サン・ピエトロの午後
僕はラテン語の辞書をとじる
サンタマリアマッジョーレでは
血と肉が分け与えられ
太陽はミカエルの剣に降り注ぐ
君は僕の頼んだカプレーゼのバジルをのけながら言う
「ミラノに行きましょ」
「サンタマリアグラティエで最後の晩餐を見るの」
「エマヌエーレ二世のガリレッリアでお買い物して」
「ドゥモに階段で上るの」
「それで天使の昼寝を盗み見しましょ」
僕が頼むカプチーノ
君が頼むカッフェ・アメリカーノ
シナモンスティックは緩やかに踊り
ブラウンシュガーはフレッシュミルクと結ばれる
不機嫌なカリメエーラがドルチェを持ってくるころ
僕が「大したことないから」と言うと
君は笑顔でこう言った
「じゃ、フィレンツェ」
「ポンテベッキオで綱引きするの」
「アカデミアの裏でリモーネのジェラートをほおばって」
「それで、メディチ家の夢を掠め取るのよ」
愛想のいいカリメエーレを呼び止め
「Il conto」と言おうとして切り返す
「じゃぁ」
「チンクムベスピアーナに乗って」
「消えた街を見に行こう」
そういいながら
僕はつきが変わるころ
コペンハーゲンに人魚を見に行くことに決めていた
たとえそこに君がいなくとも。
それでもテルミニに
エスプレッソは到着する
そんなイタリアの午後