自らの目的を達成するために、テロを使い、無実の人たちを殺害する者にいま告げる。我々の精神はあなた方より強く、決して砕けない。あなた方は我々より長続きすることは不可能であり、我々は必ずあなた方を打ち負かす。
米国の先祖伝来の多様性は弱みではなく、強みだ。我々の国にはキリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、無宗教の人がいる。地球上のあらゆる場所から集まった言語と文化によって形作られた。米国は内戦や人種差別の苦汁を味わい、その暗い歴史から、より強く、より団結し再浮上した。だからこそ、我々はどうしても信じたい。古い憎しみがいつの日か過ぎ去り、部族の線引きがやがて消えることを。世界が狭くなるにつれ、共通の人類愛が浮き彫りになることを。そして米国が新しい平和の時代をもたらすために、役割を果たさなければならないことを。
イスラム世界に言いたい。我々は互いの利益と互いへの尊敬に基づいた新しい道を求める。対立を助長したり、自国社会の問題を西洋に責任転嫁したりする世界の指導者に言いたい。あなたの国の国民は、あなたが何を壊すかによってではなく、何を築くかによってあなたを判断する。汚職とウソ、口封じによって権力にすがりつく指導者よ、あなたは歴史の間違った側にいる。しかし、その握りしめた拳を開けば、我々は手をさしのべる。
貧しい途上国の人々に言いたい。畑が豊かになり、きれいな水が流れるようになるようあなたがたとともに取り組んでいく。飢えた体を養い、向上心のある脳を満たしていく。米国のような豊かな国は、もはや国境の外の苦しみに無関心ではいられない。何の考慮もなしに資源を無駄遣いすることも、もうできない。世界が変わったため、我々もそれに合わせて変わらなければならない。
我々の前に開かれた道を考えるとき、私たちはこの瞬間にもはるか遠くの砂漠や山々を警備している勇敢な米国人たちを謙虚な感謝とともに思い出す。アーリントン(国立墓地)に横たわる亡くなった英雄たちが時代を超えてささやくように、彼らも我々に何かを語りかけている。彼らは私たちの自由を守っているだけでなく、奉仕の精神や、自分自身より偉大な何かに意味を見いだそうとする意志を体現しており、我々は彼らを誇りに思う。そして、いまの世代への評価が決まるこの局面で、この(奉仕の)精神こそが我々みんなが持たなくてはいけないものだ。
なぜなら、政府ができること、やらなければならないことはあるが、この国が最後に頼りとするのは米国民の信念と決意だからだ。堤防が崩れた時に見知らぬ人を受け入れる優しさ、友人が職を失うくらいなら自分の労働時間を短縮する無私の心が、暗黒の時に我々を支えてくれる。煙に満ちた階段を駆け上る消防士の勇気、そして子供を育てる親たちの意欲が最終的に我々の運命を決める。
我々が立ち向かう挑戦は新しく、それに立ち向かう手段も新しいかもしれない。しかし我々の成功の礎となる価値観は古い。それは誠実さと勤勉、勇気と公正、寛容さと好奇心、忠誠心と愛国心などだ。これらは普遍の真理である。我々の歴史を通じて前に進む静かな力となってきた。
そうであるならば、いま求められているのはこうした真理に立ち戻ることだ。いま求められているのは新たな責任の時代だ。米国民の1人ひとりが自分自身、自分の国、そして世界に対して義務を負うという認識だ。いやいや請け負う義務ではなく、喜んでつかむ義務だ。難しい課題に全力で向かうことほど、精神を満たし、我々らしさを見せることはないからだ。
これが市民であることの代価であり、約束である。我々の自信の源泉である。未知の運命を自らの手で形作れと神が呼びかけていることを我々は知っている。
これが我々の自由の意味であり、信条である。これがあるからこそ、今日この偉大なモールにあらゆる人種とあらゆる宗教の男性、女性、子供が集まり祝うことができるのだ。これがあるから60年前ならレストランで食事をすることもできなかったかもしれない父を持つ男が、最も神聖な宣誓を行うためにあなた方の前に立つことができるのだ。
