【心的外傷と回復】恐怖〜過覚醒纏め



こんにちは村上です。
ジュディス・L・ハーマンの『心的外傷と回復』から一部抜粋して話しています。
本書は、戦争で受けた心の傷と、レイプや虐待で受けた心の傷は、同質のものであり、回復にはPTSDへの理解や、専門的な治療、セルフケアが必要で重要であると説明しています。
少しでも生きづらさが楽になるようなヒントになればと思います。

長期間に渡って危険に備えている状態を示す過覚醒のページ、p50〜51のまとめです。



心的外傷と回復
第二章 恐怖 p.50  過覚醒

 外傷体験後に人間の自己保存システムは持続的な警戒体制に入るようである。同じ危険がいつ何時でも戻ってくるのではないかという感覚がある。生理学的過覚醒状態が減衰することなく延々と続く。この過覚醒状態は、外傷後ストレス障害の第一の主要症状であり、外傷をこうむった人間は些細なことで驚愕し、些細な挑発にも苛立たしく反応し、睡眠の質が下がる。カーディナーは「(外傷)神経症の中核は一種の生理神経症physioneurosisである」という見解を提出した8。



怖い目にあったら誰だって「また怖い目にあうんじゃないか?」と警戒しますよね。
ただ、ここで言っているのは、心的外傷という深刻なダメージを心と身体に負わされた人は、ずっと覚醒していて、意識や意志の力で落ち着かせることはできず、寝れば沈静化するといったこともないということ。いつまで経ってもスッキリしないし悪夢も見る。
イメージとしては、心を荒らされて傷つけられたことで神経が剥き出しになっている状態。このため、治療しないと過覚醒は治らず、心身共に害され続けるという苦しみが終わらないということなんですね。




p50  6行目

カーディナーは、第一次世界大戦の戦闘経験者にみられた症状の多く、すなわち驚愕反応、警戒性高進、危険の再来に対する油断ない見張り、悪夢、心身症的愁訴は自律神経系の慢性的賦活状態から来ると考えている。カーディナーはまた外傷を受けた男性の被刺激性高進と爆発的攻撃行動とは、圧倒的な危険に直面して「闘争か逃走か」を決める反応のパターンが粉砕された、その無秩序な破片だという解釈をしている。

8.Kardiner and Spiegel,War,Stress,13.


自律神経の働きがうまくいかず、ずっと興奮状態が続いてしまうくらい、戦争で戦闘するということが人に与える影響は計り知れないということです。
少し考えたいのは、戦争やレイプ、虐待で受けるダメージは同質なのだとすると、家庭内で日常的に暴力を受け続けた人が、大人になって不調になり、なかなか回復しないということがあるなら、根性論や自信がないとか自己肯定感が低いからといったことではなく、自分の生育歴から遡って成長の過程で心的外傷を被るような体験がないか確認してみるのも、生きづらさを楽にしていくキッカケになるかもしれません。



p50  11行目

 同じように、ロイ・グリンカーとジョン・スピーゲルとの観察によれば、第二次世界大戦で心的外傷をこうむった兵士は「交感神経系の慢性刺激状態に置かれているようである。(中略)不安という緊急心理反応と心理的準備性とは(中略)重なり合って、挿間的ではなく、ほとんど持続的なものとなっている。(中略)この兵士がたまたまストレス的な環境から転勤させられると若干の時間を置いてからその主観的不安は退きはじめる。しかし生理学的な現象は持続し、安全を保障された人生に対する不適応性を露呈するようになる9」。
 ベトナム戦争の後、研究者はこれらの仮説を検証して、その裏付けを得た。外傷をこうむった男性の交感神経系の生理に変化を記録したのである。

9.R.Grinker and J.P.Spiegel,Men Under Stress(Philadelphia:Blakeston,1945),219-20.



心的外傷を被った人は、治療しない限り、持続的に緊張は解けず、交感神経の働きに不具合が生じ、塞ぎ込みと易怒性の両極に振り回されて、心身共に“普通ではいられない”のだと思われます。

たとえ、心的外傷を被る状況から脱出できたとしても、身体および神経は持続的に不調から免れず、ほんの些細な、微弱な出来事であっても、途端に“スイッチ”が入り、混乱するようです。それがトラウマと呼ばれる症状なのですね。気は立ったままなのに、身体は疲弊し気力は枯渇するのかもしれません。

社会生活を送る上では、特に日本人においては、周りの目が気になるので、心身共に疲れ果てていながらも、「何でもないフリ」をして、今日も社会に適応しようとがんばり続けてしまうから、限界を越え倒れてしまうのかもしれません(安全を保障された人生に対する不適応性を露呈するようになる)。



p.51  過覚醒  14行目

覚醒度の高進は覚醒状態だけでなく睡眠中にも残り、さまざまな睡眠障害の原因となる。外傷後ストレス障害の人は通常人よりも入眠に余分の時間がかかり、音に対して敏感で、中間覚醒の回数も多い。このように、外傷的体験は人間の神経系の再条件づけをするらしい14。

14.L.C.Kolb and L.R.Multipassi,”The Conditioned Emotional Response :A Subclass of Chronic and Delayed Post-Traumatic Stress Disorder,” Psychiatric Annals 12(1982):979-87.T.M.Keane,R.T.Zimering,and J.M.Caddell,“A Behavioral Formulation of Posttraumatic Stress Disorder in Vietnam Veterans,"The Behavior Therapist 8(1985):9-12.



心的外傷があり何の手当てもないままでは、何年経ってもその影響から睡眠障害が持続される可能性があります。
イメージとしては神経が逆立っており、覚醒したままなため、入眠困難、中途覚醒、眠りが浅いなどの慢性的な睡眠不足により、疲労感が抜けないといった場合があります。

身体は寝たいのに、なぜか意識がザワつき、気が立ってしまい眠れない日が続く。
心的外傷は、受傷した瞬間から苦しみが始まったり、何十年も経ってから突然、始まることもあります。

恐怖に抗う術は知り癒してトレーニングなどをして、時間をゆっくりかけて回復していく必要がありますが、疲れ果てた心身では気力が足りず、何もする気が起きない人がいても不思議ではないと思います。

カウンセリングで相談を受けるときに、睡眠にかんする悩みを伺います。だいたいの方が安眠していないと考えられ、つまり、安心していないように見受けられます。

それはそうですよね、不安や焦り、心配していれば、安心という感覚は感じづらいですよね。

心的外傷だけが睡眠の悩みの原因とはもちろん言えませんが、自覚しづらいのも実際あるかと思います。相談されたい方は当サロンのホームページを見てみてください。






みすず書房ホームページ


※当記事の参照元
心的外傷と回復 ジュディス・L・ハーマン 著 中井久夫 訳 小西聖子 解説/1998年9月10日 第10刷発行/みすず書房/400ページ/6,600円+税





【心的外傷と回復】恐怖〜過覚醒纏め



担当心理カウンセラー
村上なおと

カウンセリングサロン Anela
札幌市中央区北3条西18丁目2-11 ブランノワールW18.exe 301号
・地下鉄東西線の西18丁目駅より徒歩8分


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