先日の続きなのですが…。
父の本家に残された妻子は、日本に渡ったまま一向に帰ろうとしない夫を待ち続けました。
結局、父は戦後60余年を日本で暮らし、日本で没しました。
勿論、時折(数年に一回くらい)帰ることはありましたが、それも数日で戻って来ます。
長男なのに、当てにもならない父の代わりに本家を守った妻の人生は如何なものだったのでしょうか。
親戚のおじさんの話では、村一番の美しい女性だったそうです。
母の亡き後、父を連れて韓国の実家を訪ねた時に彼女に会ったのですが色白でくっきりときれいな目をしていたのを覚えています。
もうその時、70歳はとうに過ぎていて、美しい目の周りには沢山の皺が刻まれていました。
小柄で腰も少し曲がっていました。
後に、弟が訪ねた時、彼女は弟を呼んで言ったそうです。
戦争のせいで私たち夫婦は、戦後ずっと離れ離れでした。せめて死んだ時はお骨を一緒にして欲しい。
そう頼んだそうです。
彼女が日本に夫を送り出してから、半世紀以上の歳月をどんな思いで生きていたのでしょう。
まだ若く美しかった彼女は、一人残された娘と、嫁いだ先の姑達の世話をしながら本家を守っていたのです。
帰ることもせず、別れることもせず、嫁ぎ先に縛り付けられた一人の女性の人生は如何なものだったのでしょう。
そういう時代だったんだとかたずけるのは簡単ですが、何とも残酷な話です。
彼女の願いも空しく、父は今日本に建てた墓に母と共に眠っています。
彼女は海を隔てた近くて遠い国の、父の本家の墓に眠っています。
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私が日本人になった日
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