今年も一枚の年賀状が来た。女性からだ。
俺は十年程前から年賀状を書く事を止めたのだが、彼女は毎年、年賀状をくれる。
彼女とは高校時代のクラスメートだった。
俺は中学を卒業して高校に入学し、ゴールデンウィーク開けに退学した。そして翌年、通信制の高校に入学した。通信制高校と言っても、全く学校に行かない訳ではない。週に一度、日曜日に学校に行く。
そこには上は50代、下は現役入学のクラスメートがいる。
そこで俺には1コ下と8コ上と10コ上の友達が出来た。もちろん、全員男だ。
仮に1コ下の友達がO、8コ上の友達がTさん、10コ上の友達がK君としておく。
なぜ、8コ上の友達だけ「さん」付けなのかというと、彼は元ボクサーで友達でなければ関わりたくないような外見をしていたからだ。
今で言うイケメンで気さくな人なのだが、醸し出すオーラが怖かったし、昔の写真を見せてもらったら、完全にその筋の人だった。本人は頑として否定していたが、俺は今でも信じていない。なので、Tさんだけは友達でありながらも基本敬語を使っていた。もっとも、ツッコミを入れる時にはタメ口だったが…
そんな愉快な仲間が、日曜日に学校で集まると、月曜の夜まで一人暮らしだったTさんの部屋で飲めや歌えの大騒ぎを繰り広げていた。
馬鹿みたいに楽しかった。男4人だったが、それ故、誰に気兼ねする事無くしょ~もない下ネタやエロビデオをを見たり、昼間は近くの公園や商店街に散歩に行ったりと、全員金が無いくせに、金が無いからこそ、楽しかった。
楽しすぎてバイトをサボり続けてをクビになった時には1週間遊んでいた事もあった。
で、そんな愉快な仲間たちと共に高校生活を送っていたのだが、クラスにメチャクチャ可愛い女の子がいた。クラスメートと言っても、彼女は年齢では俺の1コ下である。仮にMちゃんとしよう。
基本、当時の俺は地元の友達よりも上記の3人とツルむ事が多かった。それ故、俺がMちゃんの事を好きなのは3人とも知っていた。そして、Mちゃんは俺達4人とも仲が良かった。
そんなある日、Tさんの彼女の車でMちゃんを原宿駅まで送って行く事となった。
当然、車中の友人3人とTさんの彼女は俺の想いを知っているので、道中車内は俺に取って微妙な空気になっていた。
当時、クソ童貞でウブだった俺は、今にも吐きそうなくらい緊張し挙動不審だった。
そして、友人3人プラスTさんの彼女はそんな俺を見て楽しんでいた。もちろん、これが逆の立場だったら、これ以上面白い図はなく、俺だって楽しんでいたに違いない。つくづく、俺達4人は底意地の悪い仲間だった。
そんな道中の事は今では覚えていないのだが、車は日曜の夕方の原宿駅前に到着した。
「ありがとう」と言ってMちゃんは車を降りる。
バタンと車のドアが閉まるとともに、OとTさんが俺をどつき回しながら「告白しろよ!」と言う。
「言える訳ねぇだろ!」と拒否する俺だったが、Mちゃんの姿が遠ざかるのを見たTさんが俺の胸ぐらをつかみ
「言わないと、マジで殴る」と脅迫めいた、いや完全に脅迫された。
Tさんは本当にいい人なのだが、俺達は全員度が過ぎた悪ふざけ集団だったので、悪ふざけの中ではマジで殴る事もある、という訳の分からない信頼関係があった。
ここでMちゃんに告白しないと、マジで殴られると確信した俺は、車のウィンドウを開け、原宿駅前の人混みに消えそうなMちゃんに大声で『Mちゃん」と呼びかけた。
俺の声に気付いたMちゃんが振り返る。困惑する俺にOとTさんは「好きだって言っちゃえ」と凄む。
プツンと俺の中で何かが切れた。それは羞恥心だった。そして
「Mちゃん!好きだぁ!」
と俺は、原宿駅前の人混みをバックに、こちらを見ているMちゃんに大声で叫んでいた。
それを聞いたMちゃんは微笑んで人混みの中に消えて行く。
車はその場から逃げるように走り出し、車内は大爆笑。俺は茫然自失だった。
「あ~恥ずかしかった。まさか本当に言うとは思わなかった」と腹を抱えてTさんが言う。
