部下とはほんの僅かの間
不倫関係だった

それが
関係が拗れに拗れ
彼女から
平日休日昼夜を問わず
ひっきりなしに
電話が鳴り続く

そんな状況を
携帯を盗み見た妻に
バレた
(不倫はバレてない)

そして
電話を掛けさせられた

お願いだから出ないで🙏🙏!
神様はそんな願いは
聞いちゃくれなかった

ハイ

彼女の声は

気味なほど

冷静で

冷ややかで

今まで聞いたこともない

低い声だった

ボクはこの期に及んで
彼女が出たら
何を話そうかなんて
全くノープランだった
と言うか
考えられるほどの
余裕なんてあるわけがなかった

〇〇さん?
体調は大丈夫?

辛うじて
メンタルをやられた同僚設定を
貫くことはできた

〇〇さん?

恐ろしいまでの沈黙

何度か呼びかけたが全くの
ノーリアクション

そして
妻は痺れを切らした

ボクから電話を取り上げて
貴方、本当にうちの〇〇の同僚?
違うでしょ?
不倫してるんでしょ?
貴方何歳?
若いんでしょ?
何でこんな平凡で
ブサイクで何も取り柄のない
男を好きになったの?
何で?
ハッキリ言いなさい

妻もまた
冷静で
冷ややかで
低い声で彼女に問いかけた

恐ろしい
身から出た錆とは言え
心底恐ろしかった

そもそも
ボクが彼女と僅か二回とは言え
肉体関係となったのは
誰のせいなのか
お前の責任があるじゃないか
ボクを奴隷扱いしかしない
カラダにも触れさせてくれない
お前のせいじゃないか

心の中で叫ぶものの
所詮は責任転嫁だ

彼女はなお沈黙を続ける

妻が畳み掛ける
私はね
こんな男どうだっていいの
好きでも何でもないし
でもアンタが
この男と不倫していたとしたら
絶対に、許さない
アンタこの男と
不倫しているわけ?
言いなさいよ

妻は怒りが頂点に達して
逆に感情を失ったのだろう
あまりの冷静さにボクは震える

沈黙を続けていた彼女が
遂に言葉を発した

ハア?
何なのさっきからこのババア
私が何でこんなオッサンと
不倫しなきゃならないのよ!
バカにしないでよ!!

彼女は電話を切った

予想もしていなかった
言葉だった

同時に、彼女は
絶対に言ってはならない言葉を
言ってしまったのだった