だから、我々が誰なのか、どれだけ長い道のりを歩んできたかを振り返りながら、この日を覚えておこう。米国が生まれた年、最も寒い月に、愛国者の小さな集団がいてつく川沿いの消えかけたたき火に身を寄せ合った。首都(フィラデルフィア)は見捨てられた。敵は進軍してきた。雪には血がにじんだ。革命(独立)の行方が最も危ぶまれた時、建国の父は人々にこう読むよう命じた。
「将来の世界で語られるようにしよう。希望と美徳以外は何一つ生き残ることができない真冬の日に、共通の危機にひんした都市と地方はともにそれに立ち向かった」
アメリカよ。共通の危機に直面した今、この困難な冬に、我々はこの時を超えた言葉を思い出そうではないか。希望と美徳によって、氷のように冷たい流れにもう一度勇敢に立ち向かい、いかなる嵐が訪れようとも耐えようではないか。子々孫々が今を振り返った時に、我々が試練の時に旅を終えることを拒否し、引き返すことも、たじろぐこともなかったということを語り継がせようではないか。地平線に視線を定め、神の慈悲を身に浴びて、我々は自由という偉大な贈り物を運び、将来の世代に安全に送り届けたということを。ありがとう。神の祝福がみなさまにあらんことを。そして、神の祝福がアメリカ合衆国にあらんことを。
2008.1.24 NIKKEINET
[ワシントン 20日 ロイター]
米民主党のバラク・オバマ前上院議員(47)は20日正午、ワシントンの連邦議会議事堂前での就任式で宣誓し、第44代大統領に就任した。米国史上初のアフリカ系(黒人)大統領が誕生した。
新大統領は宣誓後の就任演説で、国家の再建に向け責任ある時代を築こうと訴えた。
「この日から、われわれは自分で起き上がり、自らの埃を払いつつ、米国の再生という仕事に再び取り組み始めなければならない」と語った。
議事堂前には就任式を目の当たりにしようと全米各地から駆けつけた数十万の市民であふれた。宣誓に際し、オバマ氏はリンカーン大統領が1861年の宣誓で用いた聖書に自らの手を置いて宣誓を行った。
演説では、過去の奴隷制度や人種差別のなかで「むち打ちや辛い耕作を耐え忍んだ」人たちによって米国は築き上げられてきたと指摘。さらに経済は極めて弱体化しており、大胆かつ迅速な行動をとると確約、8250億ドル規模とみられる景気対策を最優先課題とする意向を示した。
ただ演説では経済危機への具体的な内容は盛り込まれず、米国株式市場では、演説後に下げが拡大した。
<ささいな不満に終わりを>
国民の広範な支持や期待とともに大統領に就任したオバマ氏だが、演説では、現実に目を向けることでそうした期待の高まりを抑えようとする姿勢も見え隠れした。
米経済が過去70年間で最悪の状態に置かれていることや、イラク・アフガン戦争などを通じて米国は危機に直面していると強調。その上で、これまで米国民を分断してきた「ささいな不満(petty grievances)」に終わりを告げる時期が来ていると訴えた。
「今われわれに求められていることは、責任ある新時代を築くことであり、米国民が一人一人、自分自身や国家、世界に対して、嫌々ながらでなくむしろ喜んで責務を担っていくことだ」と語った。
経済については「欲望や無責任」や、困難な選択を回避したことによって支障が生じたとし、経済の建て直しを約束すると表明。経済危機を通じて、注意していないと市場は制御不能に陥る可能性が明らかになったとした。経済の繁栄はさらに幅広く共有される必要があるとした。
リセッション(景気後退)の煽りで財政赤字は1兆ドルに膨らみ、1100万人が失業する状況のなか、景気対策は必須の課題となっている。
<再びリードする立場へ>
対外政策としては、米国が「責任を持って」イラクから撤退し、アフガニスタンの和平獲得を支援すると表明した。
イラクからの具体的な撤退時期については明らかにしなかったが、米軍は2011年末までにイラクを撤退することで米・イラクは合意。またオバマ氏は、武装勢力タリバンの阻止に向け、これまでにアフガニスタンへの増派を表明している。
さらに海外へのメッセージとして「米国はそれぞれの国や人々、そして将来の平和と品格を求める子どもたちの味方であることを知ってほしい。米国は再びリードする立場へ向かう備えがある」と語った。