「誰が言わせたんだよ!俺の方が数万倍恥ずかしいよ!」と怒る俺であったが、夕飯を奢るというので、OKとした俺も俺だった。
翌週の登校日、俺はMちゃんに
「先週はごめん。マジでごめん」と謝った。
俺達は、恥ずかしい事を言って車でその場から逃げたが、Mちゃんはそれを聞いていた他人が大勢いる中、一人残されたのだ。Mちゃんは俺よりも恥ずかしかっただろう。だから謝った。
しかし、女とは強い。
「いや、嬉しかったよ」と言ってくれた。
漫画やアニメなどでは、これで目出たく恋人になるのだろうが、現実は違う。
俺は「好きだ」とは言ったが「付き合ってくれ」とは言っていない。
だから、俺の告白は「嬉しかった」の一言で終わっていた。
だが、俺はそれで満足だった。嫌われていない、それだけでオールOKだったし、嬉しかったと言われた事が、俺にとっても嬉しかったし、実際に彼女と付き合うよりは、それまで通り、友達でいるほうが良かった。重要なのは、自分の気持ちを最低な状況下のもとであっても伝えられた事だったからだ。
なんだか、綺麗事のようだが、それは違う。当時から「面白ければOK」だった俺は、満足だったし、さらに言えば、万が一にでもMちゃんと付き合っていたら、3人の愉快な仲間が俺を玩具にするに違いなかった。結果論として、付き合わなくて正解だったのだ。
当然ながら、これが逆の立場だったら、俺だって玩具にして楽しんでいただろう。
返す返すも、俺達4人はど~しょうもなく底意地の悪い集団だった。
事実、他のクラスの若い女の子達には敬遠されていた。悪ふざけの度合いが有名すぎたのだ。
その後もMちゃんとは友人であり付き合う事も無かったのだが、その友人関係は今でも続いていて、今年も彼女からの年賀状が来た。
と、まぁ何だか美しい青春の1ページ風に書いたが、結局この事件は単に、ウブな童貞野郎だった俺が、愉快な仲間の悪ふざけのに玩具にされて、辱めを受けたってひどい話なんだよ!美しい思い出なんかじゃなく、今だから笑える恥ずかしい思い出なんだよ!
俺は十年程前から年賀状を書く事を止めたのだが、彼女は毎年、年賀状をくれる。
彼女とは高校時代のクラスメートだった。
俺は中学を卒業して高校に入学し、ゴールデンウィーク開けに退学した。そして翌年、通信制の高校に入学した。通信制高校と言っても、全く学校に行かない訳ではない。週に一度、日曜日に学校に行く。
そこには上は50代、下は現役入学のクラスメートがいる。
そこで俺には1コ下と8コ上と10コ上の友達が出来た。もちろん、全員男だ。
仮に1コ下の友達がO、8コ上の友達がTさん、10コ上の友達がK君としておく。
なぜ、8コ上の友達だけ「さん」付けなのかというと、彼は元ボクサーで友達でなければ関わりたくないような外見をしていたからだ。
今で言うイケメンで気さくな人なのだが、醸し出すオーラが怖かったし、昔の写真を見せてもらったら、完全にその筋の人だった。本人は頑として否定していたが、俺は今でも信じていない。なので、Tさんだけは友達でありながらも基本敬語を使っていた。もっとも、ツッコミを入れる時にはタメ口だったが…
そんな愉快な仲間が、日曜日に学校で集まると、月曜の夜まで一人暮らしだったTさんの部屋で飲めや歌えの大騒ぎを繰り広げていた。
馬鹿みたいに楽しかった。男4人だったが、それ故、誰に気兼ねする事無くしょ~もない下ネタやエロビデオをを見たり、昼間は近くの公園や商店街に散歩に行ったりと、全員金が無いくせに、金が無いからこそ、楽しかった。
楽しすぎてバイトをサボり続けてをクビになった時には1週間遊んでいた事もあった。
で、そんな愉快な仲間たちと共に高校生活を送っていたのだが、クラスにメチャクチャ可愛い女の子がいた。クラスメートと言っても、彼女は年齢では俺の1コ下である。仮にMちゃんとしよう。
基本、当時の俺は地元の友達よりも上記の3人とツルむ事が多かった。それ故、俺がMちゃんの事を好きなのは3人とも知っていた。そして、Mちゃんは俺達4人とも仲が良かった。
