俳優としての才能とたゆまぬ努力、
そして絶大なる人気。
なにもかもがスゴイと、見ながらため息。
彼のことをあまり知らない私でさえ、
彼が早くして伝説になったことを、
心底惜しいと思えてならなかった。
それでも、彼のスゴさはこんなものじゃないという、
爆笑・太田さんもまた良かったな。
ということで、今日は息子さん、松田龍平くんの初主演映画を、『青い春』。
男子高、朝日高校の屋上に集まる6人の男達。
上級生の卒業式のその日、彼らはそこでベランダゲームをしていた。
それは、屋上の柵の外側に立ち、手を叩いた回数を競うもの。
一番多く手を叩いた者が学校を仕切るという、命を懸けたゲームだ。
そこで8回の新記録を出したのが、物静かでクールな九條。
けれども彼にとっては、ゲームも学校を仕切ることも、
無意味で退屈なことだという。
彼の周りの、親友の青木やギターを弾く雪夫らもまた、
退屈な日々に苛立ち、暴力を奮う毎日。
高校3年生という将来の進路志望を突きつけられた彼らは、
自らの生き方を不器用に模索し、屋上へと上がっていく。
この作品、とにかく格好良い。
ベランダケームを終えて階段を降りてくる彼らを映す冒頭の映像で、
あまりの格好良さに思わず身震いしそうになった。
俳優陣もさることながら、映像の映し方、
劇中に流れるミッシェル・ガン・エレファントの音楽、
全てがクールでエッジか効いていて、すっごく良い。
それは、この映画に対する評価に半信半疑でいた私を、
5分で画面の前から離れられなくしたほどだ。
ストーリーは男子校のワル達の日常を描いたもの。
起点となる事件が起こるわけでもなく、
いや、起きるのだけども、それは彼らにとっては日常の一端、
私には衝撃的だが、彼らにとっては日々たんたんとした出来事だ。
授業をサボったり、トイレでタバコを吸ったり、人を蹴ったり殴ったり、
真面目に学校生活を送っていた私からしたら、彼らは相当なワル。
それでも、どことなくかわいらしいと、私には思えた。
混沌とした日常、不透明な人生、捧げる青春もなく、
仲間とつるむだけの彼らが、
門の閉ざされた学校というある種守られた空間の中で、
強い弱いを争うだけの姿はとても幼く、
だからこそ、そんなことに無関心な九條は格好良いし、
そんな彼もが学校から旅立つことに臆病でいて。
ヤクザの世界に入っていった木村や警察に連れて行かれた雪男、
自分よりも一足先に学校から旅立っていった仲間を屋上から見下ろす九條。
彼はいつもそこにいて、毎日変わりゆく空の下、何を考えていたのだろうか。
学校から社会へ、それは集団から個へ。
大人への道を目の前にし、まだ覚悟のできてない彼らの青臭さが、
なんとなく私の心には染みた。
それにしても、この作品の俳優陣は豪華だ。
松田龍平くん、新井浩文くん、高岡蒼佑くん、KEE改め渋川清彦さんら、
実力と独特の存在感を併せ持つ若手が多数ご出演。
そう思ったら、これ、今となっては貴重な作品かもね。
松田龍平くん。女の子みたいに色白ですっきりとした顔立ちなのに、
クールでぶれない佇まいと類まれなるその存在感は半端なく、
そこに立つだけで絵になる男。それを流石というものなのかは、
松田優作さんを伝説でしか知らない私にとってはわからない。
が、『御法度』で大島渚監督が、
熱烈な出演オファーをしたという逸話も頷ける。
若い俳優さんの中でも稀有な存在と、私の中では位置づけられている彼に、
経験と努力を積んで、早くオーラを放って欲しいなと、密かに期待。
で、そんな彼とこの映画で出会い、今は公私共に仲が良いという新井くん。
前半の新井くんは『ゲルマニウムの夜』([cdb]#71 )の朧くんが嘘のよう。
ワルぶっているけどどことなく弱くって、かわいらしい。
二人が屋上で髪の毛を切っているシーンは、ホントかわいいんだ。
でも、後半の青木は一変、あの目つきになるのですよ。
彼、この映画がデビュー作とか。へぇ、信じられない。
最後の二人のシーン、
ぶれない青木と初めて感情を表に出した九條が・・・。
切なくて、救いようのない彼らだけども、それもまた、"青い春"なのだろう。
ちなみに、先日、『ゲルマニウムの夜』の企画、
ゲルマシンガントークに松田龍平くんがご来場。
新井浩文くんと大森監督とのトークが実現したとか。
その時のレポを読んで、>>
ああ、この二人がこれからの邦画を背負っていくんだろうなと、
そして、この二人が仲が良いことが、なんとなくうれしかった。
でもってもうひとつ、ちなみに。
一角座で上映されていた『ゲルマニウムの夜』が、
8/15にとうとうグランドフィナーレを迎えたそう。
8ヶ月ものロングラン、とにかくお疲れ様でしたと、
その言葉を贈りたいと思います。