9・11同時多発攻撃やテロとの戦いを経て、イスラム教徒との融和を表明。相互の理解や尊重に基づく新路線を模索していくとした。一方、テロについては、ためらうことなくこれを防護しつつ、テロを打破していくと述べた。
米大統領にオバマ氏就任
1月21日 NHK
アメリカの第44代大統領にバラク・オバマ氏が就任し、アメリカ史上初めての黒人の大統領が誕生しました。就任演説でオバマ新大統領は、アメリカの再生に向けて国民ひとりひとりが責任を持つよう呼びかけるとともに、国際社会と協調することでアメリカの指導力を取り戻す決意を表明しました。
就任式は、ワシントンにある連邦議会の議事堂前で行われ、オバマ氏が、20日正午すぎ、日本時間の21日午前2時すぎ、「職務を誠実に遂行する」と宣誓し、アメリカの第44代大統領に就任しました。これによって、アメリカ史上初めて黒人の大統領が誕生しました。
このあと、オバマ新大統領は、就任演説を行い、アメリカがイラクやアフガニスタンで戦いを継続し、深刻な経済危機に直面していることについて、「課題は深刻だ。簡単に解決されるものではない」と率直に認めました。そのうえで、「きょうここに集まったのは、恐れるのではなく、希望を持つためだ。対立ではなく、団結するためだ」と述べて、アメリカの再生に向けてともに立ち上がろうと呼びかけました。そして「今求められているのは、新しい時代の責任だ。すべての国民が義務を担い、それを喜んで受け入れることだ」と述べて、国民ひとりひとりが責任を担うよう訴えました。また、オバマ新大統領は「アメリカは平和を求めるすべての国や人たちの友人だ。われわれは再び指導力を発揮する」と決意を表明し、「各国との協力や理解を深めることで、新たな脅威に対処していく」と述べて、国際社会との協調を重視する姿勢を明確に示しました。オバマ新大統領は、就任の演説に続いて、議会からホワイトハウスまで、パレードする予定で、沿道や式典会場の周辺は、歴史的な瞬間に立ち会おうと、全米から集まった大勢の人で埋め尽くされています。
まだどこかに、アメリカという国ではどんなことでも起こりうるということが信じられない人がいるのであれば、アメリカ建国の理念が今日も生きていることにまだ確信が持てずにいる人がいるのであれば、アメリカの民主主義の力に疑問を呈する人がいるのであれば、今晩がその答えだ。
その答えはかつてないほどの数の学校や教会を取り囲んだ長蛇の列に並んで、3時間も4時間も待っていた人々によって(そんなのは人生で初めての経験だろう)もたらされた。なぜなら、彼らは今回こそは違うと信じていたからだ。そして、彼らの声こそがその違いになったのだ。
その答えは語られた。若者によって、老人によって、金持ちによって、貧乏人によって、民主党支持者に、共和党支持者に、黒人、白人、ラティーノ、アジアン、ネイティヴ・アメリカン、ゲイ、ストレート、障害者、健常者によって。世界にメッセージを発信する全てのアメリカ人によって語られた。我々は単なる赤い州(共和党支持の州)と青い州(民主党支持の州)の集合ではないのだと(訳注:スピーチの中では雑多な個人の集合体ではない、という一節がここに入っていましたがテープ起こしに失敗してるんですかね)。我々は今も、これからもずっとアメリカ合衆国なのだ、と。
その答えは、我々が成し遂げようとしていたことに対してシニカルになれと、あるいは恐れよと、あるいは懐疑的になれと余りにも多くの人々から余りにも長い間言われ続けてきた人々が歴史の琴線に触れ,今一度それをより良き日々への希望に向けるよすがとなるものだ。
答えが出るまでには時間がかかった。が、今晩、我々が今日行った行為(投票)によって、この選挙で、まさにこの瞬間に、アメリカに変革が訪れたのだ。
ついさっき、マケイン上院議員からとても丁寧な電話を頂いた。彼は長い間ハードにこの選挙を戦ったが、彼は愛する国のためにもっと長い間、もっとハードに戦ってきたのだ。彼は我々の多くが想像し始めることさえも不可能な祖国への犠牲に耐え、この果敢にして無私のリーダーの下で我々の生活は改善してきた。私は彼とペイリン副大統領候補のこれまでの業績を称え、数ヵ月後にこの国の行く末を刷新するためにともに働く日々を楽しみにしている。
