「ちょっと注意されただけ」で異常な恐怖が湧いてくる

ある日、Aさんは街中で見知らぬ人に少し注意を受けました。Aさん自身も「自分の行動が少し良くなかった」と思える出来事で、その場で謝罪し、それ以上トラブルになることはありませんでした。


ところがその直後から、Aさんの心には異常なほどの恐怖が湧き上がってきたのです。


「またあの人に会ったらどうしよう…」「訴えられたりしないかな…」——そんな思考が繰り返し浮かび、同じ場所に行くことにも不安を感じるようになったといいます。

実際の出来事はささいなもので、Aさんも頭では「そんなに引きずるようなことではない」と理解しています。にもかかわらず、心の中では現実とはかけ離れた強烈な感情が動き始めていたのです。


Aさんは恐怖だけでなく、時には怒りも感じていました。


「なんで、あれしきのことで注意されなきゃいけないんだ」と思うこともあったそうです。


このように、現実と感情が大きくズレてしまう体験は、アダルトチルドレン(AC)の方に多く見られる特徴の一つです。


  背景にある「否定」への過敏な反応

Aさんのような体験の背景には、「否定」に対する強い敏感さがあります。


その敏感さは、多くの場合、幼少期の環境に根ざしています。特にアダルトチルドレンの方は、日常的に自分の存在が脅かされるような経験を何度もしてきた可能性があります。


・強く叱責される

・無視される

・突然怒りをぶつけられる

・理不尽な扱いを受ける


こうした経験を繰り返す中で、子どもは「自分が否定される=危険だ」と学習してしまいます。


そして、大人になってから、ちょっとした注意や否定的な態度に対しても、当時の恐怖が反射的に蘇るのです。


それが「怒られてないのに怒られたと感じる」「もう終わった出来事なのに心がざわつき続ける」といった現象につながります。


さらに、「恐怖」と「怒り」がセットで出てくることもあります。

これは、過去に怒りたくても怒れなかった経験が多いほど、今になってその感情が遅れて出てくるという仕組みも関係しています。


  感情に巻き込まれそうなときの対処法

このような感情のズレが起きたとき、まず大切なのは「これは昔の記憶に基づいた反応かもしれない」と自分で気づくことです。


感情の動くままに思考を巡らせてしまうと、

「やっぱり悪かったのかもしれない」「訴えられたらどうしよう」などと考えが暴走し、さらに不安が大きくなっていきます。


また、その不安が現実の行動(場所を避ける、人を避ける)にも影響すると、

「やっぱり自分はダメなんだ」と思う材料になってしまい、自己否定が強化されてしまいます。


そうなる前に、自分の中で次のようなステップを試してみてください。

1. 今感じているのは、「過去の反応」かもしれ ないと認識する

2. 感情を深掘りせず、「今は大丈夫」と静かに言い聞かせる

3. 安全な場所で、落ち着くまで待つ(歩く、深呼吸、音楽など)


この作業は、一見地味に見えるかもしれませんが、丁寧に繰り返すことで、感情が少しずつ落ち着いていきます。慣れてくれば、数十分で恐怖や怒りの波が和らぐこともあります。


ただし、初めのうちは一人でやるのが難しいこともあります。


そんなときには、カウンセラーと一緒に、「今起こっていること」と「過去の経験とのつながり」を確認しながら、感情に巻き込まれずに対処する練習をしていきます。


  おわりに

もしあなたにも、「ちょっとしたことで異常に怖くなる」「怒られたわけでもないのに苦しくなる」といった経験があるなら、それは決してあなたが弱いからではありません。


それは、あなたが子どもの頃に必死で身につけた「生きるための感情パターン」なのです。


今はもう、そのパターンを見直してもいい時期かもしれません。

必要であれば、ぜひ一緒に考えていきましょう。


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