「箱船の教室」 1. キカの水平 | 小林香オフィシャルブログ「Caori Covayashi」Powered by Ameba

「箱船の教室」 1. キカの水平


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「箱船の教室」 

作曲 松波千映子
作詩 小林香


1. キカの水平


机に臥して寝息をたてる友のまつげ
目の前の背中は 舌を出すアインシュタインのTシャツ
夏の午後 
三角と円が舞い踊る幾何学の授業中
君からの手紙が友の机をリレーしてきた

今なにを考えてる?
僕は幾何学の図形を描く代わりに この手で一本の線をひく
これは水平線
ここに地終わり 海始まる
僕はこの白い教室にいながら ロカの岬に立っている
まるで風をはらんだ帆船のようだ

僕は窓から空をみやった
遥か遠く 透明と宇宙の境目もないブルー

なぜ三角形の内角の和は180度で
円周率は無限なのか
神のつくりし謎には答えられないけど
父と母のつくりし僕の命という謎には答えよう
いつかコロンブスのように新大陸を発見する
僕も一本の線でお返しする
これは地平線
ここに海終わり 陸始まる

先生が新しい問題を書いた
“線分上に2つの点を求めよ”

友よ 君の描いた水平線
この永遠の一本の線に2つの点を求めるなら?

僕の誕生と死に
その間にある今を見出すため
友よ 君の描いた地平線
この永遠の一本の線に2つの点を求めるなら?

たとえば君と僕に
空と地の間にある 点のような小さな存在に

ここに地終わり 海始まる
ここに海終わり 陸始まる
ここに地終わり 海始まる
僕らは今 夏の風に吹かれている