鍋です。
奴が「ここにいても学ぶことはもう何もない。日本しょうもない」と毒づいて、全く英語も喋れないのにロンドンに旅立ってから2年半、早いものです。
6日の夜から7日の朝にかけて、2年半ぶりに再会した旧友と、ずーっと2人で喋ってました。
松田(マッタ)というその男は僕の地元の1つ下の後輩で、カメラマンを目指していて…
いや、もう奴はそれを志した瞬間から既にカメラマンで、
つい最近ロンドンでの修行を終え帰国し、今は埼玉ギリギリの東京に住んでいます。
半年ぐらいしたらまたアメリカに旅に出るそうですが。
相変わらず勝気で、どこまでも自信に満ち溢れていて、ガタイがよくて、お洒落でおもしろい奴でした。
何より、相変わらず努力を惜しまない奴でした。
お喋りな彼はロンドンでの毎日のことをそれはそれは楽しそうに語ってくれました。
友情(ブラザー)、恋、仕事、事件、危険な遊び、どの話も今の僕からは現実離れしていて、とても刺激的なものばかりでした。
向こうで撮った写真もたくさん見せてくれました。
どれも綺麗で、カッコよくて、生々しくて、素敵なものばかりでした。
マッタと喋っていると、劣等感とやる気が等しく湧いてきます。
笑いと写真、畑は全く違うけど、僕とマッタに優劣を付けるのは意図も簡単だからです。
マッタは
写真の為に遊び
写真の為に食い
写真の為に呑み
写真の為に音楽を聴き
写真の為に体を鍛え
写真の為に絵を描き
写真の為に女と寝
とにかくあらゆることを写真に繋げ、写真に生かそうとしています。
そして、それの邪魔になるものは可能な限り排除しようとしていました。
そのエピソードは枚挙にいとまがありません。
1つ挙げるなら、物を見る目を鍛えたくて、2年前から自主的にデッサンを始めたらしいです。
そんな奴に今の僕が勝っている訳がないのです。
奴の目も耳も鼻も口も手も足も腰も、身体の全てが写真のためにあるのだと感じました。
何かを志すものとして、僕は彼に嫉妬し、そして何より尊敬しています。
「やりたいことを、やりたいようにやる」
簡単なようで難しい。
難しいからこそ頑張らねば、と思いました。
それを実行している奴が身近にいるのなら尚更。
朝方、マッタが最近新しく買ったカメラを見せてくれました。
桜の樹で作られた日本製の古いカメラでした。
「日本人やし、日本を推したくてな」
彼はとてもいい顔で、そう言ったのでした。