6月に開催された大阪の新型コロナ対策の専門家会議では、次に流行が来たらそれは「第3波」だという話が出ていた。

武漢由来の第1波、そして実はこれが落ち着く寸前に、3月末までにヨーロッパから(戻ってきた日本人を含む)第2波が襲いかかってきていたのだという。

 

ヨーロッパを巡る卒業旅行から戻ってきて、日本で楽しくワイワイしてしまった若者がクラスターになったというニュースで京都の某大学が理不尽にたたかれた、あのタイミングだ。

彼ら以外にもたくさんの日本人があわててヨーロッパから舞い戻っていた。と思う。

 

我が家の長男はこの春から大学2年生。

1年生でドイツ語を選択して、ドイツ人の先生が企画して長年続けているドイツの田舎町でのホームステイ&職業体験に参加すべく、ドイツ語の勉強を頑張っていた。

参加したいでーす!で参加できるのかと思ったら、面接があったりテストがあったり、なかなか狭き門だったらしい。

めでたく幾つかの関門をくぐり抜けて、2020年2月末から1か月くらいの予定でドイツに渡る予定だった。

 

1月、そこはかとなく中国で新型コロナウイルス感染症のニュース。

2月4日、ダイヤモンドプリンセス号が横浜に。

日本でも新型コロナが騒がしくなり始めた頃と渡航する予定が当たった。

 

当時は「中国発」の感染症が隣国になる日本に飛び火してきた感じで、「EU(ドイツ)が入国を許してくれるかな?」といった感覚だった。

むしろ、今は日本を出る方が安全だろうとさえ思えていた。

「ドイツで日本人(アジア人)嫌がられないかなあ」が心配だったのをはっきり覚えている。

 

幸い、ドイツの田舎町の人たちは日本人の若者たちを温かく迎え入れてくれた。

息子によれば、一緒に行った1人が都会のバスの中で「アジア人だ。コロナかも」と言われたことがあったらしいが、まあその程度だったらしい。

 

本来の予定では3月末に帰国の予定だった。

しかし、イタリアで暴発したコロナの炎はあっというまにヨーロッパ全体を巻き込み始め、日本の感染者数なんざ簡単に突き抜けて、3月の初旬には本格的にドイツにも届いてしまった。

辣腕のメルケルさんが速攻で次々に手を打とうとしていた。

予定日まで待っていたらロックダウンで飛行機が飛ばなくなる。

……ということもあって、2週間ほど早めに帰国することになった。

 

日本国としてのお達しでは、この時点でまだ「2週間缶詰義務付け」を言い渡されることはなかったのだが(これが大阪の専門家会議のいうヨーロッパからの第2波の原因だろうと思う)、息子は大学からのお達しで「2週間は家を出ないで」と缶詰を宣告されたらしい。

下宿で荷ほどきをしてから、お土産持って実家に帰省するはずが、下宿で足止めとなり、また生真面目な長男はおとなしく下宿で自己隔離を開始したのだった。

 

京都の大学の子たちも、在学生であれば大学からお達しがあったかもしれない。

卒業生だったから「2週間は自己隔離」を強制されなかったのかもしれないと想像する。

ヨーロッパ卒業旅行を責められていたが、出発のタイミング的にはまだヨーロッパでは感染拡大していなかったのではないか。

記憶をたどるとそう思える。

帰国後、発症したときにはイタリアを含めてヨーロッパが大火事だったので「この時期にヨーロッパに行くなんて」とさんざん叩かれていた。

大学も彼らも気の毒だった。

 

帰国2日後、あろうことか長男がドイツでお世話になったお家のお父さんがコロナで入院したという知らせが飛び込んできた。

 

滞在していた田舎町は感染者ゼロだったのだけど、お父さんは都会に働きに出ていた。

運悪く感染してしまい、入院してしまったというのだ。

大学もその知らせを受けてびっくりしたに違いない。

息子に保健所に連絡するようにと指示が飛んだ。

息子もPCR検査やらあれこれ覚悟して保健所に電話をかけた。

ひととおりの説明を聞いて保健所の人から尋ねられたらしい。

「で、あなたは何か症状がありますか」

「なにもありません」

「では、毎日体温を測って、極力出歩かず、気をつけて過ごしてください。何かあったら改めて連絡してください」

 

大学側も息子も拍子抜けのお答えが返ってきて、まあ、そんなもんなのかなということになった。

当時は、発症直前に感染させる力があって実は結構アブナイという話とかは全くなかったからかもしれない。

お父さんは、お別れの日、元気に息子を見送ってくださった。らしい。ほどなく発熱。

 

息子は戦々恐々としながら、2週間を無事に過ごし切った。

検査をしていないので、感染していたかどうかはわからないままだ。

 

ドイツのお父さんは回復されて、めでたく退院して近所を自転車で走ったりしているという連絡が来たそうだ。よかった。

 

というわけで、もしかしたらうちは長男がヨーロッパ系の抗体を持っている…かもしれない。

実家の家族(我々)も、新型コロナの抗体を持っている可能性が高い。

主人がかかったのがどこ系統かはわからないけども。

 

ドイツのお父さんと日本のお父さんがコロナで入院した長男汗

なかなかレアケースかもしれない。