そんなある日、Tさんの彼女の車でMちゃんを原宿駅まで送って行く事となった。
当然、車中の友人3人とTさんの彼女は俺の想いを知っているので、道中車内は俺に取って微妙な空気になっていた。
当時、クソ童貞でウブだった俺は、今にも吐きそうなくらい緊張し挙動不審だった。
そして、友人3人プラスTさんの彼女はそんな俺を見て楽しんでいた。もちろん、これが逆の立場だったら、これ以上面白い図はなく、俺だって楽しんでいたに違いない。つくづく、俺達4人は底意地の悪い仲間だった。
そんな道中の事は今では覚えていないのだが、車は日曜の夕方の原宿駅前に到着した。
「ありがとう」と言ってMちゃんは車を降りる。
バタンと車のドアが閉まるとともに、OとTさんが俺をどつき回しながら「告白しろよ!」と言う。
「言える訳ねぇだろ!」と拒否する俺だったが、Mちゃんの姿が遠ざかるのを見たTさんが俺の胸ぐらをつかみ
「言わないと、マジで殴る」と脅迫めいた、いや完全に脅迫された。
Tさんは本当にいい人なのだが、俺達は全員度が過ぎた悪ふざけ集団だったので、悪ふざけの中ではマジで殴る事もある、という訳の分からない信頼関係があった。
ここでMちゃんに告白しないと、マジで殴られると確信した俺は、車のウィンドウを開け、原宿駅前の人混みに消えそうなMちゃんに大声で『Mちゃん」と呼びかけた。
俺の声に気付いたMちゃんが振り返る。困惑する俺にOとTさんは「好きだって言っちゃえ」と凄む。
プツンと俺の中で何かが切れた。それは羞恥心だった。そして
「Mちゃん!好きだぁ!」
と俺は、原宿駅前の人混みをバックに、こちらを見ているMちゃんに大声で叫んでいた。
それを聞いたMちゃんは微笑んで人混みの中に消えて行く。
車はその場から逃げるように走り出し、車内は大爆笑。俺は茫然自失だった。
「あ~恥ずかしかった。まさか本当に言うとは思わなかった」と腹を抱えてTさんが言う。
「誰が言わせたんだよ!俺の方が数万倍恥ずかしいよ!」と怒る俺であったが、夕飯を奢るというので、OKとした俺も俺だった。
翌週の登校日、俺はMちゃんに
「先週はごめん。マジでごめん」と謝った。
俺達は、恥ずかしい事を言って車でその場から逃げたが、Mちゃんはそれを聞いていた他人が大勢いる中、一人残されたのだ。Mちゃんは俺よりも恥ずかしかっただろう。だから謝った。
しかし、女とは強い。
「いや、嬉しかったよ」と言ってくれた。
漫画やアニメなどでは、これで目出たく恋人になるのだろうが、現実は違う。
俺は「好きだ」とは言ったが「付き合ってくれ」とは言っていない。
だから、俺の告白は「嬉しかった」の一言で終わっていた。
だが、俺はそれで満足だった。嫌われていない、それだけでオールOKだったし、嬉しかったと言われた事が、俺にとっても嬉しかったし、実際に彼女と付き合うよりは、それまで通り、友達でいるほうが良かった。重要なのは、自分の気持ちを最低な状況下のもとであっても伝えられた事だったからだ。
なんだか、綺麗事のようだが、それは違う。当時から「面白ければOK」だった俺は、満足だったし、さらに言えば、万が一にでもMちゃんと付き合っていたら、3人の愉快な仲間が俺を玩具にするに違いなかった。結果論として、付き合わなくて正解だったのだ。
当然ながら、これが逆の立場だったら、俺だって玩具にして楽しんでいただろう。
返す返すも、俺達4人はど~しょうもなく底意地の悪い集団だった。
事実、他のクラスの若い女の子達には敬遠されていた。悪ふざけの度合いが有名すぎたのだ。
その後もMちゃんとは友人であり付き合う事も無かったのだが、その友人関係は今でも続いていて、今年も彼女からの年賀状が来た。
と、まぁ何だか美しい青春の1ページ風に書いたが、結局この事件は単に、ウブな童貞野郎だった俺が、愉快な仲間の悪ふざけのに玩具にされて、辱めを受けたってひどい話なんだよ!美しい思い出なんかじゃなく、今だから笑える恥ずかしい思い出なんだよ!