ようやく日本でも、
最近のカウンセリングで注目されて来た、
「アダルトチルドレン」という言葉は、

数十年前のアメリカで話題になった、
「アルコール依存症の親を持つ家族に育った人達」
という意味である。

この言葉は、本来が、
「アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス」
(Adult Children of Alcoholics:通称ACOA)であり、、
さらに一般化して「AC」とい呼ばれるようになった、
アメリカでのカウンセリングの言葉に由来している。

言葉の語源的には、
アルコール依存症などの、
「酒乱の親がいる家族で育った子供は、
幼少期から、
自分の感情や気持ちを出すのを我慢するようになる、
という、「典型的な心理的特徴」がある事」を指す。

これは、「典型的な心理的特徴」のことを
総称して現している言葉なので、
「病気の病名ではない。」
という認識においては、
アメリカでも日本でも共通している。

当初は、
お酒を飲むと酒乱になって暴力的になる親が、
家族の中にいる場合には、
家族の心理的バランスを守るために、

「幼い子供の頃から、子供らしい感情を我慢して、
大人のように、幼少期から自分を抑えて来た人達」
という意味であったのだが、

その「子供らしさを出せずに我慢して来た人達」が、
大人になってからでも、
「家族や周囲の人達に、自分を抑えて合わせる。」
というスタンスの生き方しか、
人間関係において出来ないという、
硬直化した心理的特徴が、大きな社会問題になって来た。


今、日本で、
「アダルトチルドレン」という言葉が使われる時には、
言葉の語源に由来する、
「アルコール依存症などの親がいる家族で育った」
という、語源的背景はほとんど含まれない。

心理的特徴の方の、
「子供っぽさを出さずに、
大人のように感情を抑えて育った人達」
という意味で使われることが多い。

「本来の子供らしさ」を、
幼少期に自由に出せなかったり、
体験的にほとんど知らなかったりすることから、

10年ほど前から
精神医学界で注目されるようになった、
幼少期に、「親との充分な愛着形成」が来なかった、
いわゆる、「愛着障害」に由来する
精神的な辛さや脆さを抱えている大人達の激増、
ということから、
今、再び、この言葉が注目されるようになった。

しかし、
前述したように、
この「アダルトチルドレン」という言葉には、

元々が、

「アルコール依存症の酒乱の親がいるような、
機能不全家族の中で幼少期に育って
大人になった人の心理的特徴」、

という語源的な背景を持つ言葉なので、


もはや、この言葉自体が、

今の日本の多くの人達が、

「抑うつ」状態の中で抱えている、


「自分の気持ちの出し方がわからない。」

「自分は本当はどう感じているのかがわからない。」

「自分の気持ちを言葉でうまく伝えれない。」

「自分の気持ちを言葉や感情で出したりする
 人とのコミュニケーションがかなり苦手」

「幼い頃から、親の言うことを良く聞く、
 良い子にして来たので、
 親に逆らってまで、自己主張することが苦手」

「親や大人に、自分の気持ちや意見を言えない。」


などということに由来する、

「今の日本人に特有の抑うつ」には、

心理的特徴としては、
極めて類似していても、

「アダルトチルドレン」という言葉で表現することは、

その生育歴の背景から考えても、

ふさわしくなくなっているように思う。


こういう、

「今の日本文化型アダルトチルドレン」には、

もっと違った言葉を、

つまり、

日本での抑うつの実態に合った

ふさわしい言葉を、

新しく造語することの必要性を

日頃のカウンセリングの実体験から

とても痛切に感じている。



秋田心理カウンセリング精神療法相談室
http://www.counseling-support.com

上級心理カウンセラー 佐藤 正篤