『組曲虐殺』 | 小林香オフィシャルブログ「Caori Covayashi」Powered by Ameba

『組曲虐殺』


 絶望するには、いい人が多すぎる。

 希望をもつには、わるいひとが多すぎる。



現在上演中の、井上ひさしさんの新作『組曲虐殺』のなかで

地下活動中の小林多喜二(井上芳雄さん)に語らせる台詞。


いや~。。。



『組曲虐殺』、すごいです。


私は、深い感動の渦に飲み込まれたまま渦の中から戻ってこれず、

終演して井上芳雄さんの楽屋に挨拶にいっても

まだ口をパクパクしてほとんど言葉にならない状態でした。



「蟹工船」の小林多喜二を描いてるので

むごい虐殺のシーンがあったらどうしよう、としり込みしてましたが

そんなものはいっさいなく、

言葉の力で、

描ききられてました。


劇中でも、

暴力はいけない、殺しあうのはいけない、

武器を使わなくてすむように

僕らは言葉を使って話しあうのだ、

という意味のことを、井上ひさしさんは多喜二に言わせてます。


そして今回は音楽劇なので、音楽の力も現れます。

この冒頭に引用した台詞のあと、

”誰か 愛の綱を担いで 絶望から希望へ繋ぐ者はいないか”

というような歌(by 井上芳雄さん)に続くのですが

これがまた力強く・・・



話変わりますが、

数日前に頂いた浅田次郎さんの文庫本『つばさよつばさ』。

ここで、井上ひさしさんと似たことを浅田さんも書いておられました。

まとめると、

人間は暴力による感情表現をすることが多くなってきた。

それは感情を制御し担保するだけの言語力が低下しているから。

言葉は争うためにあうものはなく、

争いをせぬように神が与えてくれたもの・・・。



そんなわけで『組曲虐殺』は暴力シーンがないまま終わりましたが、

井上ひさしさんが客席の一人一人に渡したものは

けして軽いものではなく、

私はそれを胸のポケットに入れて帰路についたのでした。


あと、もう一つ。

演劇の力をあらためて実感し、

それも胸のポッケに入れたのでした。