学界とは無関係な老人が提案をするなどもっての外だと激怒される方も多いかもしれないが、卒業研究は必ずしもオリジナリティを追求する必要はなく、むしろ、思考作業を身につけるという基本に立つべきと思い、考えてみた。科学研究費で研究していると胸を張りたい研究者諸賢の聡明さには私は永遠に及ばないが、かといって、学生は授業料を支払っているのであるから、教育的機能はあるべきと思う。


そこで、ノートPCと国内の更新中のゲノムデータベースを用いて、リブログ元の内容を基に、一つの学生実習を考えてみた。リブログ元の該当箇所を、抜き出す。

 

2021年にイタリアと中国香港の研究チームによる論文で、このことを改めて認識した。この論文では、甲殻類の十脚目のゲノムデータを比較解析して書かれたものだが、カニやヤドカリを含む十脚目でも、ゲノムサイズは直接発生>間接発生、という結果になったことを述べている。そして、2002年に書かれた論文を引用して、後生動物においては、おおむねこの傾向が見られるとしている。昆虫類(不完全変態>完全変態)、(系統はいきなり離れるが)無顎類(ヌタウナギ>ヤツメウナギ)、および両生類(サンショウウオ>カエル)というゲノムサイズの明らかな差異があるのだという。幼生段階があるということは、変態も含め多くの発生段階があるため、その分だけ正確な細胞分裂や細胞分化がなされないといけないので、ゲノムサイズを小さめに維持しないと遂行できないのではないか、と考えられているようである。

 

 

要するに、各動物門のゲノムサイズと発生様式を確認し、幼生のない発生過程と幼生のある発生過程で有意差があるか、検定するのである。後者については、幼生の段階数を見るという発展的内容も追加できるし、幼形成熟の有無を加えてみても面白いかもしれない。

 

ゲノムサイズについては、以下の国立遺伝学研究所のゲノムデータベースを使用できる。学名を入力し、Avg. Genome sizeにチェックを入れると、実際にゲノムサイズが表示されるのである。

 

 

※以下の動物のゲノムサイズを集約したデータベースをそのまま使うのが一見要領が良いように見えるが、生物種の量が少ないと思えるので、上のサイトでやるのが卒業実習らしいであろう。

 

 

 

ただし、1種類ごとの検索表示しかできないので、プログラミングなどを用いて動物門ごとに一挙にダウンロードし、ゲノムサイズの情報を別途抜き出すというITを駆使した作業は必須になる。今の時代は逐一検索結果を手入力する時代ではない。この手のスキルは今の若い世代は特に吸収する環境に恵まれていると思うので、格好の卒業実習である。

 

ただし、発生様式までは検索のみで十分に調べ尽くせないだろうから、ここで文献輪読などの地道な作業は発生する。ここは耐久力を要することになるだろう。かつて私が以下の記事で述べたような、ある意味武者修行のようなところがある。

 

 

実際にデータを揃えて検定をしてみることで、新たな閃きが生まれることもあるかもしれない。もしくは、そんな有意差など皆無だったということもあるかもしれない。しかし、手を動かしてみることは、特に卒業実習については、教育的機能として最重要だと考える。下手に最先端機器に触れ、苛烈な競争に心身をすり減らし学問への憎悪が生まれるよりは、遙かに人生に有意義であり、学問を憎悪することはない。