そういやこの間は大統領候補の討論会がありましたよね。


バイデンさんのあの表情とあの歩き方は何だかとっても見覚えあり過ぎてちょっと心が痛みました。

 

念のため言っておきますと、彼は昔からビックリするほど平気ですぐバレる嘘をつくことで有名な人なもんで、もう一周回ってオモロイ人ではあるんですが、まぁやっぱ個人的にはどーしても好きにはなれんし尊敬もできぬ…と言うのが正直なとこ(バイデンファンの方いたらすいません、笑)。


それでもやっぱりさすがにここまで来ると可哀そうになってきたし、いくら政治的に意見が違うからと言っても年齢からくる衰えを笑い物にしまくるのはどーもねぇ…。

 

だって、あの表情と歩き方をする人には過去に何度かあったことがあり、彼らはみんな認知症だったんですよね・・・。

 

だから多分バイデンさんも認知症と戦ってるんじゃないかな・・・って思って。

 

私の祖母も認知症と戦った1人で、大好きだった祖母がだんだん遠くへ行ってしまう悲しさに私も家族も打ちのめされたものですが、きっと祖母自身も辛かったんだと思います。

 

そして、祖母の他にもう1人、認知症でお別れすることになってしまった大好きな人がいるんですよね。

 

それはサンフランシスコに住んでた頃に仲良くしていたノームさんというおじちゃん。

 

私はサンフランシスコに住んでいたころ教会の聖歌隊で歌ってたんですが、そのメンバーの1人だったのが金融機関で長年お仕事をして来たノームさん。

 

当時の私は車の免許を持ってなかったもんで、聖歌隊の練習に行くにはバスや電車で行かねばならず、公共交通機関が発達してるサンフランシスコと言えども結構メンドーだったんですよ。

 

行きはともかく、練習が終わるともう夜遅かったし・・・。

 

私の家の近所に住んでる聖歌隊メンバーはいなかったもんで、結構遠くに住んでる人達が交代ごうたい送ってくれてて、いつも「申し訳ないな~」と思いながらご厚意に甘えてたんですよね。

 

だもんで、ノームさんが聖歌隊に入って来て、うちの近くに住んでることがわかった時には超嬉しかったんですよね~。

 

ノームさんも「一緒に帰る人がいた方が楽しいから是非送らせてくれ」って言ってくれてたもんで、お言葉に甘えていつも彼と帰宅するようになったんですよ。

 

ノームさんは話も面白くて優しくて、なんだかだんだん義理のお父さんか誰かのような気がしてくるほど。

 

元金融マンだけにホントにシャープで、ジェントルマンで、カッコイイおじちゃんだったんですよ。

 

それがある日、いつものように聖歌隊の練習の後で送ってもらってたんですが、お喋りに花が咲いていて暫く気づかなかったけど、何かちょっといつもより家に着くのに時間がかかってたんですよね。

 

「あれ?何で今日こんないつも行かない道とかをグルグル走ってるんだろう?」

 

と気づいたものの、ノームさんは全然気にしてないみたいだったから、

 

「あー、何かお喋りに夢中になって道間違えちゃって迷っちゃったのかな・・・?」

 

と、私も気にしないようにしてたんですよ。

 

で、また次回送ってもらった時も更にグルグル回り道をしてなかなか家に着かず。

 

今回は「ちょっと」じゃ済まないぐらい時間がかかったもんで、さすがにノームさんも

 

「いや~、ちょっと変な道曲がっちゃったみたいで迷っちゃって遅くなっちゃったね。ごめんごめん。」

 

と笑ってたので、

 

「そっか・・・やっぱ道間違えたのか・・・」

 

と私も納得してたんですが、そんな感じのことが何度か続いた後でノームさんは聖歌隊に来なくなってしまったんですよ。

 

どうしたんだろう??と心配していたところ、それからしばらくして聖歌隊のリーダーから

 

「ノームのご家族から連絡があって、ノームが認知症になってしまっていることがわかったので残念ながらもう聖歌隊での活動はできないと言うことだった」

 

というショッキングなアナウンスが・・・。

 

泣きましたよ、ホント。

 

やっぱりあれは認知症の初期症状だったんだ。

 

いつも走ってるはずの道がわからなくなっちゃって、ノームさんはきっと内心焦りながらもどうにか笑顔を保ってくれてたんだ・・・。

 

でもって、もうノームさんと一緒に聖歌隊で歌ったり、帰り道にお喋りしたりできないんだ・・・。

 

私は祖母が認知症になり家族で祖母の世話をしたことがあるので、認知症になった人がどんな風になって行ってしまうのかは良く知っているだけに、ホントにホントに辛かったです。

 

それから数か月後、うちの聖歌隊のコンサートがあったんですが、コンサート後のパーティーでノームさんを見かけたんですよ。

 

ご家族が彼を聖歌隊のコンサートに連れて来てくれて、コンサート後のパーティーにも残っててくれたんです。

 

あまりにも嬉しくて思わずわーっと駆け寄り、

 

「ノーム!!!久しぶり!!元気そうで良かった~!」

 

と声をかけたところ、今まで見たことの無いような緊張気味の笑顔で私のことを見つめながら

 

「お~!ホントに久しぶり・・・えーっと・・・」

 

と一生懸命私の名前を思い出そうとしてくれてることに気づき、ハッとしちゃいました。

 

「しまった、急にこんな風に大勢の前で声かけたりしたら焦らせちゃうだけだった!」

 

と後悔したものの時すでに遅し。

 

でもノームさんは、すぐに思い出してくれて、

 

「ことりだよね、ことり。ほら忘れてないでしょ?忘れてない・・・。」

 

と一生懸命笑顔を作ろうと頑張ってくれて・・・

 

心の中で泣きましたわ。

 

私は、どうにか彼に安心して欲しかったから、

 

「髪の毛切ったし、今日はコンサートのためにすんごい厚化粧してるからすぐにはわかんなかったでしょ?女は化けるからね~!」

 

と笑いながら言ったところ、ようやくホッとした顔をして

 

「ははは、それでか、すぐにわからなかったのは」

 

と笑ってくれてホッとしましたよ。

 

その後もちょっとお話したんだけど、やっぱり一生懸命記憶の扉をアチコチ開けまくろうとして焦ってるのが見てとれたので、あまり長く話はせず、ギューッとハグだけして、ご家族にも連れて来てくれたことをお礼して、その場は去りました。

 

それがノームさんと会った最後でした。

 

認知症になると、知っていたはずのことがわからなくなり、「何かがおかしい・・・」という不安の中で必死に普通を装って、どんどん疲れて行ってしまうんだと思うんですよね。

 

仮面のようになってしまった表情の裏では、焦りや苛立ち、不安みたいなのがグルグル渦巻いてるんだと思うんです。

 

大統領選まであと約4か月。

 

「これまで嘘をつきまくってきた報いじゃ!ざまーみろ!

 

このモウロクじじいが!」

 

とばかりにバイデンをこき下ろすのではなく、例え悪行三昧やって来た人であれ、1人の人間としての尊厳を忘れずに扱うことができる懐の深さが求められてるような気がしちゃいます。

 

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