この旅路のパートナーに感謝したい。心から選挙に協力し、スクラントンのストリートで共に育ちデラウェア行きのあの電車で一緒に家に帰った仲間達のために話した男。合衆国副大統領、ジョー・バイデンだ。
この人の不屈のサポートがなければ私はここに立っていることすらできなかっただろう。この16年間の最良の友であり、我が家の要であり、我が愛であり、合衆国ファースト・レディであるミシェル・オバマ。サーシャとマリア、二人とも愛しているよ。約束どおり、ホワイトハウスに連れて行く子犬を選ぶといいよ。
そして、祖母はここにはいないけれど、彼女は家族と共に見守ってくれている。私を今の私にしてくれた家族と。今晩、ここにいないのが残念だ。彼らには、どれほど世話になったことだろう。
キャンペーン・マネージャーのデイビッド・プラウフ、主席ストラテジストのデイビッド・アクセルロッド、そして政治史上最高の選挙チーム、君達がこれを成し遂げた。そのために払ってくれた犠牲に対し、私は一生感謝を忘れない。
しかし、何よりも。私はこの勝利が本当は誰のものであるかを決して忘れない。貴方だ。この勝利は貴方のものだ。
私が勝てそうな候補者であったことはなかった。資金もなければ支持もなかった。我々の選挙戦はワシントンのホールではなく、デモインの裏庭やコンコードの居間やチャールストンの玄関から始まったのだ。
それは、なけなしの貯金をまさぐらないと5ドル、10ドル、20ドルも出てこないような労働者達から始まった。次に、若者達が力をくれた。その年代は情熱を燃やすことがないという神話を否定し、安い賃金と少ない睡眠時間で働くために家を、親元を離れて協力してくれた。それほど若くない人々も極寒酷暑の中、全く見知らぬ人々の家をノックして回ってくれた。何百万人ものアメリカ人が、ボランティアとして組織をつくり、2世紀以上を経てもなお「人民の、人民による、人民のための政府」が地上から消滅していないことを証明した。これは、貴方たちの勝利だ。
貴方たちは、選挙に勝つだけのためにこれをやったのではないし、ましてや私のためにやったのでもない。貴方たちがここまでやったのは、ひとえにこの先に待ち構えている仕事が莫大であることを知っているからだ。こうして祝福している今日でさえ、明日やってくるであろう挑戦は人生で最も厳しいものになるだろうと知っている。二つの戦争、環境危機、今世紀最大の経済危機。我々が今晩ここに集っている間にも、イラクの砂漠やアフガニスタンの山で勇敢なアメリカ人が我々のために命をかけている。子供が寝た後で、どうやって住宅ローンを返済するか、医療費を支払うか、大学までの教育資金を捻出するか、悩んでいる両親がいる。制御しなければならない新たなエネルギーがあり、創出しなければならない新たな雇用があり、建設しなければならない新たな学校があり、敵が待ち構えていて、修復しなければならない同盟がある。
この先の道は長く、勾配は険しい。一年では辿り着けないかもしれないし、一期でも難しいかもしれない。だが、アメリカよ、私は今晩ほど希望を抱いたことはかつてない。私は貴方たちに約束する。我々は必ず成し遂げる。
後退することもあるだろう。道を間違うこともあるだろう。私が大統領として下す判断や政策に同意しない人は沢山いるだろうし、政府が全ての問題を解決できるわけでもない。だが、少なくとも我々が直面する課題に関して私は常に正直でいようと思う。私は貴方の言うことを聞く。同意が得られない場合には特に良く聞く。何よりも、私は貴方に参加して欲しいのだ。過去221年の間、この国がしてきたようにこの国を作り直す仕事に。1ブロックずつ。レンガ一個(1ブリック)ずつ。豆だらけの手で。
21ヶ月前の冬のさ中に始まったことが、この秋の晩に終わるわけではないのだ。この勝利それ自体は我々が望んだ変革ではない。変革を起こすチャンスを与えてくれただけだ。ここで後戻りしたら何も起こらない。貴方の協力がなければ何も起こらない。
だから、新たに愛国の精神を、奉仕と責任の精神を呼び覚まそう。我々が問題に一生懸命に取り組み、自分だけではなく互いに助け合えるよう決意するために。この経済危機がもたらした教訓を思い出そう。それは、メイン・ストリートの具合が悪いときにウォール・ストリートだけが繁栄することはできないという教訓だった。少なくともこの国では。我々は一つの国、一つの民として運命を共にするのだ。
党派心、近視眼、未熟さといった、これまでに余りにも長い間政治が陥ってきた同じ過ちに陥らないようにしよう。共和党の旗を最初にホワイトハウスに持って行ったのはこの州出身の男だったことを思い出そう。共和党は信頼と個人の自由と国家の団結に価値を置く政党だが、その価値観は我々全てが共有するものだ。今晩、民主党が偉大な勝利を手にしたが、我々は謙虚に、そして我々の進行を妨げる断絶を修復する決意を持って、この価値観を共有しよう。リンカーンは現在よりも遥かに分断された国民に向かって説いた。「我々は敵ではなく友である。情熱は友愛の絆をすり減らしたかもしれないが、絆を完全に壊してはいけない」だから、今後、私が助力を必要とするであろうアメリカ人達に伝えたい。私は貴方を選挙で勝たせることはできないかもしれない。だが、貴方の言うことに耳を傾けよう。貴方の助力が必要なのだ。そして、私も大統領の責務を果たそう。
そして、海の向こうから今晩の様子を見ている人達に伝えたい。議事堂や王宮からうち捨てられた街角のラジオに集う人々まで。我々の物語は別々かもしれないが、我々の運命は共有されている。新しいアメリカのリーダーシップの時代がやってくる。世界を引き裂こうとしている者は、我々が打ち滅ぼそう。平和と安全を希求する者は、我々がサポートしよう。そして、今でもアメリカはそれほど輝いているのかと疑問に思う者よ。我々の強さの源は軍事力でも経済力でもなく、尽きることない理念、すなわち、民主主義、自由、機会、絶えない希望なのだということを、今晩我々は今一度証明したのだ。
アメリカの真の資質はアメリカは変わることができるという点なのだ。我々の団結は完璧になりうる。これまでに成し遂げてきたことが、明日から成し遂げなければならない事への希望となる。
この選挙では多くの史上初と多くの物語が生まれ、語り継がれていくだろう。だが、今晩私の頭にあるのはアトランタで投票した女性の物語だ。彼女は、選挙を通じて声を届かせようと列に並ぶ何百万人もの人々となんら変わる所はない。唯一つ、アン・ニクソン・クーパーが106歳だということを除いては。
彼女は奴隷制直後の世代に生まれ、当時の道路には車がなく飛行機もなかった。更に、二つの理由で選挙に参加することもできなかった。彼女が女性であり、皮膚の色が違ったからだ。
そして今宵、私は彼女がアメリカで過ごした1世紀を思う。悲嘆と希望。闘争と前進。我々にはできない、と言われ続け、そのアメリカ人の信条を押し付けられた日々。 Yes we can(いや、できるさ)
女性の声は押し殺され、女性の望みはかき消された時代。彼女は見た。女性が立ち上がり、声を上げるのを。そして今晩、投票所にやってきた。 Yes we can(そう、できるんだ)
(1930年代)砂嵐の被害に苦しむ中南部には絶望が、そして国中に憂鬱が蔓延した時代。彼女は見た。ニューディール政策、新しい職と新しい公共心によって国が自力で恐怖を克服する様を。 Yes we can
爆弾が我々の湾に降り注ぎ、世界が独裁者の脅威に晒されたとき。彼女は見た。その世代の人々が偉大にも立ち上がり民主主義が救われるのを。 Yes we can
彼女は見た。モントゴメリのバスを、バーミングハムの放水を、セルマの橋を。そして、彼女は聞いた。アトランタから来た宣教師が人々に「我々は勝利する」と語るのを。 Yes we can
人類が月に到達し、ベルリンの壁は崩され、我々の科学と創造力によって世界中が結ばれた。今年、この選挙で彼女は指でスクリーンに触れるだけで投票した。106年もの間アメリカで生活し、最良のときも最悪のときも経験してきた彼女は、アメリカがいかに変われるかを知っている。 Yes we can
アメリカよ、我々はここまでやってきた。実に多くを見てきたが、実に多くが手付かずだ。だから今宵、我々は自問しよう。我々の子供達が来世紀を見るならば、私の娘達が幸運にもアン・ニクソン・クーパーほど長生きできたなら、どんな変化を目撃するのだろう?どんな進歩を成し遂げているのだろう?
これは、その問いに答えるべく、我々に与えられたチャンスだ。我々の時、我々の時代なのだ。人々を仕事に戻し子供達に機会のドアを開く、繁栄を取り戻し平和を推進する、アメリカンドリームを再生し根本的な真実を再確認する、つまり、多くの場面で我々は一体である。共に生き、共に望む。シニカルであったり懐疑的であったり、我々にそれは無理だと言い続けるような人々に出会った場合には、我々は人々の精神の総和である朽ちることない信念をもって応える。
Yes we can(いや、できるさ)
(Yes we can(いや、できるさ)は、言わなかったようです???)
ありがとう。貴方に神の祝福を。アメリカに神の祝福を。
びじうのログ
そう、やれば、できる!!! es we can(いや、できるさ)
シティの2分割
だが、言葉に酔ってばかりもいられまい。オバマ政権は滑り出しからいきなり試練にさらされる。政権から100日間はマスメディアも大統領への批判を慎むハネムーン期間と言われるが、今はそんな悠長なことを言っていられないほど金融危機再来が迫っている。先週末には、米銀最大手のシティがグループの2分割案を発表。昨年、2度も政府の支援策を受けたにも関わらず、連結決算外の傷が深すぎて立ち直れないままだ。シティの総資産は2兆ドル(約180兆円)もあるが、これを銀行や投資銀行などの中核部門と証券業務や消費者金融などの非中核部門に分け、将来は中核部門だけを残して売却するという。日本も他人事ではなく、シティ傘下の日興コーディアル、日興アセットが非中核部門に入れられて、将来は売りに出されることになった。シティは銀行が証券、保険、クレジッドカードなどあらゆる金融業務を兼ね、ワンストップの便利さを売りにするビジネスモデルを謳っていたが、実は中はてんでバラバラだったことが露呈、とうとう空中分解に至った。しかし、話はシティだけにとどまらない。同じく追加支援を受けたバンク・オブ・アメリカ、さらに欧州や日本のメガバンクも大なり小なり同じ方向を目指してきたからだ。シティの挫折はさらなる金融機関再編の呼び水になるだろう。
オバマ新政権もそれに備えるかのように、ガイトナー財務長官ら経済チームが新たな政策を考えているようだ。発足とともにブッシュ前政権の金融安定化策は改めて見直されることになる。17日付のウォールストリート・ジャーナル電子版は、これまでのような資本注入や政府による債務保証では足りないとして、金融機関の不良資産をバランスシート(貸借対照表)から切り離す「バッドバンク、グッドバンク」構想が浮上していると報じた。「バッドバンク、グッドバンク」とは聞き慣れない言葉だが、要は不良資産を旧勘定の受け皿銀行に集中させ、銀行業務は新勘定の銀行で続けて息を吹き返させるというもので、日本でも地方金融機関などの再生にこの方式を使った経緯がある。
まさに、シティの2分割はその先ぶれにみえる。いまのアメリカの金融株急落の惨状ではまさに「待ったなし」。一部報道では、金融機関の追加支援には新たに最大1兆2千億ドルが必要だとの試算も出ているが、ブッシュ政権下の金融安定化策の残り3500億ドルに上乗せして新たな銀行支援に乗り出すのかどうか…。オバマ新政権の長く険しい初仕事が始まる。
FACTA


