エリントンのフランス・パリ録音は、一体どれだけあるんだろう? | 続・公爵備忘録

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ジャズ・オリジナル盤の音質追及とエリントンの研究。

エリントンのライブはLP・CDを問わず、非常にたくさんある。エリントン・コレクターを自認している筆者でも、持っていない盤がたくさん残っている。世界中の国でエリントンは録音されていて、中でもフランス・パリでの録音は多い。

 

なぜパリなのか?その点について考えながら、レコードとCDを聴いてみよう、というお話。


エリントンは1950年代の後半から、毎年のように欧州ツアーをやっていて、英・独・伊をはじめ、欧州各国でコンサートを行っていた。中でもパリでのコンサートは確かに少し回数が多い。

エリントンの自伝『Music Is My Mistress』によると、エリントンと相棒のBilly Strayhornはパリが大好きだったらしいから、パリでの公演回数が多かったのも頷ける。

一方、フランスでは多くの作曲・録音を依頼されたと、エリントンは回想しているから、パリの住民たちはエリントン音楽が大好きだったのだろう。そう考えると、エリントンとパリジャンたちは相思相愛だった、と言える。

エリントンは黒人としては珍しく裕福な家庭に生まれて、幼少期から“デューク”というアダ名がつくほど気品があったという。そのエリントンと、色んな芸術家を魅了してきたパリの雰囲気には、相通じる部分があったに違いない。

そんなことを考えていると、エリントンが好きだったパリの芸術的雰囲気を体験してみたくなった。筆者はフランスに行ったことがなくて、フランス好きの友人に話を聞いてみると、近年は英語もある程度通じるらしい。それなら旅することが出来るかも、、、


Paris Blues


映画『Paris Blues』のオリジナル・サウンドトラック。

 

 

エリントンとBilly StrayhornはParis Bluesの楽曲制作のため、パリに2か月も滞在した。米国の聴衆をメインターゲットにした映画だから、わざわざパリで曲作りをする必要はなかったように思うけれど、エリントンはパリに居たかったのだと考えると、長期滞在も理解できる。


Midnight In Paris

 

パリにちなんだ曲を集めたColumbia盤。オリジナルは米Columbiaで、所有しているのは英Columbia盤。

録音は米国内で、フランスで録音した訳ではないのに、パリに関したレコードを作るなんて、どれだけパリに入れ込んでいたのか、と感じさせる。


Duke a Paris


メンバーと収録曲から判断して、Bethlehemの"Presents"と"Historically Speaking"からピックアップされたフランス制作の編集盤。


Bethlehemとパリには何の関係もないはずなのに、どうしてParisというタイトルが付くのか?筆者が知らないストーリーがあるんだろうか?

 

何か理由があるはずで、それが知りたいけど、仏語のライナーノーツが読めず詳細がわからない。


Great Paris Concert


エリントンのパリ録音としては最も有名なレコード。

本盤は非常に音が良く、エリントンのライブ盤を数百枚入手してきた中で、ピカイチの高音質盤。

だいたい音が良くないAtlanticで、サイコーに高音質なレコードが出来るのは非常に珍しい。しかも元はRepriseの音源のはず。まさに“瓢箪から駒”。

音の素晴らしさゆえに、エリントン・マニアの愛聴盤であると同時に、エリントン入門盤としてもオススメできるレコードだと言える。

 

 

ちなみに日本盤(ワーナー・パイオニア)と、米オリジナル盤を詳細に聴き比べてみて、米オリジナル盤の方が音が良い。カラっと乾いた感じの音がする米盤は、音量を上げていくとシャープな切れ味を堪能できる。日本盤だって決して悪くはないけど、もしこれから入手されるなら米盤がオススメ。


Greatest Hits


このReprise盤は1963年2月、パリでのコンサート録音で、上掲のAtlantic盤と同じ音源と判明している。

不思議なことに、このReprise盤はAtlantic盤よりずっと音質が落ちる。先に発売されたのはRepise盤で、音は平凡なのに、数年後に残り物を編集して発売されたAtlantic盤の音が素晴しい、というのは実に不思議で、何か原因があるはずだけど、今だに分からない。


Duke Ellington Live Vol.1, Vol.2



この2枚は1959年、パリでのコンサート録音。音質は並レベル。

1950年代後半のエリントン楽団は、ホッジスが復帰してメンバーが充実していて、“オールスター・バンド”と呼ばれた。Atlantic盤ほどの高音質ではないものの、エリントン楽団は40年代前半と並び称されるほど充実していた時期のライブ。

DUさんで日本盤の中古を買えば500円程度だと思うので、コスパはかなり高い。


Live In Paris


参加メンバーから判断して、1950年代後半、パリでのコンサート録音だと思われる。

充実していた時期の録音ではあるけど、海賊盤よりはちょっとマシな程度の音質なので、マニア以外にはオススメできない。



Duke Ellington


1969年11月、パリでのライブ録音。東宝芸音(今の東宝)という会社が出した日本盤。この会社は1970年から73年まで存在している。

 

エリントンは1970年と72年に来日しているから、いずれかの来日時に記念盤として発売されたレコードだと思う。

 

音質は並レベルで悪くはないけど、内容的には一般向きではない。

 

ホッジスは持病の心臓病が悪化していた時期で、ほとんど出番がないうえに、Paul Gonsalvesも体調が悪かったのか(あるいは酔っ払い過ぎて寝ていたのか)、出番がほとんどない。50年代後半の充実期を知るファンとしては、やや寂しさを感じる。


Alhambra, Oct. 29th, 1958

1958年10月、パリのアルハンブラ劇場でのライブを記録した2枚組CD。この時の公演は28日と29日、昼夜2回行われたはずで、29日の録音からピックアップされた録音。

音質的には並レベルで、必携盤とは言えない。コレクター向けでしょう。


Live Concerts In Paris, 1958


上掲のCDと同じ録音で、29日の録音はダブっているけど、28日の演奏から4曲が追加されている。音質的には同様に並レベル。

 

 

The Champs- Elysees Theater Jan.29-30th, 1965

 

1965年1月、パリのシャンゼリゼ劇場での公演を記録した2枚組CD。音質は並。



Berlin'65・Paris'67


1967年3月のパリでのコンサートから6曲が収録されている。67年のライブであることを考えると、音質がイマイチで、あまりオススメできない。ベルリンでの録音も同様にイマイチ。


最後にパリではなく、南フランスのコート・ダジュールでのコンサート録音について。

 

エリントンと契約していたNorman Grantzは、1966年7月26にから29日にかけて、4日間連続で南フランスのコート・ダジュールでコンサートを企画した。

 

もちろん入場収入だけでなく、演奏をライブ録音してレコード化する目的だったので、音質はどのレコード・CDもバッチリ。どれを入手されても満足いただけると思います。

 

Ella & Duke at The Cote D'azur

 

コート・ダジュールでのコンサートには、Norman Grantzの意向によりElla Fitzgeraldが同行した。

 

2枚組LPとしては大変よく売れたレコードで、何回も再版されているけど、オリジナルはT-Verve、ミゾあり。

 

Antibes Concert Vol.1

 

これは仏Verve盤。なんとEllaの歌をカットして、エリントン楽団の演奏だけにするという、信じられない編集。仏ではEllaが入っているとジャマなんでしょうか?

 

Soul Call


Verveはちゃんとエリントン楽団だけの演奏をレコード化しています。

 

Antibes Concert Vol.2

 

タイトルが変更されいるけど、内容は米Verve盤と同じ。Ellaがいなければ米盤そのまま、ということは、やっぱりEllaはジャマみたい。

 

Passion Flower

 

このCDもコート・ダジュールの音源で、エリントン楽団の演奏を収録している。

 

Soul Callとの違いは、Soul Callが7月28、29日の演奏なのに対して、本CDは7月26、27日の演奏。したがって曲のダブりはない。

 

どのLP・CDも良い音なので、どれを入手されてもいいですよ。


もしお気に入りであれば、コンサートの全容を網羅した8枚組CD!!というのも発売されてます。筆者はちょっと手が出ませんでした。ハイ。