俺が、あの女子高生からとんでもない形で仕事の依頼を申し込まれた少し前――








遥か海の向こうの、ニューヨークの四二番街にある、某超高級ホテルの一室では凄惨且つ意外な展開を迎えていたのだ。









「てめぇ…」






真っ赤な絨毯…

俺がもし、この現場に居合わせていたら、間違いなく一瞬そう思っただろう。



床に這いつくばった数十人の屈強なダークスーツの男達。だが、その大半が事切れていた。
何故なら、その絨毯は彼らの体内から流れ出た血の海そのものだからだ。




これだけの血の量だ。当然、室内に充満する血臭は半端ない。普通の奴なら呼吸困難に陥り兼ねない。その猛烈さに鼻孔が詰まってしまうからだ。

オーデコロンを10リットルでもぶっかけないと、この生臭さはとれないだろう。





そんな、地獄絵図さながらの殺戮現場に一人佇む、人影。




そして、その足元に向かって這いつくばりながら近づく、一人の黒人。

喘鳴を放ちながら――その引き摺る巨体の何処かから溢れ出る鮮血が、さらに床を真っ赤に濡らしてゆきながら。





「…〈皮剥ぎ魔〉……てめぇ……」







足元にたどり着いた黒人の目が、宙を仰ぎながら怨嗟の眼差しを送った。




その仰ぎ観た人影――顔は逆光でよく分からない。三つ揃いのスーツに身を包んだ長身。男か女か分からない。




そこから漂う、ニコチンの匂いと紫煙。それらがやがて血臭に混ざり始めた。






「…何が狙いか知らんが…じきに…世界に…闇が…落ちる…〈グレート=ギニョル〉による恐怖の闇がな…無駄なあがきだ…」




「お前は聞かれたことだけに答えればいい――この娘は一体何者だ?」







錆を含んだような、冷たい声音と共に黒人の眼前に提示された一枚のカラー写真。








そこに写っていたのは、紛れもない今回の依頼人である、あの女子高生であった。