執念の打席 | びっくりするほど上手くなった!名古屋のバッティングスクール「Count23」

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名古屋にあるバッティングスクール「Count23」のブログです。
小学生・中学生などの少年野球選手がチームで活躍するための技術向上を目的とした野球スクールです。バッティング、ピッチング、キャッチボールなど多彩なコースでチームの中心選手に育てます。


コーチの玉川です。

プロ野球で200勝を挙げ、名球会入りした工藤投手と過ごした
高校時代の思い出の連載です。



片目がほとんど見えない状態で、マウンドに再び上がった
工藤さんですが、苦しみながらも何とか
東邦打線を抑えていきます。



いつの間にか片目が見えないのがわからないくらい、
身体のバランスも取り戻していました。


確かにこれは工藤さんの持って生まれた野球センスも
あったでしょうが、やはり毎日、本当に自分に厳しく
積み上げて来た練習の成果という他はありません。



他の先輩方も工藤さんが戻ってからは、皆さんが
鬼のような顔でした。


「絶対に工藤さんの気持を無駄にはしないぞ」
と言う気持でチームがより一層ひとつになっているようでした。



そして回も終盤になって来ました。



工藤さんの打席が回り、しかもランナーが
二塁というチャンスにです。



私は密かに神様は何と残酷な人なんだと思っていました。



せっかくのチャンスに打席に入るのが
片目がよく見えない工藤さんなんて・・・・



この時、球場はかなり異様な雰囲気になりました。



声援なのか罵声なのかよく解らないような・・・



例えようのない異様な緊張感の中、
工藤さんが打席に入りました。



私達は想像していました。


プロ野球の投手がするように打席のすみに立ち、
デッドボールにならない所で、一度もバットを振らずに
三振になり、返って来て直ぐに目を冷やす。


そんな事をおもっていました。


 しかし・・・初球でした。



工藤さんが打ちに行ったのです。



しかもファールチップでしたが、ちゃんとバットに当てていました。



工藤さんはそのままバランスを崩し、倒れそうになりましたが
何とか持ちこたえていました。



ベンチは大騒ぎでした。



「工藤! 無理をするな!!」



 先輩方が必死に叫んでいましたが、
工藤さんは聞こうとしませんでした。



ベンチの方向は見向きもしないで、
またバットを構えました。



中村豪先生もすでに覚悟を決めていたようでした。



黙って工藤さんの好きなようにさせていました。



 それぞれが男として、監督として選手として一生に一度の
夏の大会に望む覚悟が垣間見えた瞬間でした。



私も興奮していたため、カウントは忘れてしまいましたが、
なんと、何度かファールを繰り返していた
工藤さんのバットから快音が響きわたりました。



打球は右中間を真っ二つに割り見事ツーベースヒットです。



名電が勝ち越しに成功しました。



スタンドの応援団が物凄い歓声で工藤さんを讃えていました。



そして次のバッターもツーベースヒットを放ち、
セカンドランナーの工藤さんを迎え入れました。



この回二点を勝ち越しました。



後で工藤さんが語っていましたが、東邦のピッチャーも
自分と同じサウスポーだったため、もうインコースには
一球も来ないと思い、アウトコースの
ボール一本だけを待っていたようです。



あの異様な雰囲気の中、相手の心理を読み、
片目が見辛い状態でタイムリーヒットを放つ・・・



根性だけではありません。



冷静な判断とボールを捕らえる集中力。



私のような凡人ではとても真似の出来ない、超人と
いっていいでしょう。



プロ野球の過酷な世界で30年も現役を続けられたかが、
皆さんも少しお分かりになってきたのではないでしょうか・・・



次回、この試合の続きや元ドラゴンズの彦野選手を
要する愛知高校との決勝戦で見せた工藤さんの奇跡の
暴投などをご紹介します。



つづく・・・