Ella FitzgeraldのSongbookシリーズを総括する | 続・公爵備忘録

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ジャズ・オリジナル盤の音質追及とエリントンの研究。

偏見であることを承知の上で言わせていただくと、ボーカルは白人美形に限る。男性ボーカルや白人以外の女性ボーカルは基本的に聴かない。

でもElla Fitzgeraldだけは例外だ。

理由はVerveのSongbookシリーズがあまりに素晴らしいから。世間では全く人気薄のピアニスト、オスカー・ピーターソンが大好きな理由もまったく同じ。

この2人のSongbookが他と違って素晴らしいのは、原曲の雰囲気を崩さずに演奏すること。即興を入れる場合でも、最初は原曲どおりに演奏する。

ジャズは即興演奏するものではあるけれど、ティン・パン・アレーの作曲家たちが作った名曲の数々は、まず珠玉のメロディを堪能すべきであって、作曲者の意図を尊重したうえで演奏者の解釈を入れるべきだと思っている。

エラのSongbookは原曲を生かしている。聴いていて気持ちがいい。


Cole Porter Songbook

恋唄の名手、庶民派のコール・ポーターが、50枚以上あるVerveのエラの最初のレコード。番号は4001。恐らく最初からティンパンアレーの作曲家ごとに、順次作っていく計画だったはずで、コール・ポーターを最初に持ってくるところにノーマン・グランツの好みが出ていると思う。

Verveはこの2枚組を1枚づつ再発した。

刻印が違っていて再カッティングされているが、音質的には同等レベル。Songbookシリースの中でも最も音質が良い。

所有盤はMGMプレスなので、セカンドかもしれない。


Rogers and Hart Songbook

センチメンタルでナイーブな曲が光る、ロジャース&ハートが4002番。2枚組。グランツの好みの順だろうか。日本ではたぶん逆だろうけど。

エラは曲想を大事にして、丁寧に歌っていて素晴らしい。

本盤にはオレンジラベルが存在するので、所有盤は厳密にはセカンド。



バラは4049番と4050番で再発された。

盤は再カッティングされていて、音質的にはオリジナルの方が若干良い。


Duke Ellington Songbook


エリントン歌集は4008と4009で、共に2枚組の計4枚。

エリントン楽団がバックを務めている演奏は、エラとエリントンの両方を立てた感じで、エリントンのレコードとしても聴ける。コンボ演奏のピアニストはPaul Smithで、エラが主役。エリントンの曲を演奏しても、らしさは薄い。

4枚を箱に入れたセットは4010番で、恐らく同時に出たと思われる。あの箱は見つけたのに、盤のキズゆえに見送ったのは大失敗だった。


Gershwin Songbook

ガーシュインのSongbookは1957年に2枚作られ、59年に5枚作られた。これは57年のVol.1で4013番、4015番がVol.2で、未入手。


59年の5枚は4024、4025、4026、4027、4028で、5枚セットの箱が4029。連番で出ているからバラと箱は同時発売だったのだろう。同じ刻印の盤が収められている。

格調高いメロディと曲想で、ポピュラーソングの最高峰、ガーシュインのSongbookは2枚では足りないと思って作り直したのだろうか。ものすごいコダワリを感じる。

Vol.4だけはバラ売りのモノラルとステレオの両方を持っている。


音質を較べると、モノラルの方がしっくりくる。ステレオだとバックバンドの音が良く聴こえるが、モノラルだとボーカルに集中できて聴きやすい。ボーカル盤はボーカルが中心だから、やっぱりモノラルが基本だと思う。言い換えれば、バンドを聴くならステレオが良い。

ジャケットは同じで、レコード番号とstereo表記だけが違う。モノラルは4000番台(Verveの4000番台はほぼすべてエラのレコード)、ステレオは6000番台

バラにはセカンドジャケがあるが、持っていない。グランツは再発の際には再カッティングするので、いつか音を確認してみたいと思っている。


Irving Berlin Songbook

次がアービン・バーリンで4019番、2枚組。もの悲しい曲想の曲を書かせたらピカイチで、筆者の一番お気に入り。

バラは4030番と4031番で出ているが、残念ながら持っていない。いつかは入手したい。キレイな盤でも3000円もしないから可能だと楽観している。



Harold Arlen Songbook

ハロルド・アーレンは4046番。2枚組。このジャケはエラの顔をデフォルメした絵なんだろうけど、エラのレコードだから推測できるだけで、絵だけでは連想できない。ちょっと手抜き感は否めない。

バラは4057番と4058番で出た。

同じ刻印の盤が収められていて、バラも出すことが最初から予定されていたのだろう。こっちのジャケならエラだと判る。


Jerome Kern Songbook

ジェローム・カーンから1枚になる。所有盤はMGMプレスだけど、本盤は63年の発売だから恐らくオリジナル。モノラルも聴いて音質を確認してみたいと思っている。

本盤にはミゾがないけど、MGMプレスのVerveにはミゾがあったりなかったりで、脈絡がなく、オリジナルの判定が非常にややこしい。後進コレクターが解明してくれることを望んでいる。

 

Johnny Mercer Songbook

これが最後のSongbookで、1枚。


もしSongbookシリーズがなかったら、Ellaを集めようという気になったかどうか、あやしい。たぶん聴く気にならなかったと思う。視野を拡げてくれて、ボーカルの真骨頂を教えてくれたという意味で、Verveには感謝しかない。

名唱は名曲と共にあり。