君の人生に女が入ってくる。素晴らしいことだ。
出ていってくれたらもっと幸福なのに。

                    ポール・モラン(フランスの作家・外交官)




ズラか?ドナルドよ?



辻さんはひとに神経質だ。
自分ひとりで過ごすはずの時間に私がいるとバランスが崩れる。

テレビで今日のニュースを見ながら新聞を読んだり
ほどよい適量のお酒を口に流し込みながらカレンダーを見つつ、
仕事の進捗状況を確認したりパソコンで今日の情報を閲覧したりする。

それが帰宅後の辻さんの過ごし方。

私は辻さん宅にいるときは適度にテレビのリモコンを手にし
見たい番組にチャンネルを変え、飽きると読みかけの小説のページを開く。

私たちはそれぞれに夜の過ごし方がちがう。

たまに私が見る番組につき合ってくれているのかな?と
ちいさく「ごめんなさい」と「ありがとう」と心のなかで呟いてしまう。

そんな気持ちも寝苦しい夜に隣の部屋から聞こえてくる
歯ぎしりに目がさえてしまい、感謝の気持ちは泡と化す。


翌朝、辻さんが出勤後にそろそろとベッドルームから出て
洗濯機をのぞきこんでみたら親の敵をとったかのような洗濯量が
今か今かと干してくれるのを待っているかのごとく、たまっている。

確か昨日も干したはずなのに、この量は…!?
確実にベランダだけでは干しきれない2.5日分はある量に
一度顔をそむけて朝食を摂ってからと弱気になったが、
ゆっくり食べたいしなぁとさっさと洗濯仕事を済ます。
こういったごくわずかな頭を抱えてしまう家事が辻さん宅にいて起こる。


どうしてだろう?


ひとに神経質な面を持っていても家事は掃除以外は適当な辻さん。
ふだん使わないバスタブが気になってきているが
試しに今回は辻さんが言うまで掃除しないでおこうかな?と
先週から様子を見ているがいまだ、お声がかからないまま。

これでも家事することで辻さんが家のなかで感じるストレスを
すこしでも軽減させているつもりだったが
あまり意味がなかったのかな?とちょっとひねくれたくなった。