7月に亡くなった俳優についてずっと、ずっと考えている。

関わった人、みんな口をそろえて彼はとてもいい奴だったと言う。

それに加えてあの、美しさ。

もう彼はテレビやスマホのガラス越しでしかお目にかかることが出来ない。まるでスノードームみたいだと思った。


子供の頃のことを思い出していた。

小学生の頃、友達にプレゼントしたちいさなケロケロケロッピの鉛筆けずりをあげたのが惜しくなり、やっぱり返してとつい言ってしまったこと。

すると彼女は、ポケットティッシュをだして「使っちゃって、汚れてるから」と言ってきれいに拭いてから返してくれた。あれが、あぁ、人間が違う、だから仲良くても仲良くなった感じがしないんだって、はじめて人との距離を感じた瞬間だったのかも知れない。


鞄のなかの水筒の鈍い氷の音がする。

夏が終わってしまった。

気を抜けば気がふれそうな気がしないでもな

い。