さて、マスクにはウイルスを含んだ飛沫を遮断するという効果があると前回書きました。マスクの効果を考える時に、二つのケースを考慮しなければ意味がありません。1)感染者がマスクをつけた場合 2)非感染者(感染してない人)がマスクをつけた場合です。

 

なぜなら、一番大事なのは空気中のウイルス濃度だと繰り返し説明していますが、上の1)(感染者がマスク)と2)(非感染者がマスク)を付けた場合では、空気中のウイルス濃度が全く異なるからです。

 

マスクの素材として、不織布、ウレタン、布などがありますが、素材によってウイルスの遮断効果(排出、吸入の両方)が異なります。もちろん、効果が高い順に、

 

N95(医療用マスク)>不織布マスク(JIS規格によってウイルス捕集率VEFあるもの)>ウレタン>布

 

の順になります。不織布マスクの場合、ウイルスやバクテリアの防御率を定めるJIS規格というのが制定されており性能試験も行われ、その規格を満たしたものだけがJIS規格の認証を受けます。

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経産省HPにJIS規格が制定された旨の記載があります。

マスクの日本産業規格(JIS)が制定されました (METI/経済産業省)

 

不織布マスクの性能としては例えばJIS規格でVFE(ウイルス防御率)>98%という品質の場合、「98%のウイルス飛沫をマスクが遮断できますよ」という意味になります。素材としての不織布マスクは優秀です。

 

ただ一つだけ問題があります。

 

それは、「マスクと顔の隙間」

 

空気中をエアロゾルが漂っている場合、顔とマスクの隙間からウイルスが侵入して感染します。不織布マスク素材そのものは98%のウイルス飛沫を防御できるのですが、顔との間の隙間からウイルスが侵入するので実際の防御率は8割くらいです。N95のオーバーヘッドタイプのマスクだとさらに顔回りの隙間がなくなり、ぴったりと顔に密着します。

 

例えば、今いる空気中に高濃度でウイルスが滞留している場合は不織布マスクでも隙間からウイルスは侵入し感染します。けれども、普通の空間(例えばスーパーや日常生活)の中で、高濃度のウイルスが存在している場所はあまりなく、みんながマスクしている場合ならウイルス濃度もそれなりに低いので大丈夫です。(ただし、目の前や顔の側でくしゃみや咳などをされた場合を除く) 高濃度でウイルスが滞留している場所で私が思いつくのは、感染者が換気の悪いカラオケボックスで歌っていた場所とか、合唱で隣に感染者がいた場合などですね。

 

どんなに高価で性能のよいマスクを着用しても、顔とマスクの隙間が大きければ大きいほど、マスクの意味がなくなります。

マスクをつける時は、ぴったりと顔に沿うようにマスクをつけて隙間が生じないように着用してください。

 

じゃあ、何個ウイルスが侵入してくれば感染するのか?という疑問が生じます。

 

感染が成立するのに必要な数は、XBBくらいだと30個くらいと計算したお医者さんがいます。感染力が強い変異株であればあるほど、少ないウイルス数で感染が成立します。だから、余計にマスクと顔の間の隙間をなくすようにすることが大事なのです。

 

じゃあ、マスクなんて意味ないじゃないかと言う人がいますが、それは間違いです。

 

最初からずっと「重症化、死亡の分かれ道は、暴露したウイルス数できまる」。そう言ってきましたね。

 

例えば、10万個のウイルスを出している感染者がいた場合、感染者がマスクをつけると空気中に出すウイルスの数は大まかにいうと、

 

10万個×20%(80%の防御率だから)=2万個

 

さらに、非感染者(感染してない人)がマスクを付けた場合、2万個の8割マスクが防御するので非感染者が暴露するウイルス数は4千個。

 

どうでしょう。感染者と非感染者のマスク着用によって、暴露するウイルス数をまとめてみます。

 

感染者(ノーマスク)x非感染者(ノーマスク):非感染者が暴露するウイルス数は10万個

感染者(ノーマスク)x非感染者(マスク):非感染者が暴露するウイルス数は3万個(上の表の通り、防御率30%)

感染者(マスク)x非感染者(ノーマスク):非感染者が暴露するウイルス数は2万個(上の表の通り、防御率20%)

感染者(マスク)x非感染者(マスク):非感染者が暴露するウイルス数は6千個

 

いきなり10万個のウイルスに暴露するほうがいいのか、6千個までウイルスを減らしてから暴露したほうがいいのか

 

「暴露するウイルス量は少なければ少ないほどいい。暴露したウイルス量が多ければ多いほど、死亡、重症化する」

 

という大前提に沿って考えれば、感染者、非感染者ともにマスクを着用したほうがずっとましなのです。

 

上の説明のイメージはこんな感じでしょうか。

 

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しかし、コロナで厄介なのは、無症状感染者という人がいるってことです。熱も鼻水も、くしゃみも咳も全くない人が感染していて、しかも、無症状感染者が排出するウイルス量は感染者が出すウイルス量と同じ、という調査結果もあります。詳しくは